◆ モノはなぜ見える/レチナール,ビタミンA,カロチン ◆
Jmol版(ロドプシン類も参照可)
= 1998/04/29記載のトピック(化学トピック集 (2)から移転)



バクテリオロドプシン中のall-trnas-レチナールの構造変化例
(酸素原子は省略)
※PDBデータ1r2nから抜粋作成したアニメーション(表示時間の長いカットは,環のねじれに変化が見られる構造)


 1998/04/17 朝日新聞科学欄。『モノはなぜ見える…分子で探究』という話題で,中西香爾先生(天然物化学)が取り組んでこられた,視覚の仕組みに関する研究の紹介。モノが見えるのは,網膜上の視物質の中にある分子(視物質ロドプシンの場合はレチナール)が光を吸収して構造変化し,その構造変化が周囲のたんぱく質をひずませて,信号が脳に伝わるためである。ロドプシン中にあるレチナールの,光が当たる前の恰好を突き止め,さらに当たった後の中間体の構造を,液体窒素中で反応を遅くすることで解明してきたとのこと。
 上の分子モデルはその厳密な構造ではありませんが,光が当たる前の 11-cis -レチナールと当たった後の all-trnas -レチナールの構造を示したものです。レチナールはA1アルデヒドとも言われ,ビタミンA(ビタミンA1,A1アルコール)が脱水素されたものです。ビタミンAは脂溶性ビタミンで,体内でβ-カロチンなどから作られます。


11-cis-レチナール
球棒モデル  空間充填  OFF
Electrostatic Potential
Lipophilic Potential

all-trnas-レチナール
球棒モデル  空間充填  OFF
Electrostatic Potential
Lipophilic Potential

11-cis-ビタミンA
球棒モデル  空間充填  OFF
Electrostatic Potential
Lipophilic Potential

all-trans-ビタミンA
球棒モデル  空間充填  OFF
Electrostatic Potential
Lipophilic Potential

β-カロチン
球棒モデル  空間充填  OFF
Electrostatic Potential
Lipophilic Potential


[参考] 脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンの例 (名前クリックで分子モデル表示)
ビタミン ビタミンA
(レチノール,C20H30O)
ビタミンC
(アスコルビン酸,C6H8O6
脂溶性・水溶性 脂溶性(水に不溶) 水溶性(0.3 g/ml)
主な働き 上皮細胞保護,成長促進,視覚の正常化 コラーゲンの生成,抗酸化作用
欠乏症 夜盲症,成長阻害 細菌感染力低下,壊血病
多く含む食品 くだもの,緑黄色野菜,レバー,うなぎ 野菜,くだもの(いちごなど),さつまいも


※ 脂溶性・水溶性の違いを上の分子構造から考えてみよう!

[参考] 吸収光の色と観察される色の関係 (1nm = 10-9m)
吸収光 観察される色
(補色または余色)
波長 / nm 吸収光の色
400〜435 緑黄
435〜480
480〜490 緑青
490〜500 青緑
500〜560 赤紫
560〜580 黄緑
580〜595
595〜610 緑青
610〜750 青緑
750〜800 紫赤
※「新染色加工講座3 染色系の基礎化学」,p.112,共立出版(1972)


光の波長と色


光(電磁波)の波長とエネルギー


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