ニューハーフヘルスA


目を覚ますと、伝言だけが残され暴力団の男達も女の子も消えていた。
僕の手には手術の請求書と膨らんだバストが残っていたのである。

医者からは注意事項と赤い錠剤の薬を貰って、その日は家に帰ることとなった
のである。このまま拉致さると思っていた穂は少しホッとしてはいたが、伝言
には一週間後に迎えに来ると書いてあったし、なにより胸の膨らみが現実のも
のとしてのしかかっていたのである。歩くたびに胸が揺れ乳首が衣服に磨れて
痛いのであった。

アパートの近くに戻って来た時、突然後ろから肩を叩かれた。
「おい、無視するなよ」
振り向くと真二が嬉しそうな顔をして立っていた。憂鬱な顔の穂とは対照的で
あった。

「あっ、真二か」
「真二かじゃないだろ。いくら呼んでも無視しやがって」
「そうか?ごめん」
「なにかあったのか?」

「・・・いや、別に・・・ちょっと考え事をしていたものだから」
「そうか。バイトを見つけたよ。お前も危ないバイトは止めて一緒にやらない
  か?まだ募集しているみたいだから」
「う〜ん。今はそれどころじゃないんだ」
「うん?どうかしたのか?」
「なんでもないよ。気分が良くないので悪いけど・・一人にしてくれないか?」
「大丈夫か?」
「あぁ・・また、連絡するよ」
「わかった。気が変わったらバイト紹介するから」
「それじゃ」
「またな」

部屋に帰った穂は洗面所の鏡の前で上半身裸になった。そこには以前の穂とは
まるで違う身体が映し出されていた。もともとスレンダーな身体の穂で胸板は
薄い方であり膨らんだバストがより強調され、艶やかな長い髪も手伝って、上
半身は女の子の身体そのものであった。

自分の手で膨らんだ胸をそっと触わってみると確かに自分の胸である。特殊メ
イクで付けられた胸ではなかった。乳首もしっかり感覚があるのだ。片手を上
げて脇の下を鏡に映すと医者が説明した通り2cm程の傷口があり縫った糸が
痛々しく存在していた。

(冗談じゃないよ)

穂はマッサージをしないと乳首が硬化すると言っていた医者の注意を思い出し
乳房を少しの間揉み解したが惨めになって止めた。穂はなにもする気になれず
その日は早くからベットに入ったのである。

仰向けに寝ている時は、さして目立たないのであるが横になると膨らんだ胸に
大きな谷間が出来るのである。

いつのまにか穂は眠りについていた。

夢の中で穂は男とベットを伴にしていた。後ろから男は穂の首筋に唇を寄せて
キッスをしたかと思うとゴツイ手をTシャツの下から中に侵入させて来たので
ある。

「駄目!」

Tシャツの上から男の手を押さえる。すると男は再び首筋にキッスをし言った。

「何が駄目なんだ?」

男は穂の答えを待たずに再び手を動かした。その手を止めようとする穂であっ
たが手に力がはいらない。ゴツイ手は膨らんだ胸に容易に達したと思うと鷲掴
みにしたのである。

「あぁ・・・痛い」
「どうした?」
「意地悪ぅ・・」

穂の腰が揺れる。それを察すると男のもう一つの手は下腹部に向かっていた。
手は陰毛に達したのがわかる。そしてより下へと移動するのである。
男性のシンボルであるペニスはそこには無かった。そのかわりに指を吸い込む
割れ目が存在していたのである。



夢はそこで終わった・・・

(夢か・・・・)

「あっ」
穂は一瞬、夢の感覚が残っているのかと思ったが違うのである。明らかにバス
トを弄る感覚が穂を襲っていた。

「おい!」
「あっ、起きたのか?」

そこには真二が居た。

「なんでお前がここに居るんだ。それに・・・」

穂は言いかけて、その言葉を飲み込んだのである。触れたくない言葉であった。

「いや、ちょっとお前が心配だったので来たんだが、ドアが開いていたものだ
  から」
「・・・・」
「そうしたらお前がうなされていただろう?近づいたら胸が苦しそうだったので」
「それで僕の胸を揉んでいたのか?」
「・・・・ちょっと確かめたくなって」
「なにをだよ」
「女の人の胸ってどんな感じなのか」
「おいおい、僕は男だよ」
「膨らみには変わりないっしょ」
「・・・・・お前・・女を知らないのか?」
「知ってるに決まってるだろ。でも赤ん坊の時で覚えてないんだ」
「それって・・もしかして・・・母親のことか?」

「でも、俺嬉しいよ。気持ちを察して、決心してくれたんだろ?」
そう言うと真二は再び穂に抱き付いて来たのである。穂は慌てて跳ね起きた。

「何を考えているんだ?お前」
「うん?性転換して俺のモノになってくれるんじゃ?」
「っなわけ無いでしょ」
「じゃ、その胸の膨らみは??」

穂は今日の出来事を説明したのである。

「ほぅ、それは災難だったな。でも、人間前向きに考えなきゃ駄目だよ」
「前向きって?」
「女として生きるってことさ。そして俺も応援してやるよ」
「応援って?」
「俺の彼女にしてやるってことさ」
「・・・・・」

穂の開いた口か塞がらなかった。それでも悩みを他の人に話したことで少しは
気分が楽になった気がしたのであった。

夜も遅くなっており身の危険を感じた穂は強引に真二を部屋から追い出し鍵を
締めたのであった。以前であればどんなにひとりになりたい時でも親友を部屋
から追い出すなんてことはしなかったのであるが今は別だった。



翌日、指定された時間に手術を受けた病院に行った。一週間程度で抜糸できる
とのことであるったが経過診察の為、穂は通院するように言われていたのであ
る。昨日は動揺していて気が付かなかったがそこは美容外科であった。薄いピ
ンクで統一された待合室ではソファーに座った数人の女性が据え置かれた雑誌
を読んで順番を待っていた。

受付で名前を言って診察券を渡すとその待合室で待つように言われたが男性は
穂一人でる。美容外科であるから当然といえば当然なことなのだがソファーに
座った穂をチラチラと見ながら女性たちは彼が男だか女だか迷っているようで
ある。

化粧でもしていれば然程身長も高くなく膨らんだバストの穂は状況から察して
間違えなく女性と思われるだろうが、だが今はノーメイクの男顔であった。

穂は女達の視線を避けるように隅のソファーに腰掛けて待っていたが、暇を持
て余し、近くにあった女性週刊誌を何気なく取り上げてページを開いた。

”男を感じさせるフェラの仕方”そんな見出しが目の中に飛び込んで来たのだ。
そこにはイラスト入りで細かく解説が記載されていた。テクニックの教本のよ
うであった。以前に穂も恋人にフェラをさせたことがあるが彼女もこのような
本を読んで知識を身につけていたのであろうか。

文章の最後には”従順で献身的な気持ちと態度が重要”と書かれて終わってい
た。穂は読み終えて不思議なことに気がついていた。自分がフェラを男性にす
る立場になって、その雑誌を読んでいたのである。

(おいおい)

「太田さん、太田穂さん・・・・2番の診察室にお入り下さい」

待合室のスピーカーから穂に順番が来たことを知らせる案内が聞こえて来た。
穂は無言で雑誌をもとあった場所に戻し立ち上がったのである。



「どうですか?」
「はい」

どうですかと聞かれても穂にとっては最悪な気分であった。

「上半身の衣類を脱いで、そこに腰掛けて」
穂は無言で着ていたジーンズ地のブルゾンとTシャツを脱いだが露になった自
分のバストの膨らみを見て恥ずかしい思いが込み上げて来たのである。

指示された診察台に穂が座ると先生は自分の椅子を引き寄せ正面に座った。

「我ながら最高の出来だな」
「・・・・・」

突然、医者が穂の乳首を摘んだ。

「えっ」
穂の全身に一瞬、電気が走る。医者はそんな穂を無視してクリクリと乳首を揉
むのである。

「ふ〜む」
同じように片方の乳首もゴツイ指で摘むと揉み出したのである。

「先生・・・」
「少し固くなっているな。言ったとおり揉み解したかね?」
穂は赤い顔で首を横に振った。

「駄目だね。医者の言うことを聞いてくれなきゃ。どうなっても知らんよ」
「すみません」
「渡した薬は飲んだかね?」
「はい」
渡された赤い錠剤は言われた通り飲んでいたのである。

「よい娘だ」
「・・・・」
「でも、念のためシピオン酸エストジオールを打っておこうね」
「??」
「筋肉注射だから少しいたいが我慢しなさい」
「はい」

穂はそれが卵胞ホルモンの一種で女性化させるものだとは知るよしもなく、
医者は看護婦に命じて準備させると穂に注射したのであった。

「よし、明日、また来なさい。帰ったら彼氏にでも胸を揉んでもらうように」
「・・・・」