男も育児休職/6.主夫をする

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離乳食を食べさせる

保健所の「母と子の栄養教室」以来、米粥とホウレン草のパターンで挑み続けているのだが、うまく行かない。「栄養教室」で分かったことの一つは、タイミングの問題が大きい、ということである。泣いている時は駄目、眠い時は駄目、おなかが空いている時は駄目の駄目々々つくしである。一日のうち、二回目か三回目の授乳時を見計って、おなかが空きすぎないうちに、食べさせるのを方針とするべし。ところがうまく行かない。口許にスプーンで持って行ってお粥の匂いがした途端、口が拒絶の体勢になってしまうのである。米粥から初めて、ホウレン草を加え、さらに白身魚のすりつぶしを加えると、主食・野菜・蛋白源の三拍子揃った食事になる。そういう教科書的なパターンを思い描いていた父親はここで無力感にとらわれるのである。だしは一度に沢山とって、製氷皿を使い、小さなブロックに凍らせていつでも使えるように冷凍室に常備されている。ホウレン草は常に一定量が野菜室の中だ。しかし父親が構える程には現実は甘くない。

何日か経って4回目の授乳時に機嫌がよさそうなので、朝タイミングを外した(取材のせいである)離乳食を試みる。やった!ホウレン草をごっくんと、一さじ飲んだ。うふふふふふ。次の日はホウレン草二さじをクリアー。明日三さじ食べたら、次は白身魚に挑戦しようとするが、人生は三歩進んで二歩退くのが常とみえる。ゴックンと飲み込むときもあれば、口の中に入れるだけで、後はダラダラ口の外にこぼすだけのときもある。食べる日もあれば食べない日もある。なるべく条件を合わせ、眠くなく、おなかが空いてもいず、満腹でもなく、ニコニコしているときを見計って、三回目か四回目の授乳の前にやってみるのだが、どういうときに食べてどういうときに食べないのか予想がつかない。それでも懲りずに米粥(ベビーフード)、ホウレン草のすりつぶし、白身魚のすりつぶしを毎日数さじずつ与え続けた。

慣れてきたところでメニューを替えて、にんじんをすりおろしてだしで煮たものと、豆腐をすりつぶしたものなどを導入する。人参は甘いので良く食べる。豆腐も問題なく食べる。メニューを増やすにつれて分かってきたことがある。要は、大人が食べてもまずいものは、赤ん坊もまずいのだ。当たり前の話なのだが、赤ん坊が飲み込みやすいように細かく食物をすりつぶすことばかりにこだわりすぎて、味の方をおろそかにしていたのだ。素材の味さえ出ていれば十分だと、赤ん坊を甘くみていたようである。

例えば米粥は自分で作るのがめんどくさいのでベビーフードを使っていた。あるときブランドを替えたらとたんに食べるようになった。赤ん坊にも好みというものがあるのだ。大人が食べても、この方が確かに味はよい。これは父親の調査不足であった。娘よ、すまない、味見や比較もろくにしない父が怠慢だった。この話を聞き、母親はある休日、お粥を自分で作って食べさせてみた。するとどうだろう、ベビーフードより見てくれは悪い自家製のお粥を赤ん坊はおいしそうに食べているではないか。手間をかけるだけのことはあるのだ。よし、これを製氷皿に入れて冷凍しよう。それを小出しに使えば手はかからない。

この後、離乳は調子よく進んだ。キャベツ、トマト、大根、鶏肉、じゃがいも、順調に食べられるものが増えていく。それを確認しながらときどきは大人のメニューをお裾分けしたものも食べさせるようにする。育児休職中の最大課題の一つがかくてクリアーされた。


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