界面活性剤は,炭化水素鎖などの疎水基(R- と略記することが多い)と親水基をあわせ持つ分子で,水に溶解した場合の界面活性剤本体のイオン性により以下の表のように分類される.陰イオン系(アニオン系)や非イオン系(ノニオン系)のものは,洗浄に用いられ,陽イオン系(カチオン系)のものは衣類の柔軟剤やシャンプーのリンス,殺菌剤などに用いられる.両性イオン系は液のpHにより,アニオン・カチオンのどちらかになる.
現在では用途に応じた様々な界面活性剤が開発されているが,食品に用いられるレシチン(疎水基が様々なものがある[分子モデルの一例])や末尾に上げるサポニンなど,天然の界面活性剤と呼ばれるものも多数あり,自然界でも重要な役割を果たしているほか,古くから人間が生活の様々な場で利用してきている.
分 類 |
種類名・一般式 | 界面活性剤分子の例 | 主な用途 |
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陰 イ オ ン 系 |
脂肪酸塩 (セッケン) R-COONa |
化粧石ケン,洗濯石ケン,身体洗浄料 | |
アルファスルホ脂肪酸エステル塩(α-SFE) R-CH(SO33Na)COOCH3 |
洗濯用洗剤 | ||
アルキルベンゼンスルホン酸塩(ABS) ※疎水基の炭化水素が直鎖のものは, R-(C6H4)SO3Na |
洗濯用洗剤,台所用洗剤,住居用洗剤 | ||
アルキル硫酸塩(AS) [高級アルコール系] R-OSO3Na |
シャンプー,洗濯用洗剤,歯磨き | ||
アルキルエーテル硫酸エステル塩(AES) R-O(CH2CH2O)nSO3Na |
シャンプー,洗濯用洗剤,台所用洗剤 | ||
アルキル硫酸トリエタノールアミン R-OSO3-・+NH(CH2CH2OH)3 |
シャンプー | ||
非 イ オ ン 系 |
脂肪酸ジエタノールアミド R-CON(CH2CH2OH)2 |
シャンプーの洗浄力・起泡力増強剤 | |
ポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE) [高級アルコール系] R-O(CH2CH2O)nH |
洗濯用洗剤,住居用洗剤,乳化剤 | ||
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(APE) R-(C6H4)O(CH2CH2O)nH |
乳化剤,洗濯用洗剤 | ||
陽 イ オ ン 系 |
アルキルトリメチルアンモニウム塩 R-N+(CH3)3・Cl- |
リンス,帯電防止剤 | |
ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド R2-N+(CH3)2・Cl- |
柔軟剤 | ||
アルキルピリジニウムクロリド R-(N+C5H5)・Cl- |
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両 性 イ オ ン 系 |
アルキルカルボキシベタイン [ベタイン系] R-N+(CH3)2・CH2COO- |
台所用洗剤やシャンプーの洗浄力増強剤,増泡剤,工場用 |
【注】 分子モデルの疎水基は,APEを除いて直鎖部分の炭素数を 12 にして組み立てた.親水基が同じでも疎水基の長さなどにより性能が異なることに注意する必要がある.
また,非イオン系の AE,APE の親水基は,長いポリオキシエチレン鎖 -O(CH2CH2O)nH で,水中では -O- の部分を外側にして丸まった構造になっていると考えられている(模式図参照).
なお,陽イオン系界面活性剤では Cl- がイオン結合しているが,上の分子モデルではわかりやすいように N に結合しているような表現方法を用いたため,実際の立体構造と異なっていることに注意されたい(「イオン結合の表示について −酢酸ナトリウムを例に−」も参照).ただし,界面活性剤の種類(2)では陰イオン系・両性イオン系を含めて,電荷を与えて計算したモデルを表示する.
※界面活性剤の重要な性質の一つであるミセル形成能の模式図