◆ 七員環を有する有機EL用赤色蛍光色素/非平面ジシアノジアゼピン系色素 ◆
Jmol版


 壁掛けテレビやノート型PCのディスプレイなどの新しい発光源として,蛍光性化合物に電場をかけることで発光させる有機EL(エレクトロルミネッセンス;electroluminescence)素子が注目されています。
 フルカラー表示には光の3原色(赤・緑・赤;RGB)の発光体が必要で,緑や青の発光体に比して提案が少ない赤色発光体について,七員環を有する非平面ジシアノジアゼピン系新規化合物の開発研究が以下で詳しく解説されています。

◎松岡賢,『七員環が発する新しい光:有機EL用赤色蛍光色素の開発』,化学,2001年12月号,p.40

 同解説では七員環をもついくつかの化合物について述べられていますが,以下はそのうちの一例です(p.42,図4の化合物5;図5に単結晶中の分子構造とスタッキング構造)。蛍光色素は通常剛直な平面構造をもつ化合物ですが,七員環をもつこれらの化合物は非平面構造であるところがユニークで,その開発に当たっては半経験的分子軌道計算プログラムが活用されたとのことです。

※以下の分子モデルは上記文献図5を参考に作成した構造例で,構造解析で求めたものではありません。

空間充填  球棒モデル  OFF
Electrostatic Potential  Lipophilic Potential  OFF
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非平面ジシアノジアゼピン系赤色蛍光色素の一例
極大蛍光波長Fmax:653nm


《追加トピック》
 2002/02/20付け朝日新聞に掲載された有機EL関連の記事,

で紹介されているビオラントロン(violanthrone;5,10-violanthrenedione;C.I. Vat Blue 20;C.I. 59800)については,Web上の別記事も参照。文中にあるようにビオラントロンは,1950年に井口洋夫博士らが有機化合物が電気を通すことを実証した研究で用いられたものであり,このことが白川英樹博士のノーベル化学賞にもつながっています。同分子は以下のように平面状です。


空間充填  球棒モデル  OFF
Electrostatic Potential  Lipophilic Potential  OFF
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ビオラントロン(violanthrone)



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