新潟県生涯学習協会機関誌「生涯学習」掲載原稿です。
新潟で開いた100回のサイエンスカフェ ─カガクをツタエル
サイエンスカフェにいがた代表 本間善夫

 3.11後の科学者・専門家による情報発信に対する不信や,STAP細胞の騒動で,科学や科学者に対する見方が厳しくなってきています。
 しかしながら,新薬,遺伝子診断,ICT(IT),脳科学など,最新の科学の成果がどんどん生活の中に入り込んできていることも事実で,私たち自身がその利用について判断を迫られる場合も少なくありません。人間が長い時間をかけて育ててきた『科学』という手法・存在を,どのようなものにしていくのかをみんなで考えていくことが必要になってきていると言えるでしょう。文系・理系という分け方も,脳にはそんな境界線など無いわけですから,無意味になっていくことが望まれます。
 研究にかかる経費は公的な資金が投入される場合も多いことから,研究者の側もその研究の意味などをわかりやすく社会に伝えることを義務付けられるようにもなってきています。
 そんな科学と社会の関係を見直す場として,全国でサイエンスカフェという企画が展開されています。サイエンスカフェは,1997年から翌年にかけてイギリスとフランスで始まり,日本では2004年に京都で開かれたのが最初とされています。喫茶店やバーなどでゲストと少人数の参加者が1つのテーマについて飲み物を飲みながら語り合う催しです。大学や科学館などが運営する場合もあれば,個人や有志で開催する草の根型などいろいろな方式があります。街中で開くことで,大学や研究機関の“見える化”の役割を果たしていることにもなります。
 新潟ではほとんど開催されていなかったところ,2007年3月に新潟駅近くにジュンク堂書店新潟店が開店し,サイエンスカフェに適した喫茶コーナーがあることを知って同店に開催の打診をすると同時に,以前からネット等で繋がりがあった新潟県内の方々に協力をお願いして,2007年8月26日に,新潟大学の井山弘幸さんをゲストに迎えて第1回サイエンスカフェにいがた『ニセ科学の見分け方』を開催することができました。それ以来,参加者の要望もあってほぼ月に1回というハイペースで,多彩ななテーマを取り上げて展開し,北海道・京都など県外から参加者が訪れてくれることもあります。さらに2012年から新潟県立自然科学館でゴールデンウィークに開催されるようになった企画にも4日間出展するなど番外編も貴重と自負しています。
 また2010年には新潟市東地区公民館の事業としてサイエンスカフェ開催について相談を受け,ゲストとの交渉や当日のカフェ進行などでサイエンスカフェにいがたが協力することになり,中央図書館ほんぽーとを会場に「公民館サイエンスカフェ」を4年間計19回開催してきました。
 それらを総計すると,2014年4月19日の第76回サイエンスカフェにいがたが累計では100回記念となり,メインゲストのトークの他に『新潟の科学コミュニケーション活動紹介』のコーナーを設けるなど拡大版として開催することになりました(本誌が出る時には終了)。私事ながら,筆者はホームページ運営やサイエンスカフェ運営などの業績で日本化学連合から「化学コミュニケーション賞2013」を受賞したのですが,メインゲストの佐藤健太郎さん(サイエンスライター)が2011年第1回の同賞を受賞されていることから“カガクをツタエル”ということも重要テーマとしました。
 100回記念カフェは定員を多くしたかったために特別にほんぽーとで開きましたが,5月10日開催予定の第77回からはまたジュンク堂書店新潟店での開催となります。過去のカフェの記録や今後の予定はインターネットで公開していますので,ご参照の上是非お出かけください。
 なお,例えば函館市で毎年8月に1週間以上の日程で市をあげて開催される「はこだて国際科学祭」では,市民スタッフの協力も不可欠となっており,「公民館サイエンスカフェ」でも運営協力者を募集しています。上記ページから辿ってご覧いただければ幸いです。
 海外ではこれからの社会を担うこども達のためにSTEM教育(英語の科学・技術・工学・数学を繋げた語)が進められるようになってきており,日本でも新聞で紹介されるなど,ネット検索でいろいろな情報を参照できます。そのような時代,『科学』をみんなで共有するためにも,サイエンスカフェという場を多くの方に利用していただきたいと願ってやみません。


第75回サイエンスカフェにいがた『新潟の海に住む生きた化石ヌタウナギ』(ゲストお手製のぬいぐるみでクイズも);2014/03/15開催


2013年の新潟県立自然科学館ゴールデンウィーク企画出展(協力:日本コンピュータ化学会


筆者サイト「生活環境化学の部屋」サイエンスカフェにいがた