男も育児休職/3.父親をする、育児に参加する

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赤ん坊と付き合う(1)

生後三カ月もすると赤ん坊は寝たきりのままではあるものの、いろいろ成長してくる。まず、喃語(なんご)がさかんになり人の話に相槌を打つように反応して「あー」と返事をする。機嫌がいいと、この喃語にもいろいろバリエーションが出てきて、「あまむ」、「うー」、「ゅま」、「うぐにゅまあぐみゅう」、「にゅまあ」だの、意味不明ながらも相手をして飽きない。もっとも、ほとんど猫のような声にもなって、ペットをかわいがっているのとどこが違うと、妻から鋭く指摘される。確かに、この段階の赤ん坊は、まだ人間へ進化しきっていないという感じである。

必ずしも人間だけが、赤ん坊をあやすわけではないということも分かった。というのも、妻が買ってきたクリスマス用品の赤と緑の長靴の飾り物を目の前にぶらさげておくと、たいへん喜ぶのである。長靴に「あー」だの「うー」だの話しかけては笑い、たいへん機嫌がいい。親があやしても、あそこまで喜ぶことはまれじゃあないかと長靴に嫉妬すら感じてしまう。この長靴には鈴がついており、手を延ばしてチャリチャリ鳴らすという芸当までやってのけた(その後あまりやらなかったから単なる偶然かもしれない)。よって私たちは、この長靴をベビーシッターと正式に認知し、手が赤ん坊にまで回らないときは相手を頼むことにした。このベビーシッターは五カ月ごろまで実によくめんどうをみてくれた。

体重は順調に増えている。ただ、ときどき排便が不調だ。大晦日には三日間の便秘を記録した。これはヤバイ。おなかは膨れてくるし機嫌も少し悪そうだ。これが赤ん坊側のマイナスポイント。大人の側の事情としては、次の日、年賀であちこち連れて歩かなくてはならず、出先で大量の大便にまみれたくない。正月になってしまうと薬局だって閉まってしまうのだ。薬局でいちじく浣腸を買ってくる。赤ん坊が生まれて以来、初めてする体験というのが増えたが、これもその一つ。私は今まで浣腸というものをしたことがないのである。なんとなくワクワクする。赤ん坊の肛門にいちじくの先を挿しこんで液を注入する。が、でない。ウンともスンとも言わない。じっと赤ん坊の横で十分待ったが出てこない。そのうち出るかもしれないから、といって寝かしておく。夕食をすませ風呂に連れていこうと抱き起こすと、はたして大便がおしめからあふれだし、着ている服まで大便まみれになっていた。親は歓喜の声を上げ大便まみれの娘を抱きかかえ風呂場に直行する。大便を洗い流す。よかった、よかった。うんこにまみれてほめられるなんて今のうちだけだろうなあ。


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