素晴らしきDiscreet music達 POP / ALTERNATIVE |
Radical face/ Ghost |
同レーベルのMorr Musicから、Electric presidentというユニットで既にアルバムをリリースしているBen cooper氏が、ソロプロジェクトとして始めたのがこのRadical
Face。Electric presidentというユニットは、いかにもmorrと言うレーベルらしい、ほんわかしたユルユルポップミュージックでしたが、このRadical
Faceでは一変、非常に感傷的で切ないポップアルバムに仕上がっています。
古ぼけたジャケットワークが示す通り、バンジョーなピアニカといった牧歌的香りの漂う楽器が彩り、同時にストリングス等の叙情的なサウンドが混じり合い、とてもはかなく、切ないメロディ。しかし何か癒されるし、励まされる。物悲しい曲って、えてして何故かそういう側面があるんですよね、不思議と。
Electric presidentの時点で彼のソングライティングが見事だと言うことは証明済みだった訳ですが、このアルバムによっていかに彼がアレンジや編曲もこなせてしまう天才であるかという事が分かってしまいました。なんと恐るべし25歳。しかもソロ作品なのにわざわざユニット名を名乗ったという事は、このアルバムも彼の中の要素のほんの一部分に過ぎないのかもしれません。
それにしても何という見事なメロディの応酬でしょうか。3トラック目の「Let the River In」、続く「Glory」なんて、どれも最終トラックに持って来てもいいくらいの、壮大でクライマックスにふさわしいサウンドです。いや、正直どの曲もそんな感じであり、アルバムの最初から最後まで、心の中で泣かされまくりです。いや、正直マジで泣きそうです(笑)。何か落ち込んだり、ナーバスになっていたりしたときに聞いたら、逆に勇気づけられるような。 正直こんな感じのポップミュージックというのは希少であり、そう滅多には出会えません。 そういう意味でも非常に貴重で素晴らしいアルバムといえます。
まああえて苦言を言うならば、惜しむらくは彼のコードワークはちょっと独特で、サビの展開がたった一回で唐突に終わってしまったり、もっと聞きたい、と思っている所でふいに終わってしまったりと、結構あっさりしてる所。もうちょっとそこのフレーズを聞きたいなあなんて思ってても早々と次のコードに移行してしまう。うーん、それだけ各メロディの出来がとても良いことの証明でもある訳ですが。
まあ、何はともあれ言わずもがな私にとって、07年度で一番のポップアルバムがどれかと聞かれたら、問答無用でこのアルバムです。
出来ることなら、これだけで終わりにはして欲しくない、切にそう願いたくなる、そんな凄い内容。ここまで徹底した感傷的なアルバムはそうは無かったと思われるので、類似系がイマイチ見いだせないだけに、余計にそう思います。
MySpaceや公式サイトでこのアルバムの楽曲が一部聴けますので、是非聞いてみて下さい。
PlayRadioPlay! / Texas |
二十歳前後の若者が大人顔負けの技術で他を圧倒するような才能を見せつけることがありますが、音楽の世界でもそういうのは結構ありますよね。ブライアン・ウィルソンは24際の若さでペットサウンズを世に出しているし、前述のBen
cooperしかり、他のトップミュージシャンでも十代で既にメジャーデビューしてるなんてのはザラ。今回紹介してるPlayRadioPlayも、その正体たるや何と若干18歳の若者。彼、Daniel
Hunterは作曲から演奏、アレンジに至るまで全て自分でこなしているマルチプレイヤー。言わば一人で全部作ってしまう宅録系。しかも恐ろしいことに、デビューEPはインディーとはいえ17歳の時にもうリリースしてしまっています。
この凄まじいスピードを支える役割を担ったひとつとして、やはりMySpaceの存在はかなり大きいと思います。彼もまた、MySpaceでその頭角を表した一人。地元で地道にライブ活動するのもいいですが、ネット上なら世界中に向けてライブ活動しているような物ですからね、どだい影響力が違います。 まあそれは当然、実際の曲のクオリティが高くなければいくら世界に配信しても見向きもされない訳ですが、そうでなければ早い、早い。
彼の楽曲はいわゆるエレクトロ・ポップ系。宅録系な訳ですから当然そんな方向になるでしょう。確かにEPなんかはその傾向が顕著でしたが、デビューアルバムであるこの「Texas」は、もうちょっと純粋なポップロックという感じでした。言わばあんまりひねくれてない感じ。
Postal serviceなんかが引き合いに出されていますが、あれに比べるとエレクトリック色は薄く、そんなに前面にでている感じではありません。ただ、メロディや唄い方に関して言うと、確かにPostal
serviceに近いと言っていいと思います。要するにデスキャブのボーカル、ベン・ギバードをかなり意識しているような節がある訳です。
そのせいかもわかりませんが、これ、ベンが唄ったらもっと良い唄になるんじゃないのか? なんて思わず思ってしまいました。Daniel君の声も悪くはないんですが、そこはやはり若さ故の初々しさがまだ残っています。
という訳でデスキャブ等の影がチラチラ見えてしまうので、これは今後の課題といった所でしょうけど、それはそれ、とにかく彼のメロディセンスに限っては文句のつけようがありません。いきなり初っぱなの「Loco
Commotion」で疾走するようなポップセンスを発揮し、その後も「I'm A Pirate,
You're A Princess」やら、「Without Gravity」やら「My Attendance Is Bad
But My Intentions Are Good」やらと、とにかくすばらしいメロディのオンパレード。前述したようにこれといってひねった感はないのでどれもサラっと流してしまいかねない感じはありますが、良く聞いてみれば、その濃縮したポップセンスは分かると思います。
それとセルフプロデュースで出していたEPと比べると、このアルバムの完成度の違いに驚きますが、これはひとえにプロデューサーであるLester
Mendezの手腕というのも大きく貢献している物と思われます。どれだけの比率で関っているかは分かりませんけど、アレンジャーによってアルバムの出来って大きく変わりますからね、実際。そういう意味では非常に良いタッグが組まれたアルバムと言えるでしょう。
ここでフル試聴が出来るようですので、是非一聴を。