生体高分子を物理学の眼で見るとどのようなことが言えるのか,とても楽しい本が発行された。帯には第1章のタイトルである“生物は分子のレベルで既に生物らしい”と書かれている。
様々な状況の中で必要に応じて立体構造を変えるDNAをはじめとする生体内の巨大分子の挙動について,最新の成果とまだわかっていないことを織り交ぜながら語ってくれている。時々当然のように難しい式も出てくる一方,セントラルドグマ,RNAワールド,ダーウィン進化・淘汰,熱力学第2法則などの慣れ親しんだ生物学の用語がヒョッコリ顔を出すといううれしさがある。p.74には“ミラーの実験”のことが以下のような形で登場している。
一方,最も安定なスタッキングをするGNCコドンに対応するアミノ酸.Ala,Gly,Val,Aspは原始地球大気を模擬するミラーの実験で生成してきたアミノ酸のベスト4である。
さて,今週の分子は同書でしばしば出てくる“アプタマー(aptamer)”を取り上げた(索引では 22,31,33,34,67,68 の7ヶ所)。人工進化などにより特殊な機能を持たせた核酸であり,DNAアプタマーとRNAアプタマーがある。2004年12月にはアメリカでRNAアプタマーMacugen(商品名)が医薬として認可されるなど各国で研究・開発が進められている。
※参考文献等
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※amino表示の凡例 ASP GLU CYS MET LYS ARG SER THR PHE TYR ASN GLN GLY LEU VAL ILE ALA TRP HIS PRO = 以下の表示はアミノ酸の親水性・疎水性参照 = ※酸性・中性〈芳香族〉・塩基性アミノ酸区別表示の凡例 ASP GLU GLY ALA VAL LEU ILE CYS SER THR ASN GLN PRO MET PHE TYR TRP LYS ARG HIS ※極性〈酸性・塩基性〉・非極性(疎水性)アミノ酸区別 SER THR TYR CYS ASN GLN ASP GLU LYS ARG HIS GLY ALA VAL LEU ILE PHE PRO MET TRP ※疎水性インデックス順 ARG LYS ASN ASP GLN GLU HIS PRO TYR TRP SER THR GLY ALA MET CYS PHE LEU VAL ILE ※等電点順 ASP GLU CYS ASN PHE GLN TYR SER MET TRP VAL GLY LEU ALA ILE THR PRO HIS LYS ARG |