素晴らしきDiscreet music達 POP / ALTERNATIVE

NEW AGE / HEALING Eddie jobson 姫神 David van tieghem
POP / ALTERNATIVE Beach boys XTC Fra lippo lippi THINKMAN Wolfsheim

The Frank and Walters GANGway Matt pond PA Radical Face PlayRadioPlay! NEW
TECHNO / ELECTRONICA Hausmeister Brainbug MARZ Colleen Cathode Ulrich Schnauss

Figurine
AMBIENT / CONTEMPORARY Andrew Poppy Brian Eno William basinski Johann Johannsson
 
Unbreakable Brian McBride Liam Singer




BeachBoys/ PetSounds
1. Wouldn't It Be Nice
2. You Still Believe In Me
3. That's Not Me
4. Don't Talk
5. I'm Waiting For The Day
6. Let's Go Away For Awhile
7. Sloop John B
8. God Only Knows
9. I Know There's An Answer
10. Here Today
11. I Just Wasn't Made For These Times
12. Pet Sounds
13. Caroline No


©Capitol rcoads inc.
1966 Release

出ました。もうこれは洋楽ファン(特にコアな人程)なら名前位は一度は聞いたことがあるであろう、ビーチボーイスの傑作中の傑作。ポップミュージックの金字塔。このアルバムに刺激を受け、一体何人のポップミュージシャンが影響を受けてきたことか。何しろビートルズのポール・マッカートニーが、このアルバムを聞いたのがキッカケで「サージェント・ペパーズ」を作ったと言うのは有名な話。ペット・サウンズの産みの親、ブライアン・ウィルソンもまた、ビートルズのアルバムを聞いて感化され、このアルバムを作ったというから世の中影響しあって動いているというか。

それにしてもこのアルバム、良く耳にするのが、「最初一聴した時の印象はパッとしないものだった」という意見。ようするにものすごく「地味」に聞こえて、意外と普通の楽曲と思えてしまうらしいのです。
なにしろ私自身もほとんどそんな感じの印象を受けてしまったので、所詮古い音楽は肌に合わないか・・・と思ったところでしたが、しばらくして改めて聞いてみると、「うん、意外といいかも?」と思えるようになり、またしばらくして聞き直すと、「あれ、実は凄くいい曲詰まってんじゃないのか?」と思い直し、また聞き直すと「なんだ、凄くいいじゃないか!」といつのまにかすっかり愛聴盤になっているという始末。

このアルバムの虜になった人達は一様にこんな体験で好きになっているみたいで、私もその例にもれず、という事になってしまった訳ですが、それにしても、なんで皆こんな感じで最初の印象は薄いのでしょうか?
それはもちろん、楽曲が皆、本当に印象が薄いから(笑)。でも印象が薄くても、いい曲はいい曲な訳で、それに気付くまでには結構な時間がかかってしまうと言うことなのでしょう。人間は往々にして人を見た目で判断してしまいがちですが、その人物を良く知る機会さえあれば、おのずとそれが単なる誤解だったと気付く事もある訳です。
派手な立ち振舞いと外見にだまされ、そういのにばかり目がいってしまっていては、こういう素晴らしい音楽を見逃してしまう事になりかねません。だいたい、ビーチボーイズというといまだにサーフバンドだと思っている人が大半だという現実がそれを如実に物語っています。(私だって最初はその内の一人だったのだ。ぐふぅ)

私が個人的にこのアルバムが大好きなのは、やっぱりITNと同じく中庸的な香りが漂っているからなのだと思います。一応ひとつのコンセプトアルバムのように一連の流れを持ったアルバムなのですが、下手な小細工などなしにとにかく聞きやすくてトゲが無い。ブライアン・ウィルソンの内面的な部分を反映させているため、POPな中にも影を引きずっているから素晴らしい、という意見もあります。たしかに間違ってませんが、どうも「影」があるから素晴らしいという物の考え方は、なんかイマイチ私の中で説得力が無くてうなずけません。ITNと同じく、もはや喜びでも無ければ、悲しみでもない、そんな領域の音楽、って感じがするんですよね。

それにしても私はやっぱりポップミュージックが好きなんだなあと思います。何故なら、ペットサウンズは晴れて私の愛聴盤となりましたが、かたやビートルズの「サージェント・ペパーズ」は何度聞いてもイマイチしっくりこないからです。それは、ビートルズがポップ職人集団であるという事以前に、やはり「ロックバンド」である、という事実が横たわっているからなんだと思います。



XTC / Apple venus vol.1
1. River Of Orchids
2. I'd Like That
3. Easter Theatre
4. Knights In Shining Karma
5. Frivolous Tonight
6. Greenman
7. Your Dictionary
8. Fruit Nut
9. I Can't Own Her
10. Harvest Festival
11. The Last Balloon


©TVT records ltd.
1999 Release

ではここでもうひとつポップアルバムを紹介しましょう。洋楽ポップマニアだったらXTCくらいは知っているでしょ?てな感じで超ど真ん中というか、メジャーな部類に入るのでしょうけど、完全にビートルズやビーチボーイズの直系的サウンドを展開している彼らは今となっては異端児的扱いも受けている感じもします。
はっきりいって彼らの作り出すサウンドって私のストライクゾーンなんですが、どうもXTCっていうと、大人になりきれないやんちゃな悪ガキ達、っていうイメージがいまだにあって、そのどうでもいいようなとぼけた歌詞もあいまって、イマイチ大好きになれないというか、メロディさえ良ければ全てよし、なんていうおおらかな態度を取れない頑固な私にはちょっとつっかかる複雑なグループでした。

しかし、1999年に発売された「アップルヴィーナスVol1」はこれまでのバンドサウンドを取りやめてギターレスサウンドに挑戦、ストリングスを効果的に使ったアコースティック路線の実に美しいポップアルバムに仕上がっていました。さすがにこれを聞くと彼らが子供をやめて大人になった、という感じがして今までの複雑な気分を帳消しにするのには充分な内容でした。
しかし、ファンの間ではこのアルバムはやっぱり「地味」以外の何物でもなかったらしく、「いいけどインパクト弱い・・」と結構否定的意見が多かったようです。しかし私にとってはこれがXTCの最高傑作であることは疑いようはなく、XTCって今までずっとこういう感じじゃなかったっけ?と錯覚するほど自然で聞きやすい名盤と思っているんですが。シングル化された「Easter theatre」の美しさといったら、もう・・・。

ところが、次回作のこの後半作品ともいえる「アップルヴィーナスVol2 ワスプ・スター」では、いつものバンドサウンドに戻ってしまい、なんかがっかり(笑)。 なんだい、また子供に戻っちゃったのかい。いつものXTC節が炸裂しているハズなのに、なんか普通に聞こえてしまってピンと来ない・・・。それだけvol1が私の感性とうまく合ったという事だったのかもしれません。
今やあの「ノンサッチ」ですら普通に聞こえてしまう。なんてこったい。


Fra lippo lippi / Songs
1. Come Summer
2. Shouldn't Have To Be Like That
3. Even Tall Trees Bend
4. Just Like Me
5. Leaving
6. Regrets
7. Everytime I See You
8. Crash Of Light
9. The Distance Between Us
10. Coming Home



©Virgin led.
1986 Release

最近どうも私はポップミュージックやロックといったサウンドを食い尽くしたきらいがあるのか、この手のサウンドを以前に比べて聴かなくなっているような気がします。だからといって嫌いになったわけじゃなくて、今でも欲しているんですが、どうもこれといった物に最近ブチ当たらないみたいで、なかなかお気に入りが現れてくれません。
そんな飽食ぎみの私は新しい刺激を求めてエレクトロニカや現代音楽とかを最近頻繁に掘り下げるようになっているんですが、それでも極上のポップアルバムとか聴きたくもなる訳ですよ。別に今そういう音楽がなくなりつつあるのではなく、ただ単にどこのメディアもお店もそういうのを積極的にプッシュしてくれないので気付かないだけなのかな、とか思うんですがどうなんでしょう。

と、言うわけでフラ・リポ・リッピです。80年代に活躍したノルウェーのポップディオ。当時ノルウェーのアーティストといったらa-haが断然に人気絶頂で、そのあおりを受けて彼らもそれなりに脚光を浴びましたが、まあほとんどの方が知らないかもしれません。彼らのメジャーデビューアルバムとなった「Songs」は、この上ないほど哀愁漂うポップアルバムに仕上がっています。
ジャケットにあるようなどんよりとした曇り空の下、古城がたたずむ情景そのままに、冷たくも美しい世界観が広がっています。にもかかわらず憂鬱や悲しみといった感情は薄く、どちらかというとお洒落な感覚が見え隠れする実に聴きやすいポップミュージックです。系統的にはエレポップ系なのかもしれませんが、あまりその面は表に出すぎておらず、あくまで隠し味的要素であり、今聴いても全然古臭く感じません。 

その後、89年に「colour album」という傑作中の傑作アルバムを世に出すんですが、これがもう極上ポップの応酬で素晴らしい内容でした。現に当時の彼らの曲はドラマのEDテーマに使われたり、CMに起用されたりしましたからね。ただ、徐々に彼らはメロドラマをほうふつとさせる超お洒落路線に傾いてきてしまい、「colour album」でもすでにかなりお洒落路線になっていました。それでもまだ聴くに耐えうる良いアルバムだったのでお気に入りだったんですが、しかしこれ以降本当に超お洒落路線のサウンドになってしまい、私の守備範囲から外れてしまいました。実はまだ活動しているらしく、2002年にもアルバムを出して健在ぶりをアピールしているんですが、未聴なのでどういう内容かはわかりません。

さて、このデビューアルバムである「Songs」はまだ初期の初々しさが残るとはいえ彼らの魅力が凝縮されたいぶし銀の傑作です。クオリティとしては断然「colour album」の方に軍配が上がるんですが、この寒々とした中の美しいメロディというのが非常に魅力的です。最近こういうのに巡り合わなくて寂しいことこの上ありません。誰かもっとこういう極上ポップを作って下さい。
ちなみに、彼らはメジャーデビュー以前はもっとギターを全面に押し出した、かなりオルタナ色の強いバンドだったそうで、実際インディー時代のアルバムとか聴くとその後の彼らのアプローチと全然違う事に驚かされます。ジョイ・デビジョン辺りを連想させるサウンドと言われていたんですが、たしかにそんな雰囲気はあります。で、ポップ路線に移行してもインディー時代の憂鬱な感じがまだ反映されていた結果、あの絶妙な哀愁漂う作品になったのでしょう。
考えてみればITNも路線を大きく変更し、憂鬱な感じを引きずっていたもののそれをうまく自分の物として昇華し、喜びとも悲しみともつかぬ独特の美しいサウンドを築いていった事を考えると、哀愁漂いながらも超極上なポップミュージックを完成させたフラリポと良く似ているような気がします。どっちも地味で目立たないしね(爆)。
ところで、このアルバムいまだにCD版が見つからないのよねえ。レコードですらなかなか見つからない超廃盤になってしまってちょっと残念。ベスト盤は流通しているんですが、やっぱりこの雰囲気は通してこそ聴きたい。


THINKMAN / The formula
1. Best adventures
2. The formula
3. Legend
4. The ecstasy of free thought
5. The conflict
6. The challenge
7. The days of a champion
8. There shines our promised land



©Misolaced
1986 Release

ルパート・ハイン率いるThinkman・・・・といっても、ルパートハインという名にどれだけの人がピンと来るのか。なんかマニアックな物ばかりチョイスしているようですけど、知ってる人は良く知ってる超大物。80年代の洋楽シーンに詳しい人なら、この人の名をかなりの確率で耳にしている人もいるかもしれませんが、ミュージシャンというよりはどちらかというとプロデューサーとして有名な人で、過去にプロデュースしたアーティストは数知れず、しかもミリオンヒット作をこれでもかと排出している敏腕でもあります。
有名なのがハワードジョーンズやティナターナーのプロデュースですが、90年代後半にはDuncan Sheikなども手がけて大ヒットさせるなど、現役バリバリの仕事振りを見せつけ、その力量を知らしめていました。
しかしこのルパートハインという人、元はと言えばれっきとしたミュージシャン。自分でヴォーカルを取って作曲もこなし、シンセやキーボードを駆使したエレクトロニックなポップ・ロックを作って来た人。
プロデューサーとして引っ張りダコだった最中でもコツコツとアルバムを発表してきた事は意外と知られていません。

そんな訳でミリオンを飛ばすプロデュース業とは対照的に、彼の出すソロアルバムはどれも泣かず飛ばず。決してアンキャッチーな内容では無いんですが、メインストリームの流行から微妙にずれた感覚と音楽性ゆえの結果でしょうか。そして何よりやっぱり地味だし(笑)
これはそんなルパートが、本気で勝負に出てきたというプロジェクト。新人の若手アーティストを3人引き連れ、Thinkmanというグループをスタート。勿論全ての曲をルパート本人が手がけ、メインボーカルも彼が担当。要するにルパートとその他の皆さんというような状況で基本的には彼のソロアルバムと何ら代わりは無かったんですが、泣かず飛ばずだった自分の作品の状況を打破しようという意気込みが溢れていました。
内容的にも、彼の過去の作風を色濃く反映したもので、基本はシンセやキーボードなどの打ち込み系のポップロック。なんというか彼の趣味が大きく露骨に出ているような印象で、今この文章を読んでいる方々の殆どがこのバンドの事など聞いたことがないであろう状況から分かるように、結局はさほど話題にならぬまま終わってしまいました。

しかし、公式サイトなどによると、このThinkmanというバンドはメディア操作をコンセプトとした企画物であり、何とルパート以外のアーティストは役者だったそうで(つまりダミー)、感じとしては覆面アーティストを装ったアート・オブ・ノイズに発想が近いのかもしれません。要するに架空のバンドをでっち上げた、という事でしょうか。
そのため、ジャーナリスト達にも真実のように嘘がばら撒かれたので、皆、ルパートが本気で売りに来た!と思いこんだのでしょう。(当時のライナーノーツにも興奮した感じでそう書かれていたので、私もてっきり騙されたって事になりますが)
詳しい経緯は分かりませんが、恐らく、丁度MTV真っ盛りの時代で、それを一種皮肉った所があったのかもしれません。でも、これで大ヒットしていれば成立している話であって、あまり話題にならなかったのが逆に皮肉になってしまったというか・・・。

確か3枚ほどアルバムはリリースされていますが、セカンドはロック色が強くて個人的にはあまり聴いてません。サードはソコソコの内容でしたが、これも地味。やはりそんな中でもこのファーストが一番
洗練されていたような気がします。
ルパートさんのヴォーカルはとても特徴的で、一聴してこの人だと分かるちょっと不思議な声。私はこの人の歌声が凄く気に入っていたのですが、クセがあるので抵抗がある人もいたのかもしれません。音楽的にも80年代をほうふつとさせるキーボードメインのポップロックですが、そこは敏腕プロデューサー、かなり手のこんだ作りであって、安っぽい作りではありません。
元々この人の作品はイメージ全体からして非常に哲学的で硬い雰囲気があり、そうした気難しさがアダとなっていた感はあります。特にこのThinkmanはそれが顕著です。シングルカットされた1曲目の「Best adventures」なんかをとってみてもかなりキャッチャーで名曲なんですが、どうも堅苦しい雰囲気で覆われていて、そういうルパートさんの雰囲気が地味路線へと傾いてしまったのかなと。
でも私はこのアルバムがとても好きで、元々ルパートハインのソロアルバムは皆好きだったのですが、これは例えば「Best adventures」なんてルパートさん入魂の一曲、という気がするのですよ。

結局これ以降懲りたのか、彼はプロデューサー業に専念していく事になるのですが、ふっと忘れた頃にそっとソロをリリースしている辺りが、性分には逆らえないのかこの人らしいというか。でもやっぱり地味なんだけど(爆)
しかしこの人の曲や音色、いいんだけどなあ、独特で。一時は皆廃盤でしたが、ここ最近リイシューされた事があるので、比較的入手は簡単なほう。このサイトで紹介している他の作品とくらべるとまだかなりロック色が強い方ではあるんですが、ギターとかそういった音があまり前に出ておらず、あくまで個々の音の一部、という概念で配置されている感じがあります。要するに聴きやすいんです。地味だけど(爆) しつこい。


Wolfsheim / Casting shadows
1. Everyone Who Casts a Shadow
2. Care For You
3. I Won't Believe
4. Kein Zurueck
5. And I...
6. Underneath the Veil
7. Find You're Gone
8. This is for Love
9. Wundervoll
10. Approaching Lightspeed
11. in Time



©Metoropolis records
2003 Release

Wolfsheimは、ドイツを拠点とした2人組のポップユニットです。キャリアは意外と長いようで、80年代後半から既に活動を始めています。独版デペッシュモードとの異名を持つだけあって、そのサウンドは当時のエレクトリック・ポップに近い感じがあり、当然デペッシュモード的な雰囲気もあれば、OMDのような感覚も見え隠れしています。
全体的な彼らのイメージからして、当時のインダストリアルな暗い雰囲気を反映した感じになっているのですが、ボーカルがデビット・シルヴィアンみたいな憂いを持った独特の美しい歌唱なおかげで、その暗さをオブラートで包む役割を果たしており結果的にとても聴きやすい曲になっています。

2001年リリースの"Spectators"でヒットし、世界的にもそれなりに注目を浴びるようになったそうですが、日本ではまだまだ知名度は無いですね。英語とドイツ語の両方で唄っていますし、やっぱり全部英語じゃないと日本じゃダメなんですかね。
この頃の彼らは色んな要素をブチ込もうと意欲的で、サウンドが色々凝っている分、個人的にはちとウルサイかなあ、という印象を持ちました。こういうインダストリアルで意欲的なサウンドの方が世間的にはウケが良いのかもしれませんけど、せっかくの哀愁漂うボーカルの味を出せてないという気もするのです。

で、今回紹介する
"casting shadows"は2003年にリリースされた作品で、今までの彼らのやり方と何ら変わってないのですが、前作にあったような意欲的なサウンド指向やビートを押さえ、あまつさえボーカルを押え込むようだったこれらの音は後ろの方でささえるかの如く鳴り響き、実に落ち着いた雰囲気のサウンドに変化しています。
ようやく音とボーカルが一体化したような感じがあり、実にしっとりとした大人のエレクトリック・ポップという物に昇華していると思います。元々メロディ自体が良かったバンドなので、ある意味でこれは超強力なポップアルバムと言えるのではないでしょうか。とても聴きやすい上に、哀愁漂うボーカル、フッと振り返ってみれば、こういう良質ポップが少なく感じる昨今で、希少な価値ある存在と言えなくもありません。企画物に過ぎなかったエレクトロ・ポップユニット「Postal service」が大ヒットしている事からも分かるように、まだ皆こういった「電子ポップ」を求めているんだと思うのですけど、最近いいのがあまりないんですよねえ。そんな中でこのWolfsheimのアルバムはまさに追い求めていたサウンドのひとつで、砂漠にポッカリ出てきたオアシスのよう。Postal serviceとかが気に入った80年代風エレクトロ・ポップサウンド好きな方々にも充分御薦め出来る傑作です。
まあここのサイトの趣味指向から分かるように、微妙に地味な訳でありますが、大きく出過ぎず、かといって退屈でもなくという絶妙のラインがたまりません。今後の彼らがこの路線で引っ張るのかどうかは分かりませんけど。



The Frank and Walters / Glass
1. Underground
2. Isn't It Time
3. New York
4. 6 Becomes 9
5. Sinking
6. Talking About You
7. Paradise
8. Ancestors
9. Forgiveness
10. Facing Silence
11. I Will Be King
12. Looking For America



©Setanta records inc
2000 Release

90年代初頭にアイルランドから突如現われた3ピースバンド、フランク&ウォルターズ。その無垢なイメージからイングランドの良心と言われ、ギターポップファンから熱烈な指示を受けた彼ら。
しかし、15年で4枚のアルバムリリースという、平均で4年間隔というマイペースぶりのせいか、いまいち世間への認知度が少なく、私もつい最近まで解散しちゃったのかなあ、と危惧していた所、またマイペースな感じで去年末にレアトラック集をリリース、しかも今年には新作をリリースするとアナウンス。それが本当なら、前作からまたもや6年ぶりという事になる訳だけど、彼らのファンである私としては純粋に嬉しいニュースでした。

彼らは典型的なギターポップバンドで、その親しみやすいメロディと、ポール・リナハンによる独特なボーカルが印象的でした。彼のボーカルを聞いていると、ちょっと気色やジャンルは違うのかもしれませんけど、どことなくブルー・ハーツのボーカルのあの感じと合通じるところがあるように思えます。どちらも、お世辞にもうまい唄い方とは言えず、ほとんど強弱のないまっすぐな唄い方。しかしその一所懸命に唄っているような歌声が、妙に心に響いてくる訳です。
そんなこんなで彼らは私の超お気に入りのバンドになりましたが、サードアルバムで微妙に路線変更を試み始め、エレクトロニックな味つけやビートを導入し始めました。これはファン達からは結構賛否両論だったみたいでしたが、私はそんなに過剰な変化とも思えず、相変わらず彼ららしいアルバムだったので好きでした。ところが、今回紹介しているフォース・アルバム「Glass」は、よりいっそうエレクトロニック色が強まり、冒頭を飾るナンバー「Underground」に至っては、ビートが完全に前面に打ち出されたエレクトロ・ポップになっていました。さすがに往年のファン達からもそっぽを向かれたか、このアルバムは結局邦盤化すらされなかったのです。ひどいなあ。

未だに彼らの代表作はファーストの「Trains, Boats and Planes」だっていうファンが多いみたいです。たしかにファーストのパワーポップ的な内容からすれば、相当な変化ですからね。でも私は初期の彼らは、あまりに普通のギターポップ色であんまり印象に残ってないです。まあ名曲は多いですけどね。個人的に、どうもこの辺はパワーポップ好きの人達が、その枠から外れる事を極端に嫌っている図式が見え隠れして嫌な感じです。
このアルバムが出る前まではセカンドの「The Grand Parade」が私の中で一番だったんですが、今では結局このフォースを聴く回数の方が圧倒的に多くなり、明らかにこのアルバムが一番の愛聴盤になっています。
このアルバムの魅力はなんといってもその絶妙な「地味」加減さなのかもしれません。ギターの音も控えめで、全体的に漂う冷ややかで落ち着いたトーンがとても心地よくて聴きやすいんだと思います。それにいくらエレクトロニック色が強まったからといって、彼らのメロディセンスは変わってないし、あくまでバンドサウンド寄りだと思うし、あの独特のポールの声も健在。別にクラブ路線になった訳じゃ全然ない訳だから、結局は彼ららしい内容だと私は思います。個人的にはこういうトーンのポップアルバムの方が断然好み。「Ancestors」や「Talking About You」等の美しいメロディや、「New York」でのサビの女性によるハミングなんて、なんと癒されることか。勿論冒頭の疾走感溢れる2曲もポップでよろし。

さて、06年に出ると噂されるニューアルバムは一体どんな内容なのか。まあどんな形態であれ、あのボーカルとメロディがあれば、私は全然文句無いんですけどね。



GANGWAY / The Quiet Boy Ate the Whole Cake
1. Biology
2. Strawberry Coat
3. Going Away
4. Sisters In Legs
5. Believe In Me
6. Go Go Go
7. Goodbye And Goodnight
8. Don't Ask Yourself
9. Bbiology (reprise)
10. Buck
11. Thermometer Song



©Hammer Co. Ltd
1991 Release

良質なエレクトロ・ポップをリリースしていたバンドといって何を思い出すでしょうか? まあ結構たくさんありますからね、そういったバンドは。私の場合、その中に大概このGANGwayというバンドは入ってきます。80年代にデンマークで結成されたGANGwayは、当初ネオアコ系のバンドでしたが、デビッド・モーションのプロデュースによりファースト・セカンドアルバムから選曲し再レコーディングしたリメイク版によって、その後エレポップ系のバンドへと成長していきます。わざわざアルバムをレコーディングし直してリメイクするなんてのはフラ・リポ・リッピも行っていましたが、ヨーロッパのバンドが世界を視野に入れた場合に度々行われていた行為ですね。まあ本人達の意思がどれだけ反映されていたか疑問ではありますが。 まあフラリポもこのGANGwayも、そのリメイク版によって初めて世界的に認められた事は事実。
今回紹介しているアルバムはそのリメイク版の後に出てきた一枚。そのためそのリメイク版と同じくデビッドがプロデュースを務めています。
前作にも増してエレクトロポップ色が強まった作品で、初期のアコースティック路線と比べれば大変な変化です。かなりビートが強調されており、そういったリズムが心地よい。一曲目のBiologyなんてその典型です。そしてなによりこのGANGwayの魅力はボーカルのAllan Jensenの甘い美声。この包み込むような優しい歌声が、ポップなメロディをより美しいものへと昇華させています。初期のネオアコ系のアルバムもGANGwayファンの間では人気がありますが、この頃のアルバムはまだ彼の美声が完成されておらず、中途半端な印象を受けるので私はさほど好きではありません。 しかしサードアルバムを境に彼の声の良さが出始め、新生GANGwayが誕生したと言っていいでしょう。

GANGwayはその後もこのエレポップ路線を進め、3枚のアルバムを発表、しかしベスト盤を置き土産に97年に惜しまれつつも解散。結構あっけない幕切れでした。私は93年発売の「Happy Ever After」でこのバンドの存在を知る事になりますが、まだこの頃の印象は声が奇麗なそこそこいいエレポップアルバム位の物でした。しかしラストアルバムの「That's Life」や今回紹介の「The Quiet Boy〜」で一気にその魅力に取り憑かれる事になります。やはりこの2枚は中でもメロディやアレンジが優れている物が多く、他の大量に存在するエレポップバンドと確実に違う個性も持ち合わせていました。

ポップミュージック中毒者なら知らないことは許されないバンドのひとつ、と個人的には思っているのですが、残念ながらGANGwayのアルバムは特に入手困難な物が多く、せいぜいリメイク盤の「Sitting in the Park」を時々見かける位です。私も「The Quiet Boy〜」を手に入れるまでに相当な時間がかかってましたからね。しかも、全アルバム中、もっともファンの間で評価が高い日本のみの企画編集盤「Quiet Edit+」に至っては未だ入手出来ないでいる有様。実は一度リイシューされていたらしいのですが、それすら買い逃しているし・・・(悲)。



Matt pond PA / Several Arrows Later
1. Halloween
2. So Much Trouble
3. The Trees And The Wild
4. Several Arrows Later
5. It Is Safe
6. Emblems
7. City Song
8. From Debris
9. Brooklyn Stars
10. The Moviegoers
11. Spring Provides
12. Devil In The Water



©Altitude Records
2005 Release

このバンドとの出会いはたまたまお店で試聴したという物だったんですが、05年に発売されたこの最新アルバムを聴いて、お、いいね、と思い即買い。当初私は彼らの事を新人バンドかと思っていたんですが、実は98年には既にアルバムをリリースしていたという、かなりのベテランの位置に部類するアーティストでした。
アメリカはフィラディルフィアから出てきたいわゆるUSロックバンドですが、そういった土地柄が反映されているのか、ちょっと田舎めいた雰囲気がそこかしこに漂う土着的ロックバンドです。リーダーでありボーカリストのMatt pondが中心となり、ゆうに10人以上はクレジットされている大所帯バンドですが、楽曲ごとに演奏者が違っている、というような感じのようです。

このMatt pond PAというバンド、とにかくメロディの良さは言うに及ばず、ボーカルの声の良さ、脇をささえるバックコーラス、ギターと共に流れるヴァイオリンの調べと、とにかく美しくて泣きのメロディがてんこ盛りで本当に素晴らしいです。1トラック目の落ち着いた感じの楽曲がいかにも彼ららしい雰囲気なのですが、一方で、シングルカットされたアクティブな曲調の2トラック目も彼らの真骨頂で、メロディの良さがにじみ出ている名曲です。
しかし最初のウチはまあ、よくあるタイプのインディー・ロックバンドだったようですが、04年リリースのアルバム"Emblems"でLouie linoという人物がプロデュースをするようになってから格段にサウンドクオリティが高上しています。
こういうバンドは山のようにいるのかもしれないけれども、でも見渡すと意外といなかったりするんですよ。近い感じで言うとデスキャブ・フォー・キューティとかになるのかもしれないけど、あのバンドも意外と近いバンドが見当たらないような気がします。要するに、実際のところ美しくて歌心があるバンドなんてそうそういないって事です。どちらのバンドもロックバンドとは言え、抑えた感じの落ち着いた印象があります。スピーディな疾走感のある曲もあるけど、どれも淡々としていてとにかくメロディが美しくて、全然聴いていて苦じゃ無いんです。


とあるサイトが、何でこんな素晴らしいバンドがこんなに無視されているんだ!と嘆いておられましたが、確かにこのバンド、あんまり有名じゃないですよね。その意見には私も同感で、もっと評価されてしかるべきです。まあ、良いバンドに必ずしも正当な評価が下されるとは限らないという事はITNで嫌ってほど経験済みですので(爆)、今に始まった事ではないですが、まあ巷にあふれるパワー・ポップとかに耳を奪われている暇があったら、たまには彼らの曲をじっくり聴いてみる事をオススメします、マジで。

Myspace公式サイトでいくつか試聴できますのでとにかく聴いてみてください。ちなみに試聴は見当たらなかったですけど、アルバム"Emblems"に収録されている"Closest(look out)"も相当な名曲ですんで参考までに。