1999/05/12の朝のテレビや朝刊で，育毛効果でなく“発毛”効果をもつとされるミノキシジルを含んだ発毛剤が日本国内でも６月に発売されるというニュース．
　ミノキシジルはもともとは血管を拡張させて血圧を下げる効果をもつ薬剤として開発されましたが，発毛という思わぬ副作用があってアメリカで爆発的に売れ，70％の人に何らかの効果があったとのこと．日本でも個人輸入などされていたものが長期にわたる中央薬事審議会での審査が終わって認可となり，“生活改善薬”として発売になるものです．
　生活改善薬は今までの薬の概念と若干異なり，日常生活上気になる症状を改善することを目的にしたもので，性的不能治療剤バイアグラ（Viagra；商品名）が1999/03に発売されて話題になり，重大な副作用による事故も起きるなどしています．
　また，“性格を変える薬”，“幸せになれる薬”として欧米で発売されている，選択的セロトニン再取込阻害剤（selective serotonin reuptake inhibitor；SSRI）のうち，日本ではフルボキサミン（fluvoxamine）が1999年４月に製造承認され，セルトラリン（sertraline），パロキセチン（paroxetine）が承認申請中です．これらはもともと抗うつ剤という治療薬で服用に当たっては医師の指導が不可欠で，様々な副作用も指摘されており，生活改善薬という名称で扱えるような手軽なものではありません．
　生活改善薬は薬品メーカーにとっては新市場を開拓するものであり，今後も様々な新薬の登場が予想されます．インターネット上でもいい面ばかり強調したり販売を目的としたサイトが多いですが，薬は正しく使ってこそ効果があるので，専門家や公的機関による副作用情報も含めた情報提供も不可欠と考えます．

【参考資料】

• 雑誌特集『生活改善薬の開発物語』，化学 2005年10月号，化学同人

• 発毛剤・育毛剤関連
  　
  図 ミノキシジル（左）とt-フラバノン（右）
  • 日本医学育毛協会
  • ミノキシジルと動悸・胸痛等について（医薬品等安全性情報157号・概要）
  • ミノキシジルの安全使用の徹底について（厚生省，1999/12/03）
  • 花王、新規育毛成分「t-フラバノン」の有用性を確認（毎日，2001/10/26）
  • 発毛を左右するたんぱく質特定　ライオンと徳島大研究（朝日，2003/06/16）
  • 新製品：遺伝子活用の育毛剤発売へ　ライオン（毎日，2003/08/18）
  • 発毛メカニズムに革新を起こす発毛促進シグナルを増幅し、発毛エネルギーを供給する新世代育毛剤『薬用 毛髪力 INNOVATE〔イノベート〕』新発売（ライオン，2003/08/14）
  • 「飲む脱毛症治療薬」も登場へ　育毛・発毛剤市場に注目（朝日，2004/05/30）
  • 資生堂、「アデノシン」取り込んだ育毛剤（日経，2004/12/01） → 資生堂、発毛因子の産生を高めて男性型脱毛を改善する新規育毛成分「アデノシン」を開発（日経，2004/12/01）
  • 毛根：マウス実験で増加　新育毛剤に期待　ライオン発表（毎日，2004/12/07）　※タンパク質エフリン
  • 大正製薬、初の女性用発毛剤「リアップレディ」を４月から発売　女性への有効性を臨床試験で確認、初年度50億円を見込む（日経，2004/03/04） → リアップレディ（大正製薬）
  • 女性向け発毛・育毛剤、市場も伸ばすか――大正・資生堂が大型商品（日経，2005/05/16）
  • 薄毛：女性の原因はホルモン減少−−「ライオン」研究チーム（日経，2005/06/14） → プレスリリース（ライオン，2005/06/13）
  • 飲む発毛剤：厚労省が国内販売を承認、11月末ごろ発売（毎日，2005/10/11）　※フィナステリド（Chime版）
    ▼以下関連情報
    • 飲む発毛薬：万有製薬に問い合わせ殺到　過大な期待禁物（毎日，2005/11/04）
    • 飲む発毛剤：国内発売を延期（毎日，2005/10/26）　※早くても12月末に
    • のむ発毛薬の輸入承認　国内初、年内にも発売へ（ケムステニュース，2005/10/11）
    • 男性型脱毛症用薬「プロペシア錠0.2mg／1mg」輸入承認取得のお知らせ（万有製薬，2005/10/11）／AGA（男性型脱毛症）を考えるサイト
  • 世界初、皮膚角質層の分子構造に着目した研究により、育毛剤の頭皮浸透性を向上（ライオン，2006/01/12）
  • 大正、有効成分を５倍に高めた新リアップ（日経，2009/05/22） [NEW!]

• 性的不能治療剤関連
  
  ※バイアグラの標的であるホスホジエステラーゼ5（PDBデータ1UDT；PDB部分データリスト参照）とバイアグラ
  • 厚生労働省ホームページ検索（接続後，“バイアグラ”で検索）
  • “バイアグラにライバル、米（FDA）が「ユープリマ・イクセンス」を承認へ”（次郎の医療講座）
  • ユープリマ（塩酸アポモルヒネ）舌下錠の米国での販売許可申請の取り下げについて（武田薬品，2000/07/03）
    ※2000/04/12朝日新聞に，バイアグラの対抗品とされるユープリマ（塩酸アポモルフィン）について米食品医薬品局（FDA）が承認勧告との記事があり，やはり強い副作用を警告することが条件になっていましたが，その後，このようにユープリマ舌下錠の販売許可申請の取り下げというアナウンスが入っています。
  • PROVEN試験の結果から、バイアグラ〔クエン酸シルデナフィル〕で十分な効果が得られなかったED患者に対するレビトラ〔バルデナフィル〕の有効性が明らかに（バイエル，2003/10/14）
  • バイアグラに強敵出現？　バイエル薬品、来春にも販売へ（朝日，2003/10/15）
  • バイアグラ、レビトラに続く勃起不全治療薬、米が承認（朝日，2003/11/23） → FDA情報
  • バイアグラは生殖力を低下させる　マウスで得られた予想外の結果（Nature，2004/04/15）
  • 脳に作用するABT-724による性的不能の治療　バイアグラの副作用を回避できる新薬として期待（Nature，2004/04/22）
  • バイエルの勃起不全治療薬レビトラ、６月下旬発売へ（朝日，2004/04/23）
  • 男性の不妊症が世界的に急増、環境ホルモンなどが原因か（朝日，2004/06/01）
  • 医薬品成分（ホモシルデナフィル）を含有していたレビトラジェネリックと称する無承認無許可医薬品の発見について（厚生労働省，2004/11/05）
  • 勃起不全治療薬で新薬 「バイアグラより副作用少ない」（北國新聞，2004/11/17）　※金沢大学・染井正徳教授らによるSST-VETの発明
  • 「女性向けバイアグラ」、FDA諮問委員会が安全性を懸念（WIRED NEWS，2004/12/06）
  • 無許可医薬品：勃起不全の治療薬に副作用の恐れ（毎日，2004/12/28） → 医薬品成分〔ホモシルデナフィル〕を含有していたレビトラジェネリックと称する無承認無許可医薬品の発見について〔その２〕（厚生労働省，2004/12/28）
  • 傷心にもバイアグラ（Nature，2005/01/23）
  • バイアグラ：服用者の一部に深刻な視力障害　FDA調査へ（毎日，2005/05/28） → 『バイアグラ』服用者に視覚障害、米連邦当局が因果関係を調査へ（WIRED NEWS，2005/05/30）

• 選択的セロトニン再取込阻害剤（SSRI）
  • 抗うつ剤の分類（SSRI，SNRIなど）
  • 成人の自閉症者の特効薬（SSRI）？とその副作用（じゃじゃ丸トンネル迷路）
  • “脳と心をあやつる物質”（Chime版） ｜ 「亀-C-C-N」結合で見る脳と分子（Chime版）
  • 明治製菓とソルベイ製薬がマレイン酸フルボキサミンの適応拡大を申請（明治製菓，2003/06/09）
    ※明治製菓：社会不安障害の治療薬を申請（毎日新聞，2003/06/10）