男も育児休職/6.主夫をする

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猫を観察する

どうでもいいことだが、赤ん坊が生まれたころ、庭によく来る野良猫も子供を産んでいた。母猫は美猫であった。ときおり、この美猫に連れられて母猫とそっくりの薄茶色をした子猫二匹と父親似の黒の虎縞の子猫一匹が庭に出没するようになった。縁側で赤ん坊をあやしていると、この猫たちがやってきて庭からこちらを眺めている。私も赤ん坊といっしょにあちらを眺めている。対称性のある風景である。

さらにどうでもいいことだが、育児休職のころ、母猫の様子がおかしくなった。鼻をズルズルいわせている。目やにもたまって目の下が黒くなっている。花粉症だろうか。猫が花粉症? 聞いたことがないが、なって不都合はあるまい。ときどきくしゃみをして、つらそうだ。顔もむくんで、美猫が台なしになっている。

実際どうでもいいことだが、このころは子猫がほとんど独立したが(あるいは死んだか?)一匹だけ乳離れしていないのがいる。いつも母猫の後をついてきて、ときどき乳を探るように頭を母猫の胸に埋めるのである。マザコン猫であろうか?

本当にどうでもいいことだが、ある日、この花粉症猫とマザコン猫の二匹が庭先にいると、のそのそと真黒い巨猫がやってきて花粉症の元美猫にキスをした。花粉症猫はすまし顔で知らんふりしている。巨猫はそのまま、のそのそと歩み去っていく。うーん、あれは新しい男だな。息子の前で母猫を誘惑しようとしたが、すかされたので、せいぜい威厳を保って去っていったわけだな。私は猫の地域社会にもイロイロあるのだということを学んだ。

そういえば、やはりどうでもいいことなのだけど、隣の屋根の上に座って夕日を眺めている三毛猫も、なかなか癖のありそうな猫だ。あいつも、うちの庭に来ないだろうか。

しかし、最近の俺はどうでもいいことばかり気にしているな。猫のことばかり気にしているではないか。妻が断じた。「育児ノイローゼなんじゃないの」。


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