新入生を迎えての新学期最初の分子は香料のカシュメランです。下記「匂いの帝王」はミステリータッチで香り分子の科学を学べるユニークな書籍ですが(7回膜貫通タンパク質のイラストなども出ています),その独特の語り口の中でも秀逸な一文として,カシュメランについての記述を紹介します。
◎中島基貴 編著,「香料と調香の基礎知識」,産業図書(1995)
◎チャンドラー・バール 著,金子浩 訳,「匂いの帝王 天才科学者ルカ・トゥリンが挑む嗅覚の謎」,早川書房(2004)
p.25 カシュメラン。純然たる合成分子だ。調香する際には麝香(ムスク)に分類されるけど,実際には際だった特徴のない透明な甘い香りと,樟脳っぽい濡れたコンクリートのかび臭い香りと,焦点が合ったりぼけたりを繰り返すフルーティーなブラックベリーの香りが組み合わさった独特な匂いなんだ。単一な分子がそんなに多くの特徴を持っているなんて,信じられないよね。
p.206(ジヒドロペンタメチルインダノン) 強く,拡散性のあるウッディ,スパイシー,ムスク調香気を持つ淡黄色の液体。様々なタイプの製品香料に用いられる。 [商品名]Cashmeran