生体関連分子学習のためのWeb教材の作成
本間善夫(県立新潟女子短期大学)
Abstract: New Web content has been constructed. Users are able to refer to this content for biomolecules and nanomolecules (such as fullerene) by 3D model interactively. The molecule display was constructed using the freeware Chime, which is used widely in and out of Japan. The script description using Chime within the HTML source easily display a variety of molecule information on the Internet.
1. はじめに
科学の発達でナノメートルの世界を覗くことが可能になり,その世界をコントロールする技術から生まれたナノテクノロジーは,フラーレンやナノチューブ,天然のDNA・タンパク質など幅広い分子を扱い,それぞれにユニークな形状を様々な可視化ソフトウェアでビジュアルに表現・参照できるようになってきた。最新成果を一般雑誌やインターネットで広くアピールすることは,次代を担う子ども達に関心を持ってもらう上でも不可欠であると考えられるが,国内ではまだまだその試みは少ない。ここでは,国内外の多くのサイトで用いられている分子表示用フリーウェアChime[1]を用いて作成した教育用コンテンツについて紹介する。
2. 公開Webコンテンツの概要
MDL社の無料ツールChime[1]は,3次元表示した分子をマウスで動かしたり多様な分子情報を表示することができることから,生体高分子関連データベースのProtein Data Bank(PDB)[2]や化学・生物関連の専門・教育サイトのプレゼンテーションなどで用いられている多用されている[3]。
本研究室では1996年以来,Chimeを利用した様々な日本語版教育用コンテンツを公開しており,近年は公開PDBデータを利用した生体関連分子も取り上げている。Chimeは分子の表示形式だけでなく,原子間距離等の構造データや静電・親油ポテンシャル表示なども可能であることから,HTMLソースの書き方で目的に合わせた分子呈示ができる上に,Chime用スクリプト言語による記述によって利用者がボタンを押すだけで容易に表示形式を変えるようにすることもでき,独自に高度な画像を作成することも可能である。
ナノ関連コンテンツとしては,フラーレン類[4]やそれを含む包接化合物(図1に例),生体関連分子[5]では,特徴的な共通構造を持つシトクロムP450のデータ集,リガンドを含みその近接アミノ酸残基番号をSITE情報として記載しているPDBデータの該当部分だけを抜き出した教材集[6]などがある。
タンパク質についてはスクリプト記述により,酸性・中性・塩基性アミノ酸区別,あるいはアミノ酸の疎水性インデックスの大きさ順などに着色表示できるようにしたため,分子-分子間の相互作用を視覚的に知ることも可能となっている。
また,毎年のノーベル化学賞(2002年の例)・生理学医学賞の発表時や毎日のように発信されるバイオ関連ニュース[7]など,社会の関心が高まった時に関連コンテンツを公開することも有用であろう。
さらに,以上のようなインタラクティブな教材だけでなく,それらの画像を利用して作成した動画データに音声解説を加えたビデオコンテンツを作成していくことも重要と考える。
【補足資料】
ナノ学会第3回大会に参加して(会場の様子と筆者発表ポスターなど)
※PDF化した発表ポスターの一部(12頁,約1.7MB)
カリックスアレーンとチアカリックスアレーン
※ナノチューブと五角形(ナノ関連リンク集掲載)