男も育児休職/2.育児休職を申請する

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育児休職を検討する

では、どうするか。私たちの勤めている会社には育児休職制度があった。それによれば「女性」社員が出産した場合、生後一年までは育児休職を取れるのである。秋に生まれる予定のわが子は来年四月には五カ月を過ぎているであろう。四月になれば保育園に空きが出て、しかも乳児保育可能な月齢になっているということだ。生まれて八週間、つまり二カ月は産休がある。さらに三、四カ月育児休職して四月から近くの認可保育園に入れよう。それが私たちの描いたプランであった。

ちょうどそのころ、国会で育児休業法案が可決された(1991年春)。もめごとの多いこの国会で、優先順位が低いとみられがちな育児休業法案はなかなか審議が始まらず閉会まぎわにやっと可決されたのだった。この法律によれば、男も育児休業することが権利として認められるという。つまり、私は育児を理由に会社に休職を申請できるらしいのだ。妻だけに育児休職させるのではなく、私も育児休職できるのである。こいつは、ちょっと見逃せない。

だが、今申請できるのだろうか。会社はいつから対応してくれるのだろう? 調べてみると、この法律が施行されるのは92年四月からで、それ以降は会社は申請に対して拒むことができないらしい。たとえ会社にそういう制度がなくとも、拒めばそれは法律違反なのだ。しかし、私たちが必要とするのは92年三月までであって、92年四月になれば保育園の番だ。

私は友人の弁護士に聞いてみることにした。大学を卒業してから六年ほど司法試験浪人した男だが、弁護士には違いない。「ああ、そういうのはね、交渉してみるに限るね」と、彼は言った。私はもう少し細かいアドバイスを求めた。あまりにあっさりしすぎて専門家らしからぬ答えに思えたのである。しかし彼の答えはいっしょであった。「そうしたものは、やってみなきゃ分からない」のだそうである。そう、やってみるしかないのか。どこから手をつけたらいいのか 分からないままに会社相手の交渉を私は始めた。


〔参照文献〕

労働省婦人局婦人福祉課編著『わかりやすい育児休業法』有斐閣

その後、多くの解説本が現れています


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