環境ホルモンとして疑われている化合物の分子情報 (3) → (1)(2)(4)
= 分子の立体構造の影響(オクタクロロスチレンを例に) =

 分子は3次元立体構造(立体配座)の違いでその性質が異なってくる。分子が複雑になるほど内部回転などによって取り得る立体構造の数は飛躍的に増大する。ここでは環境ホルモン関連分子のうち,内部回転が可能な部位が1ヶ所だけのオクタクロロスチレンについて分子計算を実行した結果を示す。
◎以下の数値は,Chem3Dでベンゼン環とビニル基の二面角を10°刻みに変化させた後にPM3計算して得られた構造の分子(図1のようにほぼ4種類に収斂した)について,様々な計算を行った結果である。
 εLUMO,εHOMOとそれから算出されるχ,ηはChem3Dで求め,他のデータは,分子モデリングソフトウェアAlchemy 2000およびその補助プログラムのSciQSARSciLogPによって求めた。
◎各分子モデルはChemscapeChimeのLipophilic Potential表示機能のRelative MLP Coloringモードで表現している。Absolute MLP Coloringモードに変更するには,分子モデル上で右クリックして表示されるメニューで以下のように指定する(詳細は,Chimeマニュアル参照)。
・Select / Display List / Color / Lipophilic Potential / Absolute MLP Coloring
 同じく静電ポテンシャル表示に変更するには,以下のようにする。
・Select / Display List / Color / Electrostatic Potential / Rasmol potential Color Scheme (または Color Red-White-Blue)

●オクタクロロスチレンの構造の違いによる分子計算で得られるデータの変化


分子中の任意の4原子によって決まる二面角φ
「パソコンで見る動く分子事典」(講談社ブルーバックス),p.305図4.2より



二面角の異なるオクタクロロスチレンの重ね合わせ分子モデル例

分子モデル

数字はφ/°


0

63.3

90.6

117.5
εLUMO / eV 0.820071 2.249451 2.620323 2.253721
εHOMO / eV -2.086893 -7.257861 -7.352736 -7.260730
η / eV 1.4535 4.7537 4.9865 4.7572
χ / eV 0.6334 2.5042 2.5042 2.5035
Surface / Å2 * 244.769 253.245 260.704 255.072
Volume / Å3 * 213.171 216.323 217.050 216.052
Ovality * 1.418 1.453 1.493 1.465
Log P * 6.754509 6.737690 6.734074 6.737614
Log P * 5.909891 5.909639 5.908770 5.909638
生成熱 / (kcal mol-1) * 17.79733 -1.74081 -1.99322 -1.74096

* Chem3DによるPM3計算構造のままAlchemy 2000で形状を計算.
* 補助プログラムSciQSARによる再構造最適化・計算による結果.
* 補助プログラムSciLogPによる再構造最適化・計算による結果.
* Chem3Dによる計算結果(Heat of Formation).


図1 二面角φとεLUMO,εHOMO,χ,η,および生成熱の関係.参考までに生成熱以外は2次近似曲線を付した.


図2 Chem3DによるLUMO,HOMO表示画像.



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