ジャック・ロンドンの作品紹介


 ジャック・ロンドンは50冊を超す長篇・中篇小説を残しており、その他、200編もの短篇があり、そのほとんどが
19冊に及ぶ短篇集に収められている。手がけたジャンルも動物小説だけでなく、冒険小説、ボクシング小説、
未来小説、社会主義小説、半自伝小説、ホラー小説、ルポタージュ等に及び、かなりの数にのぼる。それぞれの
小説は、ロンドンの波乱万丈の生涯と関連しており、リアリズム文学の先駆けとしてアメリカで受け入れられただ
けでなく、世界中で作品が翻訳され子どもから大人まで幅広く読まれている。100年経過した今でもロンドンの
作品は、現代的意義を失わず、ますます価値を増して我々に語りかけている。
 下記の作品の原題のあとにある括弧つきの年号は、原則として発表雑誌の年とする。例外の場合は、そのように
明記する。

長篇小説
The Call of the Wild (1903)『野性の呼び声』または『荒野の呼び声』
   ゴールド・ラッシュ時代、セント・バーナードとシェパードの血をうけた飼い犬バックは、ある日、邸から
  盗み出され、アラスカ氷原へ連れて行かれた。そこには、そり犬としての苛酷な日々が待っていた。厳し
  い自然と、人間の容赦ないむちの響きに、バックの野性はめざめてゆく。数年後、広い峡谷を駆けて行く
  狼の一群のなかに、毛並みのふさふさとしたたくましいバックの姿が見られた。翻訳本では『野性の呼び声』
  (2001、 辻井栄滋訳 社会思想社・現代教養文庫)

The Sea-Wolf (1904)『海の狼』
  壮絶なる長編海洋冒険小説。

The Game (1905)『試合』
   ボクシング小説。20世紀初頭のアメリカの世相を背景にボクシングに賭けた男の栄光と悲哀、リング
  をめぐる荒々しい生きざまを描いている。前半はジョウ・フレミングとジェネヴィーヴという若い恋人同士の
  物語だが、後半は結婚を目前に控えた二人を待つものがジョウの急死という思いがけない結末である。
  翻訳本では『試合』(1987、 辻井栄滋訳、社会思想社・現代教養文庫)

White Fang (1906)『白牙』または『白い牙』
  四分の一だけ犬の血をひいて北国の荒野に生まれた狼の仔「白牙」。インディアンに飼われ、立派な
  そり犬に育ったが、白人の手に売り飛ばされて苛酷な訓練の結果、野性を呼びさまされた獰猛な闘犬に
  なっている。しかし、親切な白人に買われて橇の先導犬になった時、彼の中には主人に愛情が芽生えて
  いた。翻訳本では『白牙』(2002、辻井栄滋訳、社会思想社・現代教養文庫)

Before Adam (1907)『太古の呼び声』または『アダム以前』
  現代人の夢の中に甦った原始世界を想像力豊かに描き出した。数10万年ないし100万年もの大昔に
 生きた我々人類の祖先たちの生きざまを自在に、かつ科学的な視点も入れて描いた。
 翻訳本では『太古の呼び声』(1994、辻井栄滋訳、平凡社)

The Iron Heel (1908)『鉄の踵』
  全体主義を予見した未来小説。

Burning Daylight (1910)『バーニング・デイライト』

The Abysmal Brute(1911)『奈落の獣』
    
無敵の主人公パット・グレンドンは、ボクシング界の舞台裏で行われている不正を暴いてみせる。
  翻訳本では『試合』(1987、 辻井栄滋訳、社会思想社・現代教養文庫)

Adventure (1911)『冒険』

The Scarlet Plague (1912)『赤死病』
   現代文明の驕りともろさを描いた警告のSF。作品の中で、「人類というのは、どんどん元の原始的な
  暗黒状態にもどっていって、やがてまた、文明に向かって血まみれの坂を登ってゆく運命を定められて
  いるのだ。数が増えて、空いた場所の不足を感じると、お互いに殺しあいを始めるわけだ」と述べている。
  翻訳本では『赤死病』 (1995、辻井栄滋訳, 新樹社)

The Valley of the Moon (1913)『月光谷』

Martin Eden (1913)『マーティン・イーデン』
    若き日の夢と恋と闘いをみずみずしく描いた半自伝的小説。アメリカのブルジョアとプロレタリアという二つの
  社会階層のなかで、ほとんどの人が何の疑問も感じずに暮らしている。プロレタリアの内側で育ったマーティンは、
  ふとしたことからブルジョア階層の生活を垣間見てしまう。ルース・モースを中心とした未知の世界への憧れが
  頭をもたげる。翻訳本では『ジャック・ロンドン自伝的物語』(1986、辻井栄滋訳、晶文社)

The Star Rover (1915)『星を駆ける者』
  「絞首刑に立たされながら決して死ぬことのできぬ運命を担わされた一囚人」のホラー小説。

短篇小説
"Bonin Islands"(1895)「小笠原諸島にて」
  ロンドンは、アザラシ狩り船員として当時東京府の小笠原諸島に寄稿した。物語は、小笠原諸島の歴史と
 孤立した自然の美しさ(第1部)、および、外国からの捕鯨船の到来による争いと和解の話(第2部)とから
 成っている。 短篇集 The High School Aegis所収
 翻訳本では『ジャック・ロンドン 多人種もの傑作短篇選』(2011,辻井栄滋・芳川敏博共訳、明文書房)所収

"Sakaicho, Hona Asi and Hakadaki"(1895)「人力車夫堺長と妻君と、二人の息子の話」
  ロンドンは、横浜を中心に富士山や東京などを観光した。内容は、横浜の人力車夫や妻、息子と出会い、
 日本文化や日本人についての理解を深めていくことや、国が違っても妻や子供を失った悲しみは同じである
 ことなどを描写している。 短篇集 The High School Aegis所収
 翻訳本では『ジャック・ロンドン 多人種もの傑作短篇選』(2011,辻井栄滋・芳川敏博共訳、明文書房)所収

"O Haru"(1897) 「お春」 *雑誌への投稿はないので、括弧ないの数字は執筆年である。
  この作品も、ロンドンが17歳のとき(1893)『ソフィア・サザランド』号でアザラシ狩りの船員として日本にやって
 来た際に見聞したことなどをもとに書いたと想像される。西洋人をも魅了する最高の芸者であるお春の幸せは?
 執筆から91年の時を経て、The Complete Short Story of Jack London (Sanford University Press, 1988) 所収。
 翻訳本では『ジャック・ロンドン 奇想天外傑作集』(2013、辻井栄滋・芳川敏博共訳、明文書房)所収。

"A Daughter of the Aurora" (1899) 「オーロラの娘」
  いわゆる「極北もの」に数えられる一篇だが、犬橇レースが女主人公の争奪戦および女主人公の駆け引き絡みの展開
 を見せる作品で、さてそのレースの結末やいかに? 短篇集 The God of His Fathers & Other Stories ( McClure, Philips
 & Co., 1901)所収。翻訳本では翻訳本では『ジャック・ロンドン 奇想天外傑作集』(2013、辻井栄滋・芳川敏博共訳、明文書房)所収

“The Law of Life”(1901)「生の掟」
   のちに、短編集 Children of the Frost (1902, Macmillan)所収。

“The Minions of Midas” (1901)「ミダスの手先」
   のちに、短編集Moon-Face and Other Stories(1906, Macmillan)所収。
  翻訳本では『ジャック・ロンドン大予言』(1983、辻井栄滋訳、晶文社)所収。

“To Build a Fire” (1902子供用)(1908一般用)「焚き火」
   のちに、短編集 Lost Face (1910, Macmillan)所収

“Moon-Face”: A Story of Mortal Antipathy (1902)「まん丸顔」
   いやでいやでたまらない、まん丸顔の男を、犬とダイナマイトを使って殺してしまう完全犯罪もの。
  人間の本性の一部をみごとに写しとった小品。のちに、短編集Moon-Face and Other Stories(1906,
  Macmillan)所収。翻訳本では『アメリカ残酷物語』(1999、辻井栄滋・森孝晴訳、新樹社)所収。

“The One Thousand Dozen” (1903)「千ダース」
   のちに、短編集 The Fatith of Men & Other Stories (1904, Macmillan )所収

“The Shadow and the Flash”(1903)「影と光」
   「ただの肉」と共通するどんでん返しであり、現代性の高い作品。科学文明のむなしさと限界を示し、
  われわれに反省を迫る。のちに、短編集Moon-Face and Other Stories(1906, Macmillan)所収。
  翻訳本では『アメリカ残酷物語』(1999、辻井栄滋・森孝晴訳、新樹社)所収。

“The Leopard Man's Story”(1903)「豹使いの男の話」
   アッと驚く結末。小品ながら、これも完全犯罪のトリックの面白さを無駄なく満喫させてくれる。のちに、
  短編集Moon-Face and Other Stories(1906, Macmillan)所収。
  翻訳本では『アメリカ残酷物語』(1999、辻井栄滋・森孝晴訳、新樹社)所収。

“Love of Life(1905)「生命にしがみついて」
   のちに、短編集 Love of Life and Other Stories (1907, Macmillan)所収

“The Apostate”(1906)「背信者」
   のちに、短編集 When God Laughs & Other Stories (1911, Macmillan )所収。
  翻訳本では『ジャック・ロンドン大予言』(1983、辻井栄滋訳、晶文社)所収。

"A Nose for the King" (1906)「王様献上の鼻」
   ロンドンが日露戦争の特派員として滞在した朝鮮での体験は、「比類なき侵略」やこの作品(最初の
  タイトルは "The Nose")などに生かされている。不注意から多額の公金を流用し、死刑の宣告まで
  受けて牢屋に入っている政治家の運命は? のちに、短篇集When God Laughs & Other Stories
  (1911, Macmillan )所収。翻訳本では『ジャック・ロンドン 奇想天外傑作集』(2013、辻井栄滋・芳川敏博共訳、
  明文書房)所収。

"The Unexpected" (1906) 「思いもかけぬこと」
   それまで平穏で単調な生活を送っていたイーディスという女性が、25歳のときにアメリカに移住し、生活が
  一変する。文字通り “思いもかけぬこと”ずくめにどのように対処し、その後どのような結末を迎えるのか?
  のちに、短篇集 Love of Life and Other Stories (1907, Macmillan) 所収。翻訳本では『ジャック・ロンドン
  奇想天外傑作集』(2013、辻井栄滋・芳川敏博共訳、明文書房)所収。
  
“Just Meat”(1907)「ただの肉」
   どちらがやられるのかと読者に思わせておきながら、結局は二人とも殺してしまうどんでん返し。物欲
  のむなしさが漂う結末。作家ジョージ・オーウェルが高く評価した作品。のちに、短編集When God Laughs
  and Other Stories (1911, Macmillan)所収。翻訳本では『アメリカ残酷物語』(1999、辻井栄滋・森孝晴訳、
  新樹社)所収。

“Lost Face”(1908)「恥さらし」
   恐怖の長旅の果てに、極北の地のインディアンに拷問を受けながら殺されるのを嫌って巧妙な
  駆け引きを行い、苦もなく、殺される男の物語。インディアンたちとのやりとりもさることながら、
  作品の歴史的・地理的背景は壮大である。のちに、短編集Lost Face (1910, Macmillan)所収。
  翻訳本では『アメリカ残酷物語』(1999、辻井栄滋・森孝晴訳、新樹社)所収。

“The Enemy of All the World” (1908)「全世界の敵」
   のちに、短編集 The Strongest of the Strong (1914, Macmillan)所収
  翻訳本では『ジャック・ロンドン大予言』(1983、井栄滋訳、晶文社)所収。

“A Curious Fragment” (1908)「奇異なる断章」
   のちに、短編集When God Laughs and Other Stories (1911, Macmillan)所収。
  翻訳本では『ジャック・ロンドン大予言』(1983 辻井栄滋訳、晶文社)所収。

"Good-bye, Jack"「さよなら、ジャック」(1909) 「さよなら、ジャック」
  21世紀初頭の今日まで差別が残るハンセン病を扱った作品。ロンドン夫妻は、ハンセン病患者の
 隔離施設があるハワイのモロカイ島に上陸し、患者達と交流した。内容は、当時大変な支配力を
 有していた宣教師の家系の出で知識人であり億万長者でもある主人公ジャック・カースデイルが、
 容姿・歌唱力抜群のルーシー・モクヌイという女性が急転直下、仰天の悲劇へと導かれるのを目の
 あたりにする、という話。The Red Book Magazine (1909) 所収。のちに、The House of Pride & Other
 Tales of Hawaii
(Macmillan, 19012) 所収。
 翻訳本では『ジャック・ロンドン 多人種もの傑作短篇選』(2011,辻井栄滋・芳川敏博共訳、明文書房)所収

“The Chinago” (1909)「支那人」
   Ah ChoとAh Chowのひと文字違いで誤って断頭されることになったAh Choの、皮肉にもはかない
  物語。のちに、When God Laughs and Other Stories (1911, Macmillan)所収。
  翻訳本では『アメリカ残酷物語』(1999、辻井栄滋・森孝晴訳、新樹社) と、『ジャック・ロンドン 多人種もの
  傑作短篇選』(2011,辻井栄滋・芳川敏博共訳、明文書房)所収。

"Koolau the Leper" (1909)「ハンセン病患者クーラウ」
  ハワイのカウアイ島に住むハンセン病患者のクーラウが主人公である。クーラウは、彼を捕らえてハンセン病
 患者の隔離施設があるモロカイ島送りにしょうとする警官隊や兵士たちに追いつめられるが、命がけで徹底抗戦
 し、最後は自らの「意のままに生きて、意のままに死んでいく」という物語である。のちに、The House of Pride & Other
 Tales of Hawaii
(Macmillan, 19012) 所収。
 翻訳本では『ジャック・ロンドン 多人種もの傑作短篇選』(2011,辻井栄滋・芳川敏博共訳、明文書房)所収

“A Piece of Steak”(1909)「ひと切れのビフテキ」
   主人公は一切れのビフテキにもありつけない借金を抱えた引退寸前の老ボクサートム。相手は
  昔の自分を思わせる前途有望な青年ボクサー。トムは相手の激しい攻撃にほとんど反撃をしないで、
  ひたすらチャンスをうかがう。短編集 When God Laughs & Other Stories (1911, Macmillan )所収
  翻訳本では『試合』(1987、辻井栄滋訳、社会思想社・現代教養文庫)所収。

“South of the Slot” (1909)「スロットの南側」
    のちに、短編集 The Strongest of the Strong (1914, Macmillan)所収
  翻訳本では『ジャック・ロンドン大予言』(1983 辻井栄滋訳、晶文社)所収。

“The Dream of Debs” (1909)「デブスの夢」
   のちに、短編集 The Strongest of the Strong (1914, Macmillan)所収
  翻訳本では『ジャック・ロンドン大予言』(1983、辻井栄滋訳、晶文社)所収。

"Chun Ah Chun" (1910) 「椿阿春」
   多民族社会の問題点を扱った作品で、主人公は中国農民であった椿阿春。彼は、ハワイの国王の臣民であり
  アングロ・サクソン人の血のほうがポリネシア人の血より多く流れている女性とハワイで結婚して、経済的にも
  確たる地位を築いた。その夫人とのあいだに儲けた子供は息子が3人、娘が12人で、その子供たちはいろいろ
  な人種と結婚した結果、ますますいろいろなタイプの混血家族・親族の大集団ができあがってしまう。椿阿春の
  居場所・行く末は? のちに、The House of Pride & Other Tales of Hawaii (Macmillan, 1912) 所収。
  翻訳本では『ジャック・ロンドン 多人種もの傑作短篇選』(2011,辻井栄滋・芳川敏博共訳、明文書房)所収

"The Unparalleled Invasion" (1910) 「比類なき侵略」
   黄禍をからませた細菌戦争が中心テーマになっている。豊富な安い労働力に加えて、国際社会における今日の
  中国の国力の増大を考えると、大予言的作品とでも呼べる作品である。のちに、The Strongest of the Strong
  (Macmillan, 1914) 所収。
  翻訳本では、『翻訳本では『ジャック・ロンドン大予言』(1983、辻井栄滋訳、晶文社)とジャック・ロンドン 多人種もの
  傑作短篇選』(2011,辻井栄滋・芳川敏博共訳、明文書房)所収

"When the World Was Young" (1910) 「原始時代に返る男」
   昼間は都会にあってばりばりの実業家、なのに夜になると野山を縦横に駆けめぐる獣に変身。こんな二面性を
  持つ主人公だが、結婚相手が見つかって、さてどんな幕切れを迎えるのだろう? のちに、短篇集 The Night-Born
  (The Century, 1913) 所収。 翻訳本では『ジャック・ロンドン 奇想天外傑作集』(2013、辻井栄滋・芳川敏博共訳、
  明文書房)所収。

"War" (1911) 「戦争」
   あまり取りあげられることがなかったが、ロンドンの数ある短篇のなかでも秀逸なものの一つと言っても間違いない。
  日露戦争の従軍記者としての体験がリアルにシリアスに生かされている。とりわけ、主人公の一兵士の最期の描き方
  など、みごとと言うほかあるまい。のちに、短篇集 The Night-Born (The Century, 1913) 所収。 翻訳本では
  『ジャック・ロンドン 奇想天外傑作集』(2013、辻井栄滋・芳川敏博共訳、明文書房)所収。

“Goliah” (1910)「ゴリア」
   のちに、短編集 Revolution & Other Stories (1910, Macmillan)所収
  所収。翻訳では『ジャック・ロンドン大予言』(1983、辻井栄滋訳、晶文社)所収。

“The Strength of the Strong”(1911)「強者の力」
   のちに、短編集 The Strongest of the Srong (1914, Macmillan)所収
  翻訳本では『ジャック・ロンドン大予言』(1983、辻井栄滋訳、晶文社)所収。

“The Mexican”(1911)「メキシコ人」
   進行するメキシコの革命を背景に、少年フェリーペイはその成功に一役買うためにボクシングを
  資金調達の手段にする。ボクサーとして戦う少年の心臓の鼓動が、革命の成功に向けて戦う大勢の
  メキシコ人たちの心臓の鼓動と重なる。のちに、短編集 The Night-Born (1913, The Century Co.)所収
  翻訳本では『試合』(1987、辻井栄滋訳、社会思想社・現代教養文庫)所収。

“Yah! Yah! Yah!” (1911)「ヤア!ヤア!ヤア!」
   謎解き話として最後まで読者を放さない。児童文学作家椋鳩十は、この短編集を読んで鹿児島に居を
  移したという。のちに、短編集South Sea Tales (1911, Macmillan)所収。
  翻訳本では『アメリカ残酷物語』(1999、辻井栄滋・森孝晴訳、新樹社)所収。

"When Alice Told Her Soul" (1918) 「アリスの懺悔」
   ハワイに住むアリス・アカナは、フラダンスの興行主である50歳の女性で、さまざまな人との交流を通じで
  裏情報に精通しており、罪の意識を持つようになった。彼女はそれを取り巻くために一大決心をする。その
  影響を心配する多くの大物たちやいかに? のちに、短篇集 On the Makakoa Mat (Macmillan, 1919) 所収。
  翻訳本では『ジャック・ロンドン 奇想天外傑作集』(2013、辻井栄滋・芳川敏博共訳、明文書房)所収。

"The Princess" (1918) 「プリンセス」
   三人の浮浪者(それぞれ片腕を失い、南海諸島での体験を持つ)が、ある日偶然に浮浪者のたまり場で
  でくわす。はたして、この三人にどのような悲劇が起こり、今後の生きる道は? のちに、短篇集The Red One
  (Macmillan, 1918) 所収。翻訳本では『ジャック・ロンドン 奇想天外傑作集』(2013、辻井栄滋・芳川敏博共訳、
  明文書房)所収。

"The Tears of Ah Kim" (1918) 「阿金の涙のわけ」
   ホノルルのチャイナタウンで、大きな雑貨店の経営者である50歳の阿金が、74歳の母親に竹の棒で
  叩かれるが、彼の顔は満足げであった。しかし年月が経過するにつれ、生まれてはじめて涙を流すことになる。
  阿金の過去と現在の心境の変化を巧みに描写している。のちに、On the Makaloa Mat (Macmillan, 1919) 所収。
  翻訳本では『ジャック・ロンドン 多人種もの傑作短篇選』(2011,辻井栄滋・芳川敏博共訳、明文書房)所収

ノンフィクション
The People of the Abyss (1903)『どん底の人びと』又は『奈落の人々』
   大英帝国の首都ロンドンのどん底、イースト・エンドへと潜入したジャック・ロンドンがそこに見たものは
  想像を絶する無数のどん底の人びとの生活である。現代のルーツともいえる20世紀初頭のルポタージュ。
  翻訳本では『どん底の人びと』(1985、辻井栄滋訳、社会思想社・現代教養文庫)所収

Thre Road (1907)『アメリカ浮浪記』
   19世紀末アメリカン・ドリームのインサイド・ストーリーとも言える迫真のドキュメント。作者が16歳から18歳、
  でアメリカが史上有数の恐慌・不景気に見舞われた1892年から1894年、アメリカおよびカナダを約9ヶ月にわ
  たり転々と放浪した浮浪者体験を語ったものである。翻訳本では『アメリカ浮浪記』(1992、辻井栄滋訳、新樹社)所収

The Cruise of the Snark (1913)『スナーク号航海記』

John Barleycorn
(1913)『ジョン・バーリコーン』
   豊富な冒険とロマンスをちりばめた自伝小説でアルコールに関する体験を主観的かつ客観的に描写している。
  主人公は酒をやめようと悪戦苦闘をしているが、いつも失敗に終わってしまう。翻訳本では『ジョン・バリコーン』
  (1986、辻井栄滋訳、社会思想社・現代教養文庫)所収