◆ 今週の分子 ◆
連載94(2005/07/06〜):
バクテリオロドプシン中のレチナールの例(PDBデータ1R2Nより)


参考:モノはなぜ見える/レチナール,ビタミンA,カロチン



バクテリオロドプシン中のall-trnas-レチナールの構造変化例(酸素原子は省略)
※PDBデータ1R2Nから抜粋作成したアニメーション(表示時間の長いカットは,環のねじれに変化が見られる構造)

 連載89で取り上げた書籍,

の9章『生体中でのタンパク質の機能をさぐる』の中では,ミオグロビンやヘモグロビン(ヘモグロビンの部分構造例参照)を用いた研究を中心に,生体高分子のダイナミックな動きについて語られています。それを受けてp.144には以下のような文章があります(漢数字一部変更)。
このような大地震と余震の両方を観測できた例はほとんどないが,この結果に基づいて一般の色素タンパク質の動きを類推することができる。色素タンパク質は可視光を照射すると光を吸収する。その分子が発光によりエネルギーを放出しない限り,入射した光エネルギーは熱エネルギーに変換され,タンパク質を通って水に移されるが,そのエネルギー移動の時間スケールは1ピコ秒程度である。そのエネルギーの一部が発色団の構造変化に使われ,それがタンパク質の構造変化という余震を引き起こす。その時間はタンパク質の冷却時間より100倍以上遅いが,そのことがタンパク質の機能の発現に関係しているとが多い。したがって,余震の起こり方はタンパク質ごとにかなり異なる。視覚,植物の光合成,光屈性などに対しても光応答が時問を変数として詳しく調べられている。一般的に,初期反応を非常に速くすることによって逆反応を少なくし,反応の前進効率を高めることができるといえる。反応がもとに戻る可能性が低いレベルまで震源地の反応を進めてから,タンパク質の構造変化による余震を起こし,生理作用を生みだすような精緻なしくみをつくっているのでないかと考えられる。この問題についても未解決な部分が多く存在する。今後の若い研究者の挑戦に期待したい。


伸縮振動の例

変角振動の例

ねじれ振動
※参考:4原子分子における分子内振動の種類(同章,p.140)→ 計算化学の概要分子振動データ集
 この中の視覚に関係するタンパク質についてはすでに連載85でロドプシンを取り上げましたけれど,そこでは 11-cis-レチナール に光が当たって all-trnas-レチナール に構造変化することが重要です(モノはなぜ見える参照)。
 今回取り上げたバクテリオロドプシンの場合は上記と異なって,all-trnas-レチナール が 13-cis-15-syn-レチナール に変化するのですが,その all-trnas-レチナール を含むNMRデータ(12 Structures)から,レチナール部分だけ取り出してアニメーションにしてみました。光が当たらない状態でもこのような構造変化が許容され,さらに光などの刺激を受けることで引き起こされる上記のような大地震や余震の詳細がわかってきたことは,生命活動を維持するために休みなく働いている(このコンテンツを見ている最中にも,多種多数の視物質や神経関連分子が絶え間なく活動している!)生体分子のすばらしさを理解する上でも大事なことだと言えるでしょう。


バクテリオロドプシン中のall-trnas-レチナール
1R2N(NMR, 12 Structures)から作成
    レチナール(Model〜12)のアニメーション アニメーション  OFF
    1R2NのModel 1 #
    【参考】同じ研究者による,13-cis-15-syn retinal を含む1R84から作成
    レチナール(Model〜12)のアニメーション アニメーション  OFF
    1r84のModel 1 #
#印のタンパク質全体のデータは以下の表示変更可
バックボーン 二次構造
リガンド表示 OFF 水分子表示  OFF
全選択 タンパク質選択 リガンド選択
空間充填 球棒 スティック OFF
CPK色 アミノ色 | ラベル表示 OFF
ドット表面表示 OFF
静電ポテンシャル OFF
親油ポテンシャル OFF
光沢表示 OFF 光量30% OFF
背景・黒 背景・灰 背景・白
回転 OFF 画像をクリップボードへコピー
水素結合(細) 同(太) OFF
S原子空間充填
タンパク質・バックボーン 同・二次構造
酸性・中性・塩基性アミノ酸区別
極性・非極性区別
hydropathy index順
等電点順

※amino表示の凡例
ASP GLU CYS MET LYS ARG SER THR PHE TYR
ASN GLN GLY LEU VAL ILE ALA TRP HIS PRO

= 以下の表示はアミノ酸の親水性・疎水性参照 =
酸性中性芳香族〉・塩基性アミノ酸区別表示の凡例
ASP GLU GLY ALA VAL LEU ILE CYS SER THR
ASN GLN PRO MET
 PHE TYR TRP LYS ARG HIS

極性酸性塩基性〉・非極性(疎水性)アミノ酸区別
SER THR TYR CYS ASN GLN ASP GLU LYS ARG
HIS
 GLY ALA VAL LEU ILE PHE PRO MET TRP

※hydropathy index順
ARG LYS ASN ASP GLN GLU HIS PRO TYR TRP
SER THR GLY
 ALA MET CYS PHE LEU VAL ILE

※等電点順
ASP GLU CYS ASN PHE GLN TYR SER MET TRP
VAL GLY LEU
 ALA ILE THR PRO HIS LYS ARG

※学生が7/11より夏季休業になるため,次回更新は9/7の予定


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