男も育児休職/6.主夫をする

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非難される

私が育児をしていることに関して、たった一度だけ非難されたことがある。それは薬局で赤ん坊の薬を待っているときのことだった。

隣に座ったおばさんは、赤ん坊が笑いかけたので笑い返したが、男の私が赤ん坊を抱いていることに、あるいは付近に母親がおらず私がたった一人で赤ん坊を連れてきたらしいことに、強い不信感をもったらしい。正直な人と見えて、それが表情に出ている。「お母さんはどうしたの?」と、おばさんは私につめよった。私は正直に「今、働いています、今日は私がめんどう見ているんです」と答えたのだが、おばさんは「んまあ」とつぶやいて、それ以上、声に出したコメントを中止した。しかし、何か言いたげにチロチロとこちらを見ている。

「太田さん、薬ができました」、呼ばれた私は薬を受け取った。薬剤師さんが赤ん坊に「バイバイ」と言ったので、私は赤ん坊にバイバイをさせて薬局を出た。ついでに、先ほどのおばさんにもバイバイをさせたら、やむなくおばさんは赤ん坊にバイバイをした。おばさんの顔は、私に対する不信感と赤ん坊への笑顔がないまぜになった、奇妙なものであった。


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