臨床実験 Action 2 監禁されてから一ヶ月が経過していた。女医さんの言うとおり三日前から急激 に身体が変化してきたのだ。肌の色が透き通るように白く滑らかになって来た のである。全身に皮下脂肪がつき丸くなったような気もする。それでいて肌寒 いのだ。 そして昨日から胸が膨らみはじめたのである。乳輪や乳首も大きくなっている。 大きくなるものばかりではなかった。男性自身はその見る影もないほど小さく なってしまったのであった。はじめは寒いので縮んでいると思っていたのであ るがそうではなかった。一日の間に小指程まで縮小してしまったのである。 男性自身の下にある袋の中の睾丸も無くなってしまっていた。正確に言うと大 豆マメくらいのものを袋の中に発見したが、それが睾丸なのかどうかは僕には わからないのだ。下腹部の痛みは激しさを増し熱も帯びている。 僕は自分の身体変化が恐くなりベットの上、シーツで覆い一日を過ごしていた。 「ごめんなさい」 部屋に入るなり女医さんは僕に謝りながら近づいて来た。 「寒かったでしょ?エアコンで温度調整しているんだけど、身体変化に合せて 変えるのを忘れていたわ」 女性の肌は男性とは違い、同じ温度でも感じ方が違うとのことであった。 「もう、大丈夫よ。設定したから」 「・・・・・・」 「どうしたの?」 「下腹部が痛くて・・・」 「どれどれ・・見せてみなさい」 そう言いながら、彼女は僕のシーツを剥ぎ取ったのである。僕は無意識にバス トと下腹部を隠していた。 「駄目よ。それじゃ診れないでしょ」 彼女の手が僕の手を払い除ける。 「わぁ、大きい」 彼女は僕の胸を見て言ったのである。通常のホルモン治療であれば、Aカップ 程度、大きくてもBカップ止まりの変化だが、僕の胸は少なくみてもCカップ 以上にはなっていると思われた。 「ちょっと失礼」 そう言うと彼女は僕の乳首をクリクリと摘んだのである。思わず声を出しそう になってしまい、慌てて僕は通常の言葉を発した。 「なにするんですか!」 「うん?感じちゃう?」 「そんなわけ無いでしょ!」 「あはは。しこりが出来てるか調べたの。問題ないわね」 「わぁ、小さい」 「やめてください」 すでに僕のペニスは小指ほども無くなっていた。 「今日中にはなくなるわね」 「・・・・・・・」 「どう?生まれた時からついていたものがなくなる気分は」 「僕はどうなってしまうんだ?」 「私はあなたの気分を尋ねているのよ」 「不安です」 いつのまにか僕は女医さんに対して敬語を使うようになっていた。僕をこんな 目に合せている張本人の彼女に、なぜ敬語を使っているんだ? 「嬉しくない?」 「・・・・」 「あなたの脳は女性化しているから、ついていることに違和感を感じはじめて いるはずよ。むしろペニスの消失が嬉しいんじゃなくて?」 「・・・・」 「どうなの?答えなさい!」 「はい、少し」 彼女の高圧的な言葉に圧倒され僕は返事をした。しかし、僕の気持ちの中には ペニスに対する違和感が目覚めはじめていたのも事実であった。 以前の僕だったら、この身体変化についていけなかったと思う。しかし、先生 の言うとおり脳が先に女性化してしまったからなのだろうか、女性への身体変 化を素直に受け入れられるのである。むしろそのことを心の中で望んでいるよ うにも思えた。 「今、体内では子宮が創られているハズよ。プロテイン・タンパクを補給して おきましょう」 「なんですか?それ」 「あなたの身体は急激に変化しているのでエネルギーが必要なの、だからそれ を補充するのよ。変化に必要な栄養を供給しないと不測の事態が起きる可能 性が大きくなるのよ」 「そうなんですか」 「それはそうと、身体的にも女の子に変化したんだから、そろそろ名前も考え ないといけないわね。いつまでも雅之じゃね」 「・・・・・・・」 「美玖はどう?私が小さい時に死んでしまった妹の名前なんだけど、どう?」 「妹さんの?」 「嫌?」 「いえ、気に入りました」 「よかった。私のことは静香と呼んでね」 「・・・・・」 「まぁ、いいわ。美玖にとっては私は憎っくき敵だものね」 「・・・・・」 翌日、ついに僕は男性の特権である立ちションを出来なくなってしまった。 ペニスは小さくなり陰毛の中に隠れてしまっていたのだ。仕方なく僕は部屋の 隅に設置してある洋式の便器に座って用をたすことにした。 が、出ないのである。利尿感はあるのだが尿が放出できないのだ。いつまで経 っても放尿が出来ず、僕はベットに戻った。しかし、時間が経つにつれて利尿 感が増して来るのである。膀胱はすでに満杯になっているようだ。なんども便 器に座るが状況は変わらなかった。まるでオシッコの仕方を忘れてしまったよ うである。 「こんなことって」 全身から脂汗が出て来た。腹痛は極限に達した。 (このまま死ぬのだろうか) 僕は涙で焦点の定まらない目で監視カメラを見た。そして気を失っていたので ある。 「美玖・・・・どう?目が覚めた?」 目の前に女医の静香さんが心配そうに僕の顔を覗き込んでいた。 「生きていたんだ・・・」 利尿感は消えていた。その代わり僕の下腹部からは管が伸びベットの下へと消 えている。 「ごめんなさい。病院に行っていたものだから」 「僕はどうなってしまったんですか?」 「もう大丈夫よ。ペニスにつながる尿管が消滅して排泄出来なくなってしまっ たの。今、管を通して排泄出来るようにしたから心配ないわ」 「CRで撮影したけど、あと少しで子宮が構成されるからもう少しこのままね」 「もう少しって、どれくらいですか?」 「う〜ん、一週間くらいね」 「そうですか・・・・・・」 結局、二週間近くベットで過ごした後、手術をすることとなった。通常のSR S手術と違い僕の場合は子宮や膣が形成されている為、簡単な陰唇形成手術で 済んだようだった。それでも手術後、一週間はベットに釘付けとなっていた。 「そろそろ、大丈夫かな」 包帯を解いて静香さんは僕の下腹部からカテーテルを外すと手鏡を出して僕に 手渡したのである。 「それで見て、我ながら完璧だと思うわ」 「えっ?」 「女になった自分を確認するのよ」 「そんなこと・・・」 「いいから見なさい!いつの日かここに男性のペニスが入れられることになる のよ」 「・・・・」 「ここにペニスを咥えて、声をあげる美玖の姿を見てみたいわ」 僕は目を逸らせた。 「・・・・まだ、僕を怨んでいるんですか?」 「・・・・」 静香さんは言葉を飲み込んだ。 「どうしたら許してもらえるんですか?」 「言ったでしょ?私の臨床実験に付き合ってくれたら許すって」 「それだったらすでに・・・・付き合ったじゃないですか」 「まだ、第一段階も終わってないわ」 「まだ??」 「そう、身体の最終変化が残っているのよ」 「なんなんですか?それって」 「すぐにわかるから大丈夫よ」 彼女はそれ以上話してくれなかった。しかし、その日の晩から最終変化が始ま ったのである。 身体は高熱を発し全身から汗が溢れ出た、そして骨がきしみ激痛が襲って来た のである。高熱と骨の痛みは数日間続き・・・治まったと思うと、しばらくし て再び同じような状態となってしまうのである。ついに声も擦れて出なくなっ てしまった。 「美玖、調子はどう?」 僕は無言で頷いた。声の出し方を忘れてしまったのである。 「ちょっと立ってみて」 不思議な顔をして首を傾げてみせた。 「いいから早く立ちなさい」 僕は彼女の命令に従った。 「・・・」 「わかった?これが最終変化なの」 僕は直立不動で立っているにもかかわらず、彼女を少し見上げているのであっ た。僕はもともと男性として背の高い方ではなかったが少なくても彼女よりは 身長があったはずである。 「う〜ん、150cmちょっとってとこかしら」 「・・・・?」 もしそうだったら15cm近く身長が縮んでしまったことになる。 「仕方ないわね。もともと背は高い方じゃなかったから、でもその代わり骨盤 は大きくなっているはずよ」 「・・・・・」 「後は声が出るようになれば・・・第一段階は完了するんだけど」 「・・・・・」 「シーツを外して」 「・・?」 「早くしなさい」 彼女は僕が身に着けているシーツを剥ぎ取ったのである。そこには女性の身体 があった。 「う〜ん、見事なプロポーションね。少し焼けちゃうかも知れない」 「・・・・・・」 「こっちにいらっしゃい」 そう言うと彼女は全裸の僕の手を引いて部屋のドアに向かっていった。カード キーでドアを開けると僕を連れて部屋の外に出たのである。何ヶ月ぶりに部屋 を出たのだろうか。しかし、部屋を出ると、僕の中に羞恥心が沸いて来た。誰 かと会わないか心配になって来たのである。 「ここが私の部屋よ。入って」 「・・・・・・」 彼女は僕を部屋の中央に連れて行くと、部屋の壁を指差した。そこには大きな 鏡があったのである。僕は変わってしまった自分の全身をはじめて見たのであ る。 (これが・・・僕なのか?) 肩幅が狭く、骨盤が大きく横に広がっているのだ。その分、ウエストも細く見 える。バストは思ったより大きく見えなかったがCカップはあるだろうか。 「どう?完璧でしょ?外面だけじゃないわよ。脳の構造まで女性化しているん だから。誰もあなたが男性だったなんて思わないわ」 「あとは女性としての生活知識を身につけないと。なんて言っても18年間の 女の子としての生活で覚えることを勉強しなきゃならないんだから、これか らが大変よ」 |