前回連載へ 次回連載へ 朝日新聞朝刊 1998年7月16日付 家庭面 (毎週木曜連載)
「育休父さんの成長日誌」太田睦担当分第24回

学童保育(1)

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 上の子が二歳のとき、急に気になった。小学生になったら、放課後をどう過ご すのか。無知を恥じながら保育園の父母仲間に聞くと、学童保育(学童クラブと もいう)というものがあって、三年生ぐらいまでは、放課後を仲間と遊んだり勉 強したりするのだという。「ああ、そんなものがあるんですね」と何も知らなか った私が感心すると、意外なことを告げられた。住んでいる小学校区には、その 学童保育施設が無いというのだ。

 年上の兄弟も、近所に祖父母も居ない私の娘は、三十〜四十分かけて近隣の学 童保育に通うしかないようだ。しかし、そこは定員オーバーしそうな気配もある し、一年生に通わせるにはちょっと遠くて、少なからぬ児童が毎年夏休みごろに 辞めるらしい。

 なんとかしなくてはいけない。子供が成長していけば、いずれ勝手に放課後の 生活をするのだろうが、それまでの環境を整えるのは親の仕事である。調べる と、市内ほとんどの小学校区に公立の学童保育施設があり、ない方が珍しい。行 政にかけあえばなんとかなるのではないか。

 「学童保育をつくるのは大変ですよ」と事情を知る人たちは口をそろえた。大 抵は何年もかかって、肝心の自分の子が間に合わないという。急ぐ必要がある。 そう考えて父母仲間に声をかけてみたが、いまひとつ実感がわかないみたいだ。 実のところ私自身もよく分かっていない。一体、何をすればいいのだろう。

 とにかく動かなくては何も始まらないから、近隣の学童保育を順に訪問した。 私の小学校区から何人ぐらいが越境して通っているのかを調査したのだ。計二十 六人いる。あきらめて子供を家で過ごさせている親もいるとすれば、四十人規模 の需要はあるに違いない。

 調査リポートを作って、父母仲間に配布したところで、下の子が生まれて活動 は中断した。赤ん坊を放っておくわけにはいかないのだ。しかし私はこの話を何 としてでも実現させたかった。両親で働くからには、子供にはできる限りのこと をしてあげたい。その意味で、これは育児休職と同じだった。もっとも、二度目 の育児休職を妻に反対されて目標を喪失し、エネルギーのはけ口を求めたという 側面もあるのだが。

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