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パテック フィリップが、新コレクション「Cubitus(キュビタス)」を発表した。

同社が新しいコレクションを世に問うのは1999年の「Twenty~4」以来、実に四半世紀ぶり。その「Cubitus」というコレクションネームからわかるように、シェイプは意表をつくスクエアだった。
そのデザインを巡っては賛否の声がいろいろ交錯するだろうが、思い起こせば「ノーチラス」のデヴュー時も、そして「アクアノート」の誕生時も、それ以前のパテック フィリップを愛してきた世代からは否定的な声があった。しかしその2つのコレクションが今どのような存在となっているかをみれば、推して知るべしというか、そこにあるパテック フィリップの先見性には、ただただ恐懼するばかりである。

思うに、長い歴史を持つパテック フィリップをわたしたちは伝統を重んじるブランドとして、そこに古典的な郷愁をイメージしがちだ。だが実際のところ、パテック フィリップは常にコンテンポラリー、つまり同時代に向けて時計を製作し続けているのだと思う。わたしのようなおじさん世代には"行き過ぎ"と感じられるのは、それが次世代のスタンダードを突いているからだとも言える。生まれた時から、スマートウォッチを使いこなしてきた世代にとって、時計のイメージといえば、ラウンドよりもスクエア、という認識が当たり前の時代に至る頃に、「Cubitus」がエグゼクティヴなアイテムとしてどのようなステイタスを持ち、どのようなスタイリッシュな存在となっているか…おじさんには想像もつかないけれど、もしかしたらこれは、世界最高の機械式時計ブランドから贈られたスマートウォッチへの回答なのかもしれない…。
…なぁんて妄想はさておき、おじさん世代はやは、時計と言えば習慣的に真っ先に歯車とかゼンマイ関係が気になってしまうため、まずは新コレクション中の最も複雑機能を持つモデル、5822P-001をみてみる。

瞬時送り式大型日付、曜日、ムーンフェイズ表示5822P-001モデル
まったく新しいコレクションに登場した新しいコンプリケーション

新しいCubitusコレクションの目玉として、パテック フィリップは瞬時送り式大型日付表示、曜日表示、ムーンフェイズ表示の組み合わせを特徴とする新しいモデルを発表した。
1977年に発表された機械式時計における偉大なクラシックである名作キャリバー240[※1] の進化形として、6 件もの技術特許が出願されている新ムーブメントを搭載する5822P-001。

同社初となる大型日付を備えたムーブだが、普通に考えればデイト モジュールを載せるとなると、ムーブは厚くならざるを得ない。しかしパテック フィリップは「時を超越したエレガントなケースの創作に欠くことのできないムーブメントのスリムさ」を目指し、それを見事に達成している。この新しいムーブメントの厚さはキャリバー240 PS IRM C LUの3.99 mm厚に対して4.76 mm厚、104個もの部品が追加されたにもかかわらずわずか0.77 mmしか増えていない。

ロレックススーパーコピー代引き同時代性における最優先案件であるスリム化という目的のために、パテック フィリップ技術陣は、基本キャリバーを改変し、2つの表示窓による大型日付表示のための瞬時送り式カレンダー機構という複雑な機構が追加されたにもかかわらず、例外的な薄さを維持したのだ。

[※1]キャリバー240は、そのスリムさ、信頼性、パフォーマンスによりアイコニックなムーブメントとなっている。追加機能を備えたいくつかのバージョンが創作され、現行コレクションの多くのモデルに搭載され、その価値と汎用性を証明してきた。例えばキャリバー240 PS IRM C LU (部品総数249個)は、10時30分位置にパワーリザーブ表示、7時位置に日付指針表示とムーンフェイズ表示、4時位置にスモールセコンドを備え、2006年以来ノーチラス5712モデルに搭載されている。新しいCubitus 5822P-001モデルにおいては、12時位置の大型日付表示と4時30分位置のスモールセコンドに加え、7時位置のサブダイヤルに指針による曜日とムーンフェイズが同軸表示される。こうして伝統と革新が完璧に融合した新しい自動巻ムーブメント、キャリバー240 PS CI J LU (部品総数353個)が誕生した。

さて、ここから先、5822P-001モデルのさらなる特筆点については、プレスリリースの引用で進めていくことをお許しいただきたい。

18 ミリ秒で同時にジャンプするカレンダー表示
スリムさという要件に加え、完璧な読みやすさは大型日付表示のための不可欠な条件である。異なる表示間の時間差を防止するため、パテック フィリップは、大型日付表示のみでなく、曜日とムーンフェイズ表示も含んだ瞬時送り機構を開発することにした。

これらすべての表示の変更は、24時間車によって駆動される大型レバーによって制御される。この24時間車は大型レバーを連続的に引き上げるカムを備えている。真夜中になると、強力なバネのおかげで、大型レバーの爪がカムの頂点から落下する。大型レバーは、これらの表示の変更を行うために、さまざまな部品を介して日付星車、曜日星車、ムーンフェイズ星車をそれぞれ1歯分回転させる。これらの表示はすべて、1日を通して蓄積されたエネルギーのおかげで、毎晩真夜中に瞬時に、同時に18ミリ秒でジャンプする。

大型日付表示のコプレナー・ディスク
大型日付表示の最も平らで最もエレガントな表示システムを実現するために、パテック フィリップ技術陣は、ディスクの非審美的な重なり合いを防ぐコプレナー・ディスク(完全に同一平面上に配置されたディスク)を備えたキャリバーを設計した。毎晩真夜中に、大型レバーのもたらすエネルギーは、10の位のディスク(0、1、2、3の数字が2組)と1の位のディスク(0から9までの数字)を駆動する2つの輪列の間で分配される。キャリバー31-260 PS QL (2021年のインライン表示永久カレンダー5236モデルにて導入)に関する技術特許から踏襲されたこの機構は、一部の歯が取り除かれた歯車により1を静止させたまま、31から01へのジャンプを制御することができる。また2021年に特許を取得した1の位の《ダブル・ジャンプ防止》システムは、衝撃または日付修正の際に日付のダブル・ジャンプを回避する。

複雑なエネルギー管理
2枚のコプレナー・ディスクによる大型日付表示は大きなエネルギーを必要とするため、日付表示のこれらの2枚の大型ディスクだけでなく、ムーンフェイズと曜日表示を駆動し、瞬時にジャンプさせるために十分なエネルギーを蓄積する必要があった。また時の経過と共に起る大型日付表示のジャンプの3つの異なるタイプに応じて、機構が適切にこのエネルギーを分配するようにしなければならなかった。
第1のタイプは、1の位のみが送られる場合(例えば11から12に変わる場合)である。この場合、1の位のディスクのみが回転する。第2のタイプは、同じ月において10の位も送られる場合(例えば09から10に変わる場合)である。この場合、2枚のディスク(10の位と1の位)が回転する。第3のタイプは、月に1回、31から01に変わる場合である。この場合、10の位のディスクのみが回転し、1の位のディスクは動かない。

特許出願中の6 件の技術革新
これらすべての課題に応えるるため、パテック フィリップの技術陣は新しい技術的解決法を開発し、その結果、特定分野の合計6件の技術特許出願が行われた。これらの技術革新により、とりわけ大型日付表示数字の完璧なアラインメントを常時保証し、31から01への日付変更中または衝撃の際に10の位のダブル・ジャンプを回避し、さらにムーブメントが損傷したり、調整が狂ったりする危険なしにすべての表示(時刻と曜日を含む)を1日のどの時刻でも修正することができる。これらすべての進歩はパテック フィリップの完全にユーザー指向の設計思想に準拠したものであり、さまざまな機能の信頼性、読みやすさ、操作の容易さを最大化することを可能にした。

ムーブメントは、ケース側面に設けられた3つの調整ボタンにより日付、曜日、ムーンフェイズを調整できる。本モデルはシンプル・カレンダーであるため、ユーザーは3月、5月、7月、10月、12月のそれぞれ1日に日付を調整する必要がある。ムーンフェイズ表示は、真の月の満ち欠けサイクルから1日ずれるのに122年かかるほどの高精度を誇る。新しいキャリバー240 PS CI J LUの計時精度は2024年春、マニュファクチュールが公式発表したすべての強化された規準に準拠しており、パテック フィリップ・シールの規定が定める通り、日差は-1〜 2秒である。

個性と読みやすさを兼ね備えた文字盤

新しいCubitus瞬時送り式大型日付、曜日、ムーンフェイズ表示5822P-001モデルは、ソレイユ装飾と水平エンボス・パターンの施されたブルー文字盤を備えている。大型日付表示は、ベベルカットされたエンボス・フレームを備え、12時位置に並んだ2つの表示窓上に行われる。ブルーをバックに、7時位置に曜日とムーンフェイズが同軸表示され、非対称な4時30分位置にスモールセコンドが表示される。ホワイトゴールド・バトン型植字アワーマーカーとホワイトゴールドの丸みを帯びたバトン型時・分針には昼間はホワイト、夜間はグリーンに輝く夜光コーティングが施され、読みやすさが強化されている。

高貴なプラチナ仕様

新しいCubitusのプラチナ仕様ケースは、両側に2つの結合部を備えた2体構造となっており、45 mmの直径とエレガントな薄いプロフィール(9.6 mm)が特徴である。角が丸みを帯びた正方形の個性的なデザインは、《縦サテン仕上げ》によるベゼルの平らな表面とケースの上面、およびポリッシュ仕上げによるベベルカットされたベゼルの側面とケース本体の側面が生み出すコントラストによって強調されている。

パテック フィリップのすべてのプラチナ・モデルと同じく、新しい5822P-001モデルはベゼルの6時位置にダイヤモンド(今回初めてバゲットカット・ダイヤモンドを採用)がセッティングされている。

透明なサファイヤクリスタル・バックを通して、新コレクションのシグナチャーといえる、文字盤と同じ特徴的な水平のパターンが施された22金偏心マイクロローター搭載の新しいキャリバー240 PS CI J LUを鑑賞することができる。

タイムピースのモダンで技術的かつ《カジュアル・シック》なスタイルは、ネイビーブルー、エンボス加工ファブリック柄の優れた耐性を誇るコンポジット・バンド、およびこれとコントラストをなすクリーム色のステッチによって引き立てられている。プラチナ仕様の折り畳み式バックルには、Cubitusコレクションの名が刻まれている。

パテック フィリップは、この時計にマッチする新しいCubitusカフリンクスもコレクションにラインナップしている。ホワイトゴールドのフレームはケースのフォルムに呼応し、ブルー・ソレイユ・センターには水平エンボス・パターンが施されている(205.9821G-001)。

キャリバー240 PS CI J LUに関する6 件の新しい技術特許
キャリバー240 PS CI J LUの開発により、特定分野の合計6件の技術特許出願が行われた。

• タンジェント・ロック(欧州特許出願 EP4328674)
毎月末、日付が31から01に変わる際、1の位は不動のままでなければならない。そのため、この際エネルギーは2つの輪列(10の位と1の位)の間で分配されるのではなく、10の位のみに伝達される。10の位の輪列に統合されたこのタンジェント・ロック機構は、3から0への移行中に人為的な過剰消費を引き起こす。こうして10の位のディスクに向けられた余分なエネルギーを吸収することで、後者のダブル・ジャンプを回避することが可能となる。

• ダブルレバー修正システム(特許出願 CH719977)
この安全機構は、10の位の輪列が瞬時送り機構からのエネルギーを得ることができない09から10、19から20、29から30、31から01への移行中、10時位置のコレクターによって日付を手動で修正することを目的とする。第2のレバー(10の位のディスクの動きを完了させる柔軟なフィンガー)の存在により、いつでも、コレクターに加えられる力の量にかかわらず、確実に10の位のディスクをジャンプさせることができる。

• フレキシブルな曜日コレクター(欧州特許出願 EP4246247)
このシステムは、1日の任意の時刻、とりわけ午後9時30分と午前12時の間、曜日星車を回転させる大型レバーの爪によりコレクターの復帰がブロックされている時でも、曜日の修正を可能とした。この解決法は、回転爪を配置するには薄すぎるスペースに、格納式のコレクターを配置することを可能にする。

• ダブル・ファンクション・スプリングを備えたカム・セッティング・ホイール(欧州特許出願 EP4312083)
24時間車でカムを駆動するように設計され、ダブル・ファンクション・スプリングを備えたこのカム・セッティング・ホイール・システムは、完璧な精度で真夜中に日付をジャンプさせると共に、より大きな摩擦(トルク)に抗することができる。また24時間カムが大型レバーの爪に当る際、クラッチ・リリースシステムに設けられた柔軟なフィンガーが格納されるため、ユーザーはムーブメントを損傷するリスクなしに、真夜中を超えて前方または後方にいつでも時刻合わせを行うことができる。

• ディスク表示の配置機構および柔軟なロッキング・プレート(特許出願 CH720028およびEP4336273)
大型日付表示においては、10の位と1の位の数字がわずかに視覚的にずれても表示は見苦しくなる。エキセントリックと柔軟なプレートで構成されるこの新しい機構は、最終的な文字盤が取り付けられた後、2枚のディスクの位置を個別に調整することを可能にする。したがって2つの数字は完璧に表示窓の中央に配置され、最適な読みやすさを実現する。このシステムにより、張力を維持し、これらの位置を恒久的に固定することが可能になり、着用中の衝撃に耐え、完璧な表示位置を維持することができる。


キャリバー31-260 PS QLから踏襲された技術特許
新しいキャリバー240 PS CI J LUは、2021年に発表されたインライン表示永久カレンダー5236P-001モデルに搭載されたキャリバー31-260 PS QLのために開発された2件の技術特許を踏襲している。

• 時計ムーブメントの衝撃防止および/またはダブル・ジャンプ防止機構(欧州特許出願 EP3786724)
この機構は、衝撃や日付変更の際に日付が2度送られるのを防止することにより、日付表示の信頼性を強化し、2枚のディスク間の完璧な同期を実現する。

• 日付表示:31から01への移行(欧州特許EP3786723B1)
この機構は、31日から翌月の1日への移行時に、31歯から2歯が切除された日付プログラム車などにより、1の位の数字が変化しない。