染料などの有色分子は,可視領域に属する光(波長λがおよそ400nm〜800nm)を吸収する性質を持っており,われわれの目にはその補色(余色)に当たる色が感じられるのである.
その要件を満たす分子構造上の例の一つが,長い共役二重結合系(単結合と二重結合が交互に連なっている構造)を有することで,さらに分子全体が平面構造を持つと,比較的エネルギーの低い可視光を吸収しやすくなる.
以下にそのわかりすい例を示そう.
n | 分子構造・化合物名 | 吸収波長 λmax/nm |
---|---|---|
2 | 1,3-butadiene | 217 |
3 | 1,3,5-hexatriene | 268 |
4 | 1,3,5,7-octatetraene | 304 |
5 | 1,3,5,7,9-decapentaene | 334 |
6 | 364 | |
7 | 1,3,5,7,9,11,13-tetradecaheptaene | 390 |
8 | 410 | |
10 | 422 |
ポリアセン(polyacene)の場合
n | 分子構造・化合物名 | 吸収波長 λmax/nm | 色 |
---|---|---|---|
1 | 203 | 無色 | |
2 | 314 | 白 | |
3 | 370 | 淡黄 | |
4 | 460 | 黄 | |
5 | 580 | 青 | |
6 | 600 | 緑 |
分子の吸収波長は,分子軌道計算によって計算することも可能になってきており,以下の文献等でも詳しく論じられている.