演 題 | PDB部分データによるWeb教材集の作成 | |
発表者 (所属) | 本間 善夫(県立新潟女子短期大学) | |
連絡先 |
〒950-8680 新潟県新潟市海老ケ瀬471 県立新潟女子短期大学 TEL: 025-270-0299 FAX: 025-270-5173 E-mail: honma@muf.biglobe.ne.jp | |
キーワード | 分子モデル,化学教育,plug-in(プラグイン),PDB,タンパク質,DNA | |
開発意図 適用分野 期待効果 特徴など |
PDBに収録されているデータの一部分を切り取ってサイズを小さくしたデータと分子表示プラグインを利用し,Web上でタンパク質やDNA・RNAについてわかりやく学べる教材集を作成して公開した。 | |
環 境 | 適応機種名 | インターネットとChemscapeChimeが利用可能なパソコン |
O S 名 | ||
ソース言語 | HTML,Chimeスクリプト,RasMolスクリプト | |
周辺機器 | ||
流通形態 (右のいずれ かに○をつけ てください) |
・化学ソフトウェア学会の無償利用 ソフトとする ・独自に配布する ・ソフトハウス,出版社等から市販 ・ソフトの頒布は行わない ○その他 ・未定 |
以下のサイトで参照可能。 http://www2d.biglobe.ne.jp/~chem_env/pdb/miniPDB.html |
1.はじめに
これまでに多様な分子情報を表示できるプラグインのChime(MDL社)1)を利用して,多様な教材コンテンツ2)やダウンロード可能なデータ集3,4)をWeb上で公開してきた。さらに,複数分子を同一データとして表示して各分子の大きさの影響や形状の同異などを容易に把握できる教材集も作成し,分子と分子の相互作用をわかりやすく呈示する試みも続けている5)。
その相互作用を知る上で,タンパク質やDNA,RNAは不可欠な素材である。通常の分子と比べてそのデータサイズは桁違いに大きいが,近年,ADSL,CATV,光ファイバ,無線LANといった高速なインターネット接続環境の整備が急速に進んで,その利用に対するストレスが低下してきている。
そこで,Protein Data Bank(PDB)6)で公開されているデータを利用し,Chime によってブラウザに表示してChimeスクリプトおよびRasMolスクリプト記述によるボタン操作により,タンパク質,DNA・RNA,ligandの分子表示形式を個別に切り替えられるコンテンツを作成して公開した7)。
2.PDB部分データを利用したWeb教材集の作成と公開
PDB6)には,多くの研究者によってタンパク質やDNAの立体構造データの蓄積が続けられ,共有知的財産として様々な活用がなされている。その独特のデータ形式により,Chime1)などのソフトウェアで多様な分子情報の表示が可能であるほか,加工や別計算への利用もできるようになっている。PDBデータを用いて独自の計算を行った上で2次データベースとして公開されている例としては,eF-site(タンパク質分子表面の形状と性質)8)やProMode(タンパク質ドメインの運動)9)などがある。また環境ホルモン(内分泌撹乱物質)問題でも,3D-QSARによるスクリーニングにおいてPDBデータが活用されている10)。
本研究では,タンパク質・DNA・RNAの構造やligandとの関係をわかりやすく学べるように,PDBデータの中から複数のChainを含むものを選び,その中の1つのChain(DNAでは必要な塩基部分)を切り取ってデータサイズを小さくし,ChimeおよびRasMolスクリプト記述によりWebブラウザ中で初心者でもボタンを押すだけで容易に分子情報を表示変更できる教材集を作成した。さらに,PDBデータの必要な部分の切り出す方法やその呈示方法がわかるHTMLソースも掲載し,同様のコンテンツを容易に作成できるよう便宜を図った。創薬や化学物質の毒性等の研究,ナノテクノロジーなど,今後一層進展が期待される分野における成果をインタラクティブに解説する日本語Web教材が多数発信されることにより,それらの分野に関心を持ってくれる小学生・中学生・高校生が増えていくことを期待している。
●本稿は日本コンピュータ化学会2002秋季年会における講演301(2002/11/03発表)の要旨
図1 PDB部分データによるコンテンツ例(ビタミン関連分子を含むタンパク質から1BU5のchain A).ボタンによる表示変更により,タンパク質のα-ヘリックス構造・β-シート構造をわかりやすくし,ligandは親油性ポテンシャル表示した場合.
図2 benzo[a]pyrene代謝物のDNAへのインターカレーションのデータ(PDBの1DXA)から作成したコンテンツの表示例.
参考文献・Webページ
1) http://www.mdlchime.com/chime/.
2) 分子の教材データベース,http://www2d.biglobe.ne.jp/~chem_env/chem2/mol_db00.html.
3) 本間善夫,化学ソフトウェア学会年会2001研究討論会講演要旨集,pp.68-69.
4) 本間善夫・吉田 弘・松浦博厚,化学ソフトウェア学会年会2001研究討論会講演要旨集,pp.90-91.
5) 本間善夫,日本化学会第81春季年会講演要旨集I,p.650(2002).
6) http://www.rcsb.org/pdb/.
7) http://www2d.biglobe.ne.jp/~chem_env/pdb/miniPDB.html.
8) http://ef-site.protein.osaka-u.ac.jp/eF-site/.
9) http://pdbjs1.protein.osaka-u.ac.jp/ProMode/.
10) 例えば,経済産業省,内分泌かく乱作用に関する試験法開発状況について(平成13年度第2回内分泌かく乱作用検討小委員会配布資料,2001/10/06),http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g11126qj.pdf.