記事一覧

セイコーは数多くのダイバーズウォッチを手がけてきたことで、その名を世に知らしめてきた。

特に昨今において重要なモデルと思われるのが、発表されたばかりのプロスペックスSBDC195(北米ではSPB451)とSBDC197(北米ではSPB453)だ。60年代にインスパイアされたプロスペックスのダイバーズウォッチラインを、より幅広い層に向けてアレンジしたモデルである。SBDC101(北米ではSPB143)によって確立された大人気シリーズ、その第2世代となるこの新しいプロスペックス ダイバーズは、リシャールミルスーパーコピー代引き優良サイト日常使いのダイバーズウォッチとしてより充実したソリューションを提供するべく若干の見直しがなされている。

“2年目のジンクス”(ブレイクした翌年に伸び悩んだり、一転して不振に陥ったりする現象)の恐怖が忍び寄っているいま、SBDC195のこれまでの歩みを振り返ってみる価値があるだろう。ご心配なく、簡潔に説明する。今年の3月、SBDC197(ブラック)、SBDC195(ブルー)、そして限定モデルのSBDC199(ブラックにゴールドのアクセント)の3モデルが発表された。この3モデルはいずれも、セイコー初のダイバーズウォッチである62MASを2020年に美観の面から再編集した、いわゆる“20MAS”の改良版である。

20MASシリーズはその後さまざまなカラーバリエーションを展開するまでに成長したが、その中核となったのはグレー文字盤のSBDC101だった。僕は昔も今もSBDC101の大ファンであり、セイコーが過去数年間に発表したモデルのなかで最高のもののひとつだと思う。SBDC101については何度も書いたが、このHands-On記事を執筆した理由の一部は、僕がSBDC101とともに過ごしたWeek On The Wristで確立した考えに基づいている。

この新たな24MASダイバーズのトリオではほぼ同じスタイルを踏襲しながら、その一方でセイコーはデザインの核となるいくつかの要素に手を加えている。この新モデルで見られた変更点は、ケースの小型化、日付位置の変更、新ムーブメントの搭載、ブレスレットのデザイン変更などである。

セイコーは今作のケース寸法を直径40mm、厚さ13mm、ラグトゥラグを46.6mmとしている。手持ちのノギスで測ってみると、40.2×13.4×46.6mmだった。ラグは引き続きドリルラグで(素晴らしい)、ブレスレットの幅20mmのエンドリンクにフィットしている。ケースバックはスチール製のクローズドタイプだが、新たな設計によって防水性は300m(前作は200m)に向上した。

ブレスレットはクラスプの部分で幅18mmまで細くなるデザインで、手首をより快適に包み込むことができるよう、短いリンクと小さめのクラスプを採用している。ケースとブレスレットにはセイコー独自の“スーパーハードコーティング”が施され、ベゼルにはアルミニウム製インサート、風防にはサファイアクリスタルが使用されている。

スペックに目を向けると、この新たなダイバーズはセイコー製のCal.6R55を搭載している。このムーブメントは自動巻きで、72時間のパワーリザーブ(ゆえに文字盤には“Automatic 3 Days”と記されている)を備え、2万1600振動/時で時を刻む。このムーブメントの大部分の設計は前世代のCal.6R35とほぼ同様だ。のちほど、このムーブメントの精度について解説しよう。

前作から大幅に変更されたのは文字盤のデザインだ。よりオーソドックスなカラー&テクスチャーを採用するとともに、日付表示を3時位置から4時30分位置に変更した。僕はセイコーのような規模の会社に対してノンデイトのモデルを作ることを常々推奨しているが、彼らは今回の4時30分へのデイトの移動でその利点を最大限反映していると思う。3時位置にフルサイズのインデックスがくるようにしてISO6425に準拠するべく、セイコーは日付を移動させることを決定したと述べている(これは、オリジナルの後のバージョンで夜光マーカーを追加した理由でもある)。

それを差し置いても、4時半位置の日付窓は命取りになり得る。しかしセイコーはデザインプロセスにおいてそのようなユーザーの気持ちに配慮し、控えめで、文字盤上のほかの要素とフォントを揃えた日付表示を採用した。完璧とは言えないが、少なくとも配慮と思慮が感じられる。多くの場合4時30分位置の日付表示とは、3時位置に表示されるべくデザインされたカレンダーディスクを見るためにさりげなく穴を開けたような、後付けのようなものにすぎない。

このモデルは違う。SBDC197の日付は判読可能だが、一方でまったく目立たない。ブルー文字盤のSBDC195ではカレンダーディスクは(ブルーではなく)ブラックで、ちょっと非合理的なチョイスにも思えるが、絞りが非常に小さくほとんど影に隠れているためによく見ないと気づかない。これは妥協からきた産物のようにも見えるが、僕からすると決して致命的なソリューションではない。しかし繰り返しになるが、ノンデイトの提案にはそれなりの確証がある。

そして手首に乗せてみればよく分かると思うが、SBDC197はSBDC101と非常に似通っている。そして、それはそんなに悪いことではない(というか、まったく悪いことではない)。ブレスレットのアップデートは間違いなくつけ心地を向上させ、そしていまやセイコーダイバーズにとって定番となったブラックの文字盤とベゼルは、セイコーのダイバーズウォッチに求められる優れた視認性と輝きを備えている。ベゼルとリューズはどちらも丁寧に作られている。ベゼルは軽いクリック感のある力強い作りで、文字盤の要素との整合性もよい(文字盤とベゼルの奥行きを比較すると、時折ズレて見えることがあるが)。

もしSBDC101の装着感に満足しているのであれば、この次世代機のつけ心地をさらに快適に感じるであろうことは想像に難くないが、そのプレゼンスに大きな差はない。3人の弟を持つ男から言わせてもらえば、ハンサムで成功を収めていて、広く愛される兄を持つのは幸運なことだ。セイコーのダイバーズウォッチとして、SBDC197は先達のモデルと同じコンセプトを持ち、20MASが成功を収めたことで得られた恩恵を受け継いでいる。

SBDC101と酷似したモデルだが、現在は2020年当時よりも競争は激化しており、発売されるタイミングという点でもよく似ている。SBDC197(およびその兄弟モデル)の定価は、税込17万6000円。2020年当時、ラバーストラップのSBDC105は税込12万1000円だった(ブレスレットのSBDC101は税込14万3000円)。そして、この価格設定は過去4年間で発売された同キャリバー搭載モデルとしてはかなり妥当なものだといえるが、SBDC197には近年一般的になってきたいくつかの特別な機能は搭載されていない。

ブレスレットのクイックリリースや、一部のクラスプに見られる工具不要のマイクロアジャストのことだ。僕はダイバーだが、ダイビングに適したウェットスーツ用エクステンション(SBDC197に搭載されている)のものから、日常使いしやすいマイクロアジャスト付きのクラスプに交換したいと思っている。現状、この新作のクラスプにはわずか2カ所の調整ポジションしかない。気になる人もいるだろうから書いておくと、これらの新作で調整可能なブレスレットの最小サイズは、すべてのリンクを外した状態で11.1cm(4.37インチ)だ。その状態では、その大部分をクラスプとケースが占める。

ブレスレットにケチをつけているように見えていることを承知で、僕の意見を明確にしておこう。僕はブレスレットについてはちょっとうるさいのだが、SBDC197にブレスレットを付けて装着することはほどんどなかった。ブランドがこのブレスレットを装着しやすいように改良したのは素晴らしいことだが、それでも10年前に見られたセイコーのブレスレットをより頑丈で洗練されたものにしたような感じがする。ウェットスーツ用のエクステンションは、手持ちのオレンジモンスターのブレスレットに付いているものとそっくりだし、リンクは割りピンでを固定されている。ブティックブランド(マイクロブランドともいう)が1000ドル以下の腕時計のブレスレットに片側ねじ込み式リンク(クイックチェンジやマイクロアジャスト機能については言うまでもない)を提供している時代であるにもかかわらず、である。

上記の点から、ふたつのことを主張したい。第1に、セイコーはラバーストラップのバージョンを999ドル(日本円で約15万5500円)で提供すべきだ。きっと売れるだろうし、このケースはストラップとも非常に素晴らしくマッチする。第2に、ブレスレットを刷新するつもりがあるなら、この価格帯では当たり前になってきている機能をすべて提供することだ。

さて、数年前にSBDC101に注力していたときに僕が一番受けた問い合わせ、つまりムーブメントの精度について取り上げよう。僕のSBDC101はかなり精度の高い個体だったけれど、ちょっとググればCal.6R35やそれに類するムーブメントであまり精度が出ないと困っている人たちをすぐに見つけられると思う。

僕は時計の精度なんてちょっと速くても遅くても気づかない程度にしか関心がない。だが、これは機械式時計にとっては極めて重要な問題であり、いまや2007年とは違うのだ。Cal.7S26を搭載したセイコーのために110ドル(日本円で約1万7000円)を払う人は、もういない。結果としてSBDC197も195も僕の精神的なしきい値を超えることはなかったが、このふたつの時計を歩度測定器にかけたところ、その精度の高さに驚かされた。もちろんこのデータはサンプル数の面から裏づけに乏しいが、この個体はセイコーから直接送られてきた最初期のものである。

僕は、6つの姿勢と3段階の巻き上げ残量(フル、24時間後、55時間後)で計測を試みた。すなわち全18とおりの測定を行った結果、(短時間ではあるが)まずまずの精度であると判断できた。SBDC197(黒文字盤)の場合、3段階巻き上げ残量において6姿勢で計測した平均は-5秒/日(フル)、-12秒/日(24時間後)、-15.8秒/日(55時間後)となった。青文字盤のSBDC195では、-4秒/日、-6秒/日、-11.8秒/日だった。

つまり、1回フルで巻き上げたときのSBDC197の平均日差は-10.9秒、SBDC195は-7.3秒ということだ。セイコーはCal.6R55の精度を日差-15秒から+25秒までとしていることから、これらの時計はどちらもムーブメントの規定範囲内に収まっていると言えるが、どちらもやや遅れる傾向にあった。あえて推察するに、セイコーはこれらのムーブメントを文字盤上または文字盤下の姿勢で調整しているのだろう。というのも、このふたつの姿勢では、どちらのムーブメントも格段に高い精度を誇っていたからだ。

これらの数字が購入の決断にどの程度影響するかは、あくまでも個人の考え方によるだろう。僕からすると、いずれもとても気に入った時計を諦めるほどの要因にはならない。とはいえ、同価格帯での競争が激化し、主要なブランド(セイコー含まれる)がより精度を重視した取り組みを主導しつつあるいま、セイコーはムーブメントの精度をどのように管理、保証するかについて見直しを行うべきだとは思う。

この新しい24MAS世代について僕は、まるで素晴らしいデビューを飾ったブランドについて再認識させてくれるフォローアップアルバムであるかのように考えている。ここでいうレーベルはセイコーであり、バンドにあたるのが20MASスタイルの時計であり、sbdc197(およびその兄弟モデル)はファーストアルバムのカルト的な成功に応えなければならない待望のセカンドアルバムといったところだ。

SBDC197は、すでにSBDC101(またはそれに類するもの)を知っている人であれば、まったく違和感なく受け入れられるだろう時計だ。確かに、このセカンドアルバムの8曲目「We Moved the Date Window」はあまり好きではないだろうし、もしかしたらこのアルバムの展開を少しスローに感じるかもしれない。しかし、セイコーのダイバーズウォッチとしての主題がきっちりと集約され、思わず手放せなくなるような腕時計に仕上がっている。いや、まあ完璧ではない。でも、ピンク・フロイドだってそのためにアルバム10枚分近くを費やしたじゃないか。

セイコーは、SBDC101が持っていた長所を損なうことなく、より洗練されたモデルに進化させるという、非常に難しい課題に取り組んだ。SBDC197(および類似モデル)においては、中核となるテーマを損なうことなくその完成度を高めることに成功していると思う。そしてハンサムかつ堅牢で、ツール的に使える普段使いのダイバーズウォッチであることに変わりはない。すでに完成されているものにあえて手を加えることなく、素晴らしい仕事をしている。

春の時計オークションから学んだ7つのこと、

不完全かつ非常に主観的ではあるが、最初の大きなオークションシーズンが終わったので、いい結果も悪い結果も含めていくつかのリザルトについて話すときが来た。

昨年も書いたように、最近の大規模なオークションは今日における真の市場を示すのと同時に、マーケティング活動としての側面も持っている。昨年の春と違って今年はジュネーブに行かず、クリスティーズ、サザビーズ、フィリップス、アンティコルのオークションをライブストリームで視聴し、ほかの人たちをとおして間接的に体験していた。遠くから見ると、数字や結果に注目してしまい、実際の時計のことを忘れてしまいがちだ。

数字が示すとおり、総売上3590万スイスフラン(日本円で約55億1065万円)を売り上げたフィリップスは、5本の時計が100万スイスフラン(約1億5350万円)以上で売れるなど、市場をリードし続けていることがわかる。クリスティーズは依然ウェブサイトがダウンしているにもかかわらず、2280万スイスフラン(日本円で約34億9980万円)まで到達し、パテックフィリップスーパーコピー代引き優良サイトサザビーズはオンラインセールでまだ数百万が未決ながら1100万スイスフラン(日本円で約16億8850万円)を売り上げた。

ただこれらは単なる数字に過ぎず、全体の物語を伝えるものではない。今回は、そこからより詳しく見てみることにする。数字の末尾にあるゼロをすべて無視して、春のジュネーブオークションから学んだ7つのことを紹介しよう。

1.コップはすでに半分空なのか、それとも半分も満ちているのか?
先日、妻がある投資目論見書(ウォール・ストリート・ジャーナルに気をつけろ!)を評価していたとき、私は冗談で“目論見書が右肩上がりのグラフでいっぱいでないなら、十分に頑張っていない証拠だ”と言った。

このかわいい小話のポイントは、私がおもしろい(?)冗談を言ったことではなく、ジュネーブオークションの結果についても基本的には同じように感じているということだ。価格は明らかに玉石混交であり、それがいいか悪いかは、結局“コップはすでに半分空なのか、それとも半分も満ちているのか”という視点の問題に過ぎない。金曜日には、延期していたOnly Watchチャリティーオークションが週末の雰囲気を決定づけた。上位(パテック フィリップ、ジュルヌ、ヴティライネン、レジェピのような有名な独立時計師から、オフレ、ペテルマン・ベダ、シルヴァン・ピノーなどの新進気鋭まで)の業績は好調で、大半の結果は平均的なものだったが、一部の悪い結果が全体の感情を押し下げた。

これは何よりも、この市場がいかに薄く、潜在的に脆弱であるかを物語っている。SJXが指摘したように、過去2回パテックOnly Watchエディションを落札した入札者は、今回の入札に参加しなかった。もし彼がそこにいたら、この(依然として華やかな)1730万ドル(日本円で約23億3896万円)のスティール製ソヌリ&ミニッツリピーターは、あと数百万ドル高くなっていたかもしれない。

2.優れたヴィンテージウォッチは、ほとんどの場合、今でも優れたヴィンテージウォッチである
これを続ければ続けるほど、私は“市場”の状況について包括的な発言をするのにためらうようになる。収集の分野には多くの小さなコミュニティが存在し、それらはほとんど関連性を感じさせないほどである。

では、ヴィンテージウォッチから始めよう。一般的に、状態のいい希少なヴィンテージウォッチが好調であった。当たり前のように聞こえるかもしれないが、決してそうではない。

まず、この週末の最大の成果は、アンティコルムにて330万ドル(日本円で約4億4616万円)で落札されたピンクゴールドのパテック ワールドタイマーだ(上のヒーローイメージを参照)。プレビューでも触れたので詳細は割愛するが、これは私が幸運にも手にすることができたヴィンテージウォッチのなかで、間違いなく3、4本の指に入る最も素晴らしいヴィンテージウォッチのひとつだ。クロワゾネエナメルダイヤルを持つRef.605はこれが3本目で、スペインにある本家から市場に出たばかりの個体である。

とはいえ、非常に良好なコンディションのパテック 1463 “タスティトンディ”は29万3750スイスフラン(日本円で約4510万円)で売れ、ユニークなプラチナ製レクタンギュラーのパテック 439は5万2500スイスフラン(日本円で約806万円)で売れた。どちらもプレビューで際立っていた時計で、1463はその状態、439はその希少性で注目されていたため、さらに高い評価を得てもおかしくなかった。来週公開のHodinkee Radioのエピソードでお聞きいただけると思うが、ディーラーのエリック・クー(Eric Ku)氏は1463の結果を“少し残念だ”とさえ言っている。

そのほか、サザビーズでデイトナ “ジョン・プレイヤー・スペシャル”が売れ残ったが、その数時間後のフィリップスでは150万ドル(日本円で約2億280万円)で落札されていた。販売された個体は、はるかにいいコンディションであった。サザビーズは売れ残った品のリストを削除するという奇妙なことをしているので、その違いを見せることができないが、サザビーズのほうのJPSは60万スイスフラン(日本円で約9210万円)という低い見積もりを超える関心を得ることができなかったようだ。

フィリップスのほうのJPSは、少なくとも過去数シーズンで見たなかで3番目にいい個体だ。昨年の春、私たちはサザビーズ・ジュネーブで記録を破った例(223万スイスフラン、当時の相場で約3億4155万円)と彼らのニューヨークセールでのもうひとつの好例(150万ドル、当時の相場で約2億1230万円)を取り上げたので、真剣にJPSを手に入れたいコレクターなら、今春のサザビーズで売られたような状態が劣るものよりも、優れた状態の例のひとつに目をつけたのだろうと想像する。全般的に、ジュネーブで成功するはずだった時計はそのとおりの結果を出した。

これらのJPSの結果は、より大きなポイントを示している。希少性は重要だが、現代のコレクターにとっては状態の伴わない希少性だけではあまり意味がないということだ。

3.不必要で、余分で、美辞麗句的な形容詞は控えよう

ちょっと余談になるが、オークションハウスはいつも形容詞を多用してきた。その理由は理解できる。しかし、少しやりすぎなところもある。週末のオークションで見た、私のお気に入りロットについての説明文をいくつか紹介しよう。

このパテック カラトラバ 2577は、“信じられないほど希少”で“驚異的な”時計と表現されている。確かに、私はこの2577をポッドキャストのプレビューで、今シーズンお気に入りのヴィンテージパテックのひとつとして取り上げた。エナメル文字盤を採用した数少ないヴィンテージカラトラバのひとつで、ほかのカラトラバ(2526や3428)とは異なり、2577は手巻きムーブメントを搭載している。しかし、どうして腕時計が驚異的と表現されるのだろうか?
ダイヤモンドをセットしたこちらのヴァシュロンは、“言葉では言い表せないほど美しく、非常に収集価値がある”と評されている。この、言葉では言い表せないほどレアな時計は、残念ながら週末のオークションで落札されなかった。私は多くのヴィンテージヴァシュロンを愛しているが、それらが常に過小評価されていると感じているので、この美しい時計がふさわしい持ち主に出合うことを心から願っている。真面目な話、ダイヤモンドがセットされたゲイ・フレアー社のブレスレット、そして同じK1071キャリバー(JLCのエボーシュをベースに、ヴァシュロンが独自の仕上げを加え、ジュネーブシールの基準までチューニングしたもの)を持つ別のリファレンスを所有していた経験から、同クラスのなかで最も印象的なヴィンテージムーブメントのひとつだと言える。しかし、なぜこれが言葉では言い表せないのだろうか?

マーク・トウェイン(Mark Twain)の名言を思い出した。“『非常に』と書きたくなるたびに『ちくしょう』に置き換えなさい。そうすれば編集者がそれを削除して、文章は本来あるべき姿になるだろう”。オークションハウスも同じことをするときが来た。これらの時計について事実に基づいた説明をし、形容詞は控えるべきだ。