2001年8月,京都大学の松井三郎教授らの研究グループがダイオキシンの毒性解明の手がかりを発見したことを報じるニュースがありました。これまでに,ダイオキシン類などの有害物質はAhR(芳香族炭化水素レセプター)と結合して毒性や環境ホルモン作用を引き起こすと考えられていましたが,AhRの本来の役割がわかっていませんでした。同グループは,AhRが本来、染料の藍の主成分でもあるインジゴ(インディゴ,indigo)やインジルビン(インディルビン,indirubin)などの化学物質を体外に排出する役割を果たしていることを見出したものです。ヒトの尿中からダイオキシンが検出されずに,体内でタンパク質が分解されて生成するインジゴ・インジルビンが検出されたことから,AhRとそれらの化合物との結合力をダイオキシン類と比較実験した結果からわかったものです。今後の毒性研究の進展や,ダイオキシン類の内分泌攪乱作用抑制の研究に結ぶつくことが期待されています。
※以下の各分子モデルは実験で求められている安定構造ではありません(配座は適当に設定し,PM3計算)。特にTCDD(2,3,7,8-tetrachloro dibenzo-p-dioxin)については折れ曲がり型でなく平板型を用いていますのでご注意ください。また重ね合わせモデルはあくまで模式的なものです。
インジゴ(indigo) |
インジルビン(indirubin) |
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TCDDとインジゴ ・色分け1(Chain):青がインジゴ,赤がTCDD |
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TCDD,インジゴ,インジルビン ・色分け1(Chain):青がインジゴ,緑がインジルビン,赤がTCDD |