代表的な解熱・鎮痛剤として知られるアスピリンは,1897年にドイツの化学会社によって合成されました。アスピリンの鎮痛効果は,痛みや炎症をおこす生理活性物質プロスタグランジンの生合成に関与するシクロオキシゲナーゼを阻害するためと考えられています。
また近年,血栓予防薬としての効能も見出され,狭心症・脳梗塞再発予防薬としての用途が開かれています。
その一方,アスピリンは消化管出血や潰瘍などの副作用があり(胃粘膜の保護機能などにも関与していプロスタグランジンの合成が阻害されるため),薬物アレルギーも少なくなく,特に日本人は欧米人よりも感受性が高いとされています。
そこで登場してきたのが胃を荒らさないスーパーアスピリンと呼ばれる一連の鎮痛剤で,2001/03/15の朝日新聞にはその第1号のセレコキシブ(商品名セレブレックス)が,アメリカでの半年間の売り上げでバイアグラを超えたとの記事が掲載されました。
シクロオキシゲナーゼ(COX)にはCOX-1とCOX-2の2種類があり,アスピリンなどの非ステロイド性消炎鎮痛剤は両方を阻害するが,スーパーアスピリンはCOX-2だけを阻害するので副作用が低いと説明されています。これも酵素タンパク質の高次構造が厳密に求められるようになり,特定の効果をもつ薬が設計できるようになったことによる成果の一つです。
セレコキシブ(celecoxib) |