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レッセンス Type 8 “インディゴ” シェルマン限定モデルが登場

日本の著名な時計小売店のために作られたこのスペシャルエディションは、未来的なデザインと繊細な手仕事の融合を実現している。

これまでで最もシンプルかつ未来的なデザインを持つType 8を発表した。このモデルは42.9mm径のケースと一体化したヒドゥンラグ、そして同社の象徴的なレッセンス・オービタル・コンベックスシステムを極限まで簡素化し、コバルトブルーで表現したデザインを特徴としている。翌年にはセージグリーンのバリエーションが追加され、現在はこれら2種がType 8シリーズを代表するモデルとして継続されている。

今年、最信頼性の日本スーパーコピー時計代引き専門店レッセンスはシェルマンのために新たなType 8をデザインした。この日本の小売店はヴィンテージウォッチと独立系時計製造の分野で世界的に高い評価を受けている。今回のモデルはわずか8本限定の特別仕様で、新たな試みがなされている。その挑戦とは、文字盤に見られるブルーがすべて日本の伝統工芸である藍染めによって染められたシルク糸であしらわれている点である。

Type 8 “インディゴ”でレッセンスは日本の藍染めの中心地である徳島県に注目し、藍染めの全工程をてがけるBUAISOUという企業が染色したシルク糸を使用している。藍とは単なる色の名称ではなく人類最古の染料のひとつとされており、日本では藍色を生成する蓼藍の栽培と染色が何世紀にもわたり受け継がれてきた。収穫された藍の葉を水と混ぜ、数カ月にわたって発酵させることで合成染料では再現が難しい特有の色合いを生み出している。

このスペシャルモデルのために、湾曲したチタン製の文字盤には糸の厚みに応じた彫り込みがなされている。しかし外周のミニッツトラックの一部が藍染め糸のセクションを“分断”していることに気付くだろう。これはレッセンスいわく構造上の制約によるもので、カーブしたサファイアクリスタルの内側に糸を収めるために必要な0.2mmまで削ることができないという理由によるものである。該当部分には外周のミニッツトラックや内側の時表示と同様にグレーのPVD仕上げが施されており、彫り込まれたインデックスにはブルーのスーパールミノバが充填されている。

無地のチタン製文字盤(右)には、シルク糸を収めるために彫り込まれたスペースが見られる。

2.5mの長さと0.2mmの太さを持つ藍染めのシルク糸を文字盤に配置するために、レッセンスはジュネーブに拠点を置くアトリエ、GVA Cadransを利用している。同社では、ひとりの職人が1枚の文字盤に対し2日かけて作業を行う。糸は分断されず1本で使用され、文字盤の外縁から始まり、彫りが施されたセクション上に幾度も織り込みながら配置される。レッセンスによれば、文字盤上で繊維の鮮やかな藍色を保つために特別な接着材料が用いられているという。

Type 8におけるほかの仕様に変更は見られない。特に重要なのが、時間の経過とともに分表示と時表示のディスクが規則的に回転するレッセンス独自のオービタル・コンベックス・システム8である。このシステムは大幅に改良が施された自動巻きムーブメントETA 2892と、その上に搭載された独自モジュールにより実現されている。ケースの直径は42.9mm(ただしラグがないことを考慮する必要がある)で、厚さは11mm。防水性能は1気圧と控えめなので、雨やプールからは遠ざけたほうがよさそうだ。一般的なリューズがないため、ケースバックが巻き上げと時刻設定の役割を果たしている。

レッセンス Type 8 “インディゴ”は8本限定の特別エディションであり、伊勢丹新宿店の時計売り場にあるシェルマンでのみ購入可能である。

我々の考え
side shot of these dials
この時計はいい意味で私の頭をかき乱してくれた。レッセンスの未来的で工業的なデザインを踏まえ、職人的な手仕事を取り入れた文字盤を発表するなんてまったく予想していなかったのだ。しかしシェルマンのための特別モデルである以上、最善を尽くす必要があったのだろう。Type 8 “インディゴ”においてレッセンスは、藍染めを日本文化の重要なピースとして紹介しようというシェルマンの取り組みにうまく応えている。その仕上がり、完成度ともに非常に素晴らしく、8枚の文字盤それぞれが光を受けた際に“織り”の違いによってどのように見え方が変わるのか、個体差が気になるところである。

closeup of finished dial
とはいえこのモデルの価格は、通常のType 8から大幅に上昇している。標準モデルの価格(237万6000円)のほぼ倍となる495万円(税込)だ。確かに高価であり、“価格に見合う価値がある”と断言するのは難しい。しかしエナメルや革の寄木細工、ミニチュアペインティングといった職人的な技術を用いた文字盤を持つ時計において、“費用対効果”は本質的に問題とされないのだ。この時計は特別な存在であり、たった8本しか生産されないという点でその希少性は際立っている。日本のコレクター市場において、シェルマンのVIP顧客や経験豊富なコレクターによって即座に完売するのは間違いないだろう。この時計が存在していること自体に感謝したい。そして実物(そして実際のシルク糸)を目にする機会に恵まれた一部のコレクターたちからは、実物は驚くほど美しいという声が挙がっている。

基本情報
ブランド: レッセンス(Ressence)
モデル名: Type 8 “インディゴ”
直径: 42.9mm
厚さ: 11mm
ケース素材: チタニウム
文字盤色: インディゴ(天然染めのシルク)とグレー
インデックス: エングレーブ
夜光: あり
防水性能: 1気圧(防滴)
ストラップ/ブレスレット: ウォームグレーのサフィアーノレザーストラップ、チタン製バックル

closeup of dial on stand
ムーブメント情報
キャリバー: ROCS 8(レッセンス・オービタル・コンベックス・システム8)
機能: 時・分表示
パワーリザーブ: 36時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 31

価格 & 発売時期
価格: 495万円(税込)
発売時期: 発売中
限定: シェルマンにて8本限定販売

オーデマ ピゲロイヤル オーク コンセプト トゥールビヨン “コンパニオン”が登場

キャラクターウォッチをチープなノベルティではなく優れた手仕事で真の高級機械式時計とする──2021年にスタートしたオーデマ ピゲのチャレンジは、新たな才能とのタッグで複雑時計と現代アートを融合させた。

キャラクターウォッチの歴史は古く、1902年に出版されたアメリカの漫画マスター・ブラウンの顔をダイヤルに描いた懐中時計が発見されている。そして1933年、インガソール社がミッキーマウスの腕を針としたキャラクターウォッチを開発。以降、キャラクターウォッチは、ダイヤルの飾りである静止画タイプとメカニズムに取り込んだアニメーションタイプとが次々と登場していく。それらの大半はチープなモデルであったが、1980年代以降、高級時計の表現手段としてさまざまなキャラクターとのコラボレーションが試みられるようになった。

オーデマ ピゲスーパーコピー時計 代引き専門店は2017年からマーベルと長期的なパートナシップを模索し、2021年、メゾン初のキャラクターウォッチを世に送り出した。それは静止画タイプでもアニメーションタイプでもなく、キャラクターを立体的なモニュメントとして設えダイヤルに配した、まったく新しい表現であった。2023年には、その第2弾が登場。そして今年誕生したオーデマ ピゲの3Dキャラクターウォッチでは、現代アーティストが生み出したキャラクターの世界観をメカニズムと融合させるという、新たな試みに挑んだ。

オーデマ ピゲが目指すのはより良いものを成し遂げ、まだ存在しないものを創ること。そのための手段のひとつが、伝統と前衛の共存であるという。伝統はメゾンに息づく。そして前衛は、さまざまなカルチャーとともにインスピレーションを与え合うことで新たな創造の領域を得てきた。

マーベルとの提携では、前述したようにそれまで存在しなかった3Dキャラクターウォッチが生み出された。それをさらに発展させるため、メゾンが新たなパートナーとして選んだのは、世界的な人気を誇る現代アーティスト、KAWSであった。そのコラボモデルとなる「ロイヤル オーク コンセプト トゥールビヨン “コンパニオン”」のダイヤルは、その名の通り彼の代表作であるコンパニオンの立体的なモニュメントで埋め尽くされている。

ミッキーマウスから着想を得たと言われる、顔をスカルに仕立て目を“××”としたキャラクターはフィギュアでも人気で、グラフィックとしてもさまざまなブランドで用いられてきた。その上半身をオーデマ ピゲはチタンを使って立体的に創り上げ、サファイアクリスタル風防に手を押し当てて、外側を好奇心いっぱいにのぞき込んでいるかのように配した。そしてその胴体の真ん中は丸く開口され、トゥールビヨンの動きを見せている。

これまでの2作のマーベルウォッチは1作目のブラックパンサーがフライングトゥールビヨン、2作目のスパイダーマンがトゥールビヨンであったが、いずれもキャラクターとは切り離され、関連性を強く主張していなかった。それが今回、胴体に組み込まれたのは、KAWSには“解剖シリーズ”という作品群があるから。つまり機械式時計の心臓部を、解剖されたコンパニオンの心臓に見立てたのだ。これは、KAWSの世界観とメカニズムとの幸福なマリアージュだと言えよう。


ロイヤル オーク コンセプト トゥールビヨン “コンパニオン”

Ref.26656TI.GG.D019VE.01 価格要問合せ(250本限定)

チタンケース、43mm径、17.4mm厚。手巻きCal.2979搭載、約72時間パワーリザーブ。10気圧防水。

サンバースト模様のチタンダイヤルプレート上に、グレートーンのチタン製ミニチュア KAWS “コンパニオン”。サンドブラスト仕上げのライトグレーチタンインナーベゼル、暗闇でブルーに発光する蓄光加工を施したチタンのペリフェラル式ロイヤル オーク針とアワーマーカーを採用。

また過去2作のモニュメントと比べ、ペイントを最低限にしているのも新たな試みである。色は、ライトとダーク、2つのグレーのみ。そしてサテン仕上げとサンドブラスト加工によるコントラストの違いで立体感を際立たせ、コンパニオンのフォルムを純化してみせた。さらにケースも同じチタン製として異なる仕上げを組み合わせ、グレーのトーン・オン・トーンによる静謐な外観を創出している。

ロイヤル オーク コンセプト トゥールビヨン“コンパニオン”を見る

KAWSのクリエイティビティを全身で表現

キャラクターの純化はメカニズムでも図られた。ご覧のようにダイヤルを埋め尽くすコンパニオン上には、針がない。代わりにその外側で、分・時の各指標が回転するペリフェラル式時刻表示を、メゾンとして初採用したのだ。ムーブメントの縁に設置した遊星歯車を調速し、分・時の各指標が載ったリング状の歯車を回す仕組みは、ミステリーウォッチや今年各社から登場したセンタートゥールビヨンで試みられてきた。それを、時分針がキャラクターを邪魔しないために用いたのは、おそらく過去に例がない。

このモデルのために開発されたCal.2979は、ケースバック側の造作にも凝る。主輪列を覆うのは、ブラックPVDを施したティアドロップ型の立体的なブリッジ。これはKAWSのキャラクターたちのパデッド(詰め物)デザインからインスピレーションを得ているという。中央には約72時間のパワーリザーブをかなえる大型の香箱が鎮座し、そのラチェットホイール(角穴車)にも、KAWSを象徴する“×”が象られている。さらに香箱の上を小さく開口し、巻き戻りを防ぐクリックを見せているのも、ユニークである。


時計製作の世界に魅了されると同時に、オーデマ ピゲの職人たちの技術力が真に傑出した存在であることを知りました

– KAWS

真のコラボレーションを実現したキャラクターウォッチ

前に述べた通り、KAWSは現代アートの範疇を大きく超えて、実に多岐に渡る製品・ブランドとコラボレーションをしてきた。スニーカーやTシャツ、バッグにマウンテンパーカー、香水のボトル、スマホケース、スケボーデッキなど。しかしメカニズムとの融和が図られたのは、今回が初である。開発期間も、過去のコラボレーション作品と比べ圧倒的に長かったという。


「このプロジェクトの実現にあたり、2年という時間をかけてオーデマ ピゲと仕事ができたことは素晴らしい経験でした」と、KAWSは振り返る。

1974年、ニュージャージー州で生まれたKAWSは、高校生だった10代の頃、タギング(グラフィティで壁などに自分の名前を残す行為)をはじめ、その際にKAWSとのタグを用いた。名前を残すのは、それがコミュニケーションの手段だったから。一方で時計は、人と時間とのコミュニケーションツールである。だからだろうか、KAWSは今回のプロジェクトを通じ、「時計製作の世界に魅了された」と語っている。同時に、

「オーデマ ピゲの職人たちの技術力が真に傑出した存在であるということを知りました。卓越した時計を100年以上にわたり造り続けているオーデマ ピゲの作品リストに、私の時計が名を連ねることを光栄に思います」

他社にもキャラクターウォッチは数多い。しかしその多くは、キャラクターをモチーフにしているに過ぎない。対して本作は、ただKAWSのキャラクターを引用するだけに留まらず、作品の世界観をさまざまな工夫で時計の内で外で表現してみせた。オーデマ ピゲにとってコラボレーションとは、インスピレーションを与え合うこと。KAWSとのタッグで、メゾンと創造的な世界との間に新たな橋が架けられた。

オーデマ ピゲ公式サイトを見る

オーデマ ピゲによるキャラクターウォッチたち
2021年ブラックパンサー

立体的モニュメントという、キャラクターウォッチの新たな領域を開いたオーデマ ピゲとマーベルとのパートナーシップ締結がアナウンスされたのは、2021年3月のことだった。しかしプロジェクトは、2017年から極秘裏に進められていた。きっかけは、メゾンの前CEOフランソワ-アンリ・ベナミアスが、友人である俳優ドン・チードルに、「マーベルとの提携は、昔からの夢」と打ち明けたことだった。チードルは、その場でマーベルに電話をかけ、オーデマ ピゲとのミーテングを設定したのだ。

数あるマーベルのキャラクターの中から最初に選ばれたのは、ブラックパンサーだった。2021年4月に発表された「ロイヤル オーク コンセプト “ブラックパンサー” フライング トゥールビヨン」は、WG製のブラックパンサーの立体的なモニュメントを、フライングトゥールビヨンをまたぐように設置。その上で大型の針が時を刻む、力強い外観を創出している。ヒーローのスーツの質感はレーザーカットとハンドエングレービングで表現。さらにハンドペインティングでリアルな陰影のコントランストが描きされた。キャラクターを工芸技術を駆使して、立体的なモニュメントすることで高級時計へと昇華する。キャラクターウォッチの新時代を開いた、これはまさに金字塔である。

2023年スパイダーマン

マーベルとの提携のニュースは、実は時計ファンの間で賛否が議論された。キャラクターウォッチは、チープなトイウォッチとのイメージが強かったからだ。そんなネガティブな声をブラックパンサーは吹き飛ばし、250本が即完売。期待が大きく膨らんだ第2弾では、マーベルのキャラクターの中でももっとも人気が高いスパイダーマンが登場した。

その「ロイヤル オーク コンセプト トゥールビヨン “スパイダーマン”」は、ダイヤルから飛び出さんばかりに、蜘蛛の巣を発射せんとするスパイダーマンの姿が、実に印象的だ。このモニュメントはWG製で、塊から職人の手で1つずつ彫り出され、スーツの模様まで繊細にエングレービングされている。この彫刻と手作業による塗装には、計50時間以上を要するという。

大人気のオーデマピゲ時計コピーNランク代金引換搭載するCal.2974は、既存のCal.2948のスケルトン仕様。残されたフレームの間から、スパイダーマンは裏蓋側へ足を突き出している。そのブーツの底のパターンまでメゾンの職人はエングレービングしてみせた。

精緻な工芸技術を注いだ2つの3Dキャラクターウォッチは、それぞれ仕様が異なるユニークピースも製作され、オークションにかけられた。その落札で得たお金は、すべて世界各地の恵まれない家庭の若者たちに均等な教育の機会を与えることに使われる。

ドバイで開催されたスパイダーマンのユニークピースオークションでオーデマ ピゲは、「2025年には新たなキャラクターとのコラボモデルの登場を約束します」と、力強く宣言。どのキャラクターとどんな新しい表現でコラボレーションするのか、ファンの想像と期待は膨らむばかりだ。

ヴィンテージ911を完全電動化した新しい解釈のクルマを運転する機会。

数週間前、オードレイン・ニューポート・コンクール&モーターウィークの目玉イベントであるコンクール・デレガンスのPhoto Report記事を紹介した。このイベントは週末の日曜日に開催され、豪華絢爛なギルデッド・エイジ時代(1865年の南北戦争終結から1893年恐慌までの時期)のロードアイランド州の邸宅の芝生に、驚くほど素晴らしいクラシックカーが並ぶ壮観な催しである。今日はその前日の出来事について語りたい。オードレイン・ツール・デレガンスに参加し、予想外、いやむしろ場違いともいえるクルマを運転する機会を得た時のことを。

the audrain tour d'elegance
1964年製の非常にクールなイソ・リヴォルタ GT。

具体的なクルマの話に入る前に、まずはツアー自体について少し背景を説明しよう。通常、知名度があるコンクールイベントの多くにはツアーが併催される。このツアーではクルマがパレードのように決められたルートを走行する。これにより地元の人々や、チケット制のイベントには参加しない人々にもクルマを見る機会が提供される。そして何より重要なのは、これらのクルマが自走可能な状態で動いているのを目にできるということだ。もしあなたが熱心なカーファンでなければ(ここまで読んでくれたことに感謝する)、この種のイベント(たとえばオードレイン・コンクール・デレガンスなど)に登場するクラシックカーの多くは、極上スーパーコピー時計代引き専門店そら~必ずしも完璧な状態で走行できるわけではないことを知っておくとよいだろう。

そういったクルマが実際に走る姿を目にすることができると、それは特別な体験となる。戦前のレーシングカーやヨーロッパのクラシックカーが、ニューポートの絵のように美しい街並みを駆け抜ける様子はまさに見ものだ(あるいは僕のように運よく今年だけでこうしたツアーに2度参加できたなら、モントレー近郊のハイウェイ1を駆け抜ける光景もまた格別だ)。

the audrain tour d'elegance
1956年製のジャガー XK140 DHCのヘッドライトとグリル。

オードレイン・ツール・デレガンスでは、ニューポートのドックに180台以上のクルマが並び、各グループがツアールートへと出発した。このイベントの模様はオードレイン・コンクール・デレガンスのPhoto Report記事で広く紹介したが、今回はクルマの細部にさらに注目してみた。ヘッドランプ、ステアリングホイール、計器類、ボタンやノブ、そして精巧に組み合わされた装飾品…これらに焦点を当てる機会としたのだ。

僕にとって、特にこれらのクルマを運転する機会がどれほど貴重なものであるかを理解しているからこそ、こうしたディテールは写真でも非常に映えるし、時計愛好家を引きつける要素とも直結していると思う。金属、木材、革、ガラスが一体となり、時代を超えて美しく存在し続けるものを生み出している。それも現代では到底再現できないような方法でつくられていることが多いのだ。

ドライブについては後ほど触れるとして、まずはオードレイン・ツール・デレガンスに登場した美しいヴィンテージカーやコレクターズカーの細部をじっくりとご覧いただきたい。

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1957年製、ガズ・ヴォルガ M-21Vの車体とマッチしたカラーリングの内装。

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1957年製シトロエン DS 19のヘッドライト。

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DS 19の何ともクールなリアウインカー。

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1959年製トライアンフ TR3A。

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1969年製のプリムス・バラクーダ、魅力的なエンブレム。

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ハーレーダビッドソン EL "ナックルヘッド" 1938年製のシフトレバーノブのディテールに注目。

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1938年製、リンカーン・ゼファーの美しい装飾。

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鮮やかなイエローが印象的な1965年製フェラーリ 275。

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まったく異なる黄色のクルマ(今回は1974年製サーブ ソネット III)。だがステッカーもいい感じ。

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ルノー アルピーヌ A110、1973年製。ピンク・フロイドの『狂気(Dark Side of the Moon)』がリリースされた年と同じだ。

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アルピーヌ A110のディテール。

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さらに詳しく。

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さらにもっと。そしてよく知らないブランドのロゴ。しかしこの混沌感は愛おしい。

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もう1台のヴィンテージハーレーダビッドソンに見られる、オードレインのディテール。

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ツアーの開始を待つ年代物のポルシェ 911。

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1958年製、デビン SSのダッシュボード。

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1958年以来、デビン SSが走り抜けてきた道とレースの記録。

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1954年製、メルセデス・ベンツ 220の見事な木製ダッシュボード。

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1953年製の非常に希少なPBX H モディファイドレーシングカー。

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秘密を抱えた黒いポルシェ 964 911 カブリオレ(続けて読んで)。

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もうひとつのアングルから見るフェラーリ 275。ただただ美しい。

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1932年製、フォード モール・スピードウェイ・ホットロッド。低い位置にセットされたユニークなセンターランプに注目。

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モール・スピードウェイの燃料計は座席うしろの壁に埋め込まれている。バックミラーで確認できるよう、逆向きに設置すべきだったかもしれない。

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フォード モール・スピードウェイの素晴らしいディテール。金属、革、ガラス。シフトレバーのノブにはファイアストンタイヤのエンブレムが刻まれている。

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露出したシフトリンケージをチェック。

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かつてのテールライトは実に美しかった。

サクリレッジ・モータース・ブラックバードを運転する。964世代の911を完全電動化したモデル
 オードレイン・ニューポート・コンクールを控えた数週間のあいだに、A.ランゲ&ゾーネのチームからツアーでクルマを運転する機会があるかもしれないと言われた。その提案には即座にぜひと返事をした。あまりに即答だったので、実際に運転するクルマについては一切気に留めていなかった。戦前のクルマか、あるいはオードレインやイベントスポンサーが提供するデモ車か何かだろうと思っていた。しかしその予想は大きく外れていた。

 ツアー用に並べられたクルマの列を歩いていると、ブラックバードの製造元であるサクリレッジ・モータースの創設者のひとり、フィル・ワーゲンハイム(Phil Wagenheim)氏を紹介された。このブラックバードは1992年製の964型ポルシェ911をベースに、完全電動化をしたモデルだ。後輪軸に500馬力のモーターを搭載し、ポルシェ911への深い愛情と、電動化された911というコンセプトに魅力を感じる特定の購入者層に訴求できると信じる哲学のもと設計されている。見た目、走り、そしてほとんどのフィーリングは確かに911そのものだ...エンジンを除いて。

audrain tour d'elegance
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 現在では一般的となった911のレストモッド(再改造車)の流れを汲む製品として、たとえばシンガーやワークショップ5001、カネパ、エモリー、ガンサーなどを思い浮かべて欲しい。サクリレッジ・ブラックバードは、その一部に似ていながらもまったく異なる個性を持っている。停車中のサクリレッジを見かけても、それが単なる標準仕様の964カブリオレではないとすぐに見抜けるのは鋭い目を持つ人だけだろう。確かにこのクルマはリバッジ(エンブレムの付け替え)されているし、ポルシェのロゴは車内のメディアユニットにしか見当たらない(これもポルシェ純正だ)。さらに、リアのライトアレイにはブランドのロゴがあしらわれており、それはバッテリーの回路記号を模したデザインとなっている(このひねりは実にクールだ)。

 しかし車内を覗き込んでも、この車が電動化されている秘密を明かすものはほとんど見当たらない。多くのEV(電気自動車)がデジタルスクリーンを重視するのとは異なり、サクリレッジ・ブラックバードには中央メーター内にごく小さなスクリーンが設置されているだけだ。それよりもサクリレッジはディテールにこだわり、911でおなじみ(いやアイコニックと言ってもいい)な5つのメーターを、新しい動力源に対応した表示に改良している。たとえば温度やバッテリー残量、そしてもちろんスピードメーターだ。内装は外装と同様、オリジナル車両をとても丁寧に再現している印象を受ける。つまり、サクリレッジ・ブラックバードに乗り込む感覚は、これまで僕が964型に乗った経験とほとんど変わらないほどなじみ深いものだ(とはいえ、カブリオレに乗るのも、バッテリーで動く964に乗るのもこれが初めてだったが)。

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 このクルマの完成度は見事であり、それは実際に運転する前から感じられるものだ。サクリレッジは、ほとんどポルシェそのものを感じられるものを見事につくっている。ただし元のシフトセレクターの位置に取り付けられたシングルプレーンの“ギアレバー”だけは例外だ。サクリレッジは、ベース車両として964型をドナー車に使用しており、改造プロセスはボディを切断することなく行われている。そのため、この電動化を完全に元に戻すことも可能だ。とはいえその価格は驚くほど高額である。この車両は元々ポルシェの初期型ティプトロニックオートマチックギアボックスを搭載した、964カブリオレから始まったものだ。クラシックカー愛好家がコレクター車両への改造を嘆く気持ちは理解できるが、この時代のティプトロニック搭載カブリオレに関しては、そういった感情はそれほど当てはまらないのではないかとも思う。

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 サクリレッジを運転するというのは、いちどにふたつの場所にいる感覚を教えられるようなものだ。一見すると、これはクラシックな964の思想と現代の電気自動車技術が融合した矛盾そのものだ。だがクルマに乗り込み、バケットシートの低い位置に腰を沈める感覚は、まさにいつものポルシェそのものだ。それ以外の部分は、まあまったく新しい体験だった。視覚や触覚が伝えるのはまさに1990年代のポルシェそのものである。しかしエンジン音がほとんど聞こえないまま、クルマはすでにスタンバイしている。レバーを引き、ブラックバードをドライブモードに入れる。アクセルペダルを軽く踏むだけで、僕たちは静かに走り出した。

 最も興味深いのは、964そのものの運転感覚をほぼそのまま得られるにもかかわらず、ノイズが完全にないことだ。エンジン音だけでなく、トランスミッションの作動音や微かなガタつき音、振動などがすべて中和されている。その結果運転は非常に落ち着いたもので、きわめて扱いやすく、乗り始めた瞬間から安心感を抱かせる。


 ツアー中、基本的には低速でのんびりと進む場面が多かったが、僕の落ち着かないADHD的な思考が時々、前を走る改造ミアータとのあいだに少し距離を取らせようとすることがあった。しかしいざ距離を詰める必要が出ると、どのモードであれその隙間は一瞬で埋まった。スポーツモードでは500馬力が解放され、無限にも思えるトルクが味わえる。ゼロから60まで(0-60mph)は3.8秒と言われているが、それ以上に速く感じる。そして一度アクセルを深く踏み込んだらスピードメーターを気にしたほうがいい。気づけば法定速度を大きく超える速度に達しているだろう。戦前製の三輪オートバイのうしろで退屈な時間を過ごしたあと、アクセルを踏み込んでツアーの大半をバックミラーの向こう側に置き去りにした時、それを身をもって実感した。

 スピードそのものは大した話ではない。もし粗悪な冷蔵庫(いや、便利で非常に速い冷蔵庫)を運転しても構わないのなら、テスラでもそのスピードを手に入れられる。だがここで際立っていたのは、アクセル操作やエンジン音の欠如を除けば、操作感が間違いなく964らしいという点だ。車体が重たいと感じるわけではないが、間違いなく911としての特性を持ち、正統派スポーツカーらしく攻めて欲しいという意思を感じさせる。ステアリングは重さがある一方で鋭く、ドライバーに明確な情報を伝えてくれる。そしてグリップ性能は申し分ない。964を運転したことがある人ならこの操作感にすぐなじむだろう。ただし、ペースについては標準の964とはまったく異なるため、少し頭を切り替える必要がある。そしてもしクルージングしたい場合(たとえば、クラシックカーラリーで他人のクルマを責任を持って運転するよう頼まれている時など)、エンジンノイズがないことでカブリオレがさらに魅力的に感じられる。

audrain tour d'elegance
 もし2025年向けの964をつくるとしたら、サクリレッジは少なくとも魅力的な選択肢のひとつとなるだろう。特に、数多くの911を所有してきた経験があり、新しい何かに興味を持つような購入者層には強く響くはずだ。ただここで大きな問題がある。ブランドが非常に限られた台数しか生産しないという点だ。そしてその価格は85万ドル(日本円で約1億2900万円)にも達する。さらにドナー車の条件や仕様の個別カスタマイズによって、価格は多少変動する可能性がある。このクルマは間違いなく非常に印象的な仕上がりだが、その価格を考えると当然と言えるだろう。

 サクリレッジが提供する内容についてさらに詳しく知りたい方は、彼らの公式サイトをこちらで確認できる。またThe Curmudgeon Showのジェイソン・カミーサ(Jason Cammisa)氏とデレク・タム=スコット(Derek Tam-Scott)氏による自動車ジャーナリストの視点をこちらで見ることもできる(この番組は非常におすすめだ)。最後に、サクリレッジと僕をつないでくれたランゲのチームに感謝したい。またドライブ中に同行してくれたフィル氏にも、ブラックバードについて僕が投げかけた数千もの質問に辛抱強く答えてくれたことに心から感謝する。

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サクリレッジの共同創設者がオードレイン・ツール・デレガンスで何をつけていたのか? もちろん、ランゲ1だ。

 ツアールートを走り終えたあと、フィル氏が僕をオードレイン自動車博物館の近くで降ろしてくれた。そこで集まったクルマを眺めながら、少し時計探しを楽しむことにした。以下はニューポートで過ごした素晴らしい朝の最後に撮影した写真だ。クルマが好きな人にとって、これほどオープンで親しみやすくフレンドリーなイベントはほかにそう多くないだろう。

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来世は、秋晴れの日にカーショーを散歩するのが大好きな飼い主に飼われる犬として生まれ変わりたいものだ。

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別タイプのグリーンの911。

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ボンネットピンのディテール。

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フェラーリ 550 マラネロのヘッドライト。

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ヴィンテージポルシェ 356のボンネットとヘッドランプのディテール。主電源のマスターカットオフが非常にクールだ。

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1962年製のポルシェ 356のバッジ。

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ツアーの終わりに見られたハイ・ローな雰囲気の一例。ここには美しいセイコー 5 スポーツ SSK005が。

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そしてこちらは2019年の名作のひとつ、A.ランゲ&ゾーネのダトグラフ・パーペチュアルカレンダー・トゥールビヨン。

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アストンマーティンのバッジ。

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ヴィンテージポルシェ 911に装着された追加ライト(こうしたライトはほぼ間違いなくクールだ)。