ダイオキシン類による環境問題について

http://www2d.biglobe.ne.jp/~chem_env/honma98/s_dioxin.html
or http://www.nicol.ac.jp/~honma/honma98/s_dioxin.html

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「ダイオキシン100の知識」(1998/08/05 発行!)「環境ホルモン情報」のページもご参照下さい.


● ダイオキシン類問題の基礎

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1.ダイオキシン類の構造と関連用語

2.ダイオキシンの毒性

3.問題はダイオキシンだけではない

4.ダイオキシンの生成と動態 5.人間がダイオキシン類を摂取する経路(食品からの摂取が大部分) 6.生物濃縮 7.環境ホルモン 8.これからなすべきこと

● ダイオキシン類問題のトピックス

※本トピックスは,従来「化学トピック集」に掲載していたものを移動したものです

 1997/03/31のNHK『クローズアップ現代』は「どうするダイオキシン汚染 −検証・廃棄物焼却場−」.1997/03/29の『ザ・スクープ』でもダイオキシンの問題が取り上げられました.ダイオキシンの毒性が問題にされ,母乳からも検出されているという現実がありながら,日本では規制がなされていません.
 ダイオキシン類として分類される有機塩素化合物には多数ありますが( Chime版分子モデル例参照),中でも下図の 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (p-は“para”と読みます)は最強の毒物と言われています.
 ダイオキシンのリスクアセスメントに関する研究班中間報告(厚生省)やダイオキシンリスク評価検討会の中間報告の内容についての質問と意見の受付(環境庁)のページも参照して下さい.
[追加情報] 1997/04/11,厚生省が,排煙に含まれるダイオキシンが 80ng m-3(1立方メートルあたり80ナノグラム;1ナノグラムは、10-9グラム)を越えるごみ焼却場, 72施設を公表.これは,調査した全国 1150施設のうち,「緊急に対策が必要」とされるものです.なお,この公表に至る経緯については,朝日新聞 1997/04/19「ひと」欄で触れられています.
 なお,朝日新聞 1997/04/20によれば,上記 72施設のうち,1施設が実際の数値より高い虚偽報告をしていたことがわかりました.
[追加情報] 朝日新聞1997/04/28に,「猛毒ダイオキシンを法規制」の記事.日本では母乳等に含まれるダイオキシン濃度が各国に比べて高いという現実がありながら,今まで法的規制がありませんでしたが,環境庁では,大気汚染防止法の有害大気汚染物質の中の指定物質として,排出抑制基準や環境基準を定める方法を検討中とのこと.ただし,指定物質は基準を超えた場合でも罰則規定がなく,効果を疑問視する声もあります.同1997/04/29には,今夏までに法規制をめざし,3年後に見直すとの続報.
[追加情報] また,翌1997/04/30には,『ダイオキシン対策/私たちに何ができる? −ゴミ分別、リサイクルがカギ−』の記事で,ダイオキシン発生量の各国との比較や発生経路,対応方法などが解説されています.発生メカニズムについては,“焼却炉の中で有機物と塩素が反応し、ダイオキシンが作られる。塩素は、食品の食べ残しの塩分や塩化ビニルなどのプラスチック類から供給される。塩素を含まないタイプのプラスチックも多いが、必ずしも表示されておらず、一般の人が見分けるのは難しい。”とありますが,この点については,パソコン通信 NIFTY SERVE のフォーラム「化学の広場・本館」FCHEMH にある【日常】・【環境】会議室でもいろいろな議論がなされています.末尾の参考文献等の一部は,同会議室で紹介されたものです.
 なお,同会議室では臨時会議室【企画】を開設し,17名が「ダイオキシン100の知識」(東京書籍)の執筆に当たり,1998年8月5日に出版されました.NIFTY SERVE に加入されている方は,会議の様子をインターネットから参照できます.
 引き続いて、朝日新聞1997/05/01.厚生省調査で7番目に高い濃度のダイオキシン類が検出された岩手県の「大東清掃センター」では,地元住民の反発を受けて,4月23日から運転を中止していたことがわかりました.また,同1997/05/02には,静岡県富士川町のごみ焼却施設「富士川クリーンセンター」では, 500ng m-3(1立方メートルあたり500ナノグラム;1ナノグラムは、10-9グラム)と,基準(80ng m-3)の6倍を越えていることを,静岡県が発表したことが記されています.
 厚生省のホームページで,「ごみ焼却施設排ガス中のダイオキシン類濃度について」が公表され,今回の調査の結果と今後の対応等の詳細が明らかにされました.環境庁ホームページには,排出抑制対策検討会の報告書が掲載されました.
[追加情報] 1997/05/22には,『ごみ焼却場に設備基準/今夏にも省令改正・違反には罰則(厚生省)』の記事.ごみ焼却場のダイオキシン発生が,ごみ焼却温度が不安定な時に発生しやすいことを踏まえ,煙を集めるための最新集じん機の設置・燃焼温度の維持(800〜850℃以上)・連続運転(燃焼温度を下げないため)・不完全燃焼の指標である一酸化炭素(CO)濃度の監視・年1回のダイオキシン測定の実施,などを義務づけるもの.違反の場合は操業停止や罰金などの罰則が科せられる.早ければこの夏に省令改正し,半年後に施行の予定.この規制により,各自治体にとっての経済的な負担増は必至である.
 1997/06/29には,『ダイオキシン汚染広がる/大気中濃度21地点、初公表/都市部、欧米の10倍(環境庁)』,『ダイオキシン排出で初/焼却炉、今秋にも初規制(環境審答申)』の記事.
 1997/08/26.環境庁(「ダイオキシン対策に関する5カ年計画」),厚生省(最新のダイオキシン情報は「ごみ焼却施設排ガス中のダイオキシン類濃度について」)は法令を改正して規制を強化し,12月から施行.廃棄物焼却炉の抑制基準は(単位:ng m-3),    焼却能力(トン/日)  新設炉  既設炉
  -----------------------------------------------
      4〜       0.1    1
      2〜4        1    5
    0.2〜2        5   10
       (既設炉は5年以内に達成;それまでは80ng m-3
 ダイオキシン濃度を年1回以上測定・記録することや,燃焼温度,排ガス中の一酸化炭素濃度についても定められています.
 なお,大規模の炉に集中させることに対しては,ゴミを積んだ回収車が長距離を走り回るようになることなど,問題点も指摘されています.まず,ゴミを減らすことが大事ですね.
[追加情報] 1998/03/05夜のテレビ,1998/03/06朝刊で,厚生省が問題のある全国のごみ最終処分場の名前を公表というニュース.ダイオキシン等の有害物質が流れ出す危険性が懸念されます.詳細は厚生省資料「一般廃棄物最終処分場における処理の適正化について」をご覧下さい.
[追加情報] 1998/03/21の新聞・テレビで,埼玉県が発表した,県内の女性 100人(25〜34歳)を対象にした母乳中のダイオキシン濃度の調査結果についてのニュースが報じられました.母乳中の脂肪1gに含まれるダイオキシン類は,平均で 15pg-TEQ(pg は 10-12g,TEQ はダイオキシン類の濃度を毒性がもっとも強い 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin の濃度に換算したという意味),最低値は 2.8pg-TEQ,最高値は 76pg-TEQ とのことで,地域や人によって大きな開きがあります.この平均値と赤ちゃんが一日に飲む母乳の量から一日のダイオキシン類摂取量を計算すると,厚生省が定めた耐容一日摂取量の約7倍に達します.なおこの耐容摂取量は成人を対象に定めたもので,乳幼児を対象にした基準はまだ定められていません.
[追加情報] 朝日新聞 1998/03/29に,「焼却炉 ばいじん規制強化/環境庁方針」のニュース.ごみ焼却炉から出るダイオキシンは大部分がばいじんに吸着しているので,その排出規制を全国一律に強化するもの.新設の炉は1998年7月から,既設の炉は2000年4月から対象となる.1998/04/29 NHK朝のニュースでも紹介されました.  焼却能力(トン/時間) 新設炉(g m-3) 既設炉(g m-3
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      4〜     0.04    0.08
    2〜4      0.08    0.15
   〜2        0.15    0.25

[追加情報] 1998/04/02朝日新聞には,「牛乳にダイオキシン/焼却場近い牧場、高濃度/帯広畜産大教授が調査」の記事が出て,各局のテレビニュースでも大きく取り上げられました.同日の日本農芸化学会で帯広畜産大学・中野益男教授が発表する報告を取り上げたもので,インターネット上に関連情報があります.各地域の汚染状況を詳細に調査するためには,各地域で分析機器の設備などを導入していく必要性があります.なお牛乳については,ドイツやオランダなどではすでに数年前から規制や対策がとられており,オランダの場合については以下でも報告されました.
・Job Van Zorge(オランダ環境庁),「Dioxin Problem in the Netherlands :Regulatory Approach and its impact on Emissions and Human Exposure」,第1回 化学物質のリスク評価・リスク管理に関する国際ワークショップ(1998,横浜国立大学)
[追加情報] 1998/05/04朝日新聞に,「ダイオキシンの登録料/22社から計1億1000万円/91-96年 厚生省外郭団体が制度」の記事.自治体がダイオキシン分析を行う際は登録業者を使うように厚生省が通知を出していたもので,登録業者による独占的な態勢ができていたとのこと.この登録制度は2年前に廃止されたそうですが,1998/05/05には,「登録制度廃止後も調査独占/ダイオキシン測定登録会社 新規参入を阻む・『研究会』作り24社結束/料金、米の2倍越す」と続報.分析費用は米国の8万〜13万円に対し,日本は30万〜35万円とあります.
 微量分析のため,信頼のおける測定技術を確保する方策を講じる必要があるのは確かですが,各地域での広範な測定が急務である現在,測定費用の低価格化を妨げるものであっては困ります.なお測定業者のリストについては,ダイオキシン分析機関一覧(露本さんのページ)全国ダイオキシン測定分析機関 事業概要一覧(日報ホームページ)を参照してください.また,『日経トレンディ4月号別冊・日経ECO21』(日経ホーム出版社,1998年)p.65にはT社の広告として,ダイオキシン測定についての紹介が出ています.
[追加情報] 1998/05/30 朝のNHKニュース,1998/05/31朝日新聞で,WHO(世界保健機関)の専門家会議で,ダイオキシン類の耐容一日摂取量を従来の 10pg/kg・day(体重1kg当たり一日10pg:1pg=10-12g)から 1〜4pg/kg・dayに変更との情報.WHOの基準も参考にして決められていた日本の耐容一日摂取量(厚生省が 10pg/kg・day,環境庁が 5pg/kg・day)や,それに基づいて策定されていたごみ焼却場のダイオキシン排出基準が見直される見通しです.
[追加情報] 上記基準変更について,WHO のプレスリリースが出されました(これは NIFTY SERVE の電子会議室で入手した情報です).また 1998/06/05 朝のニュースでも,厚生省が各種基準の見直しを行う件と,コプラナーPCB を含めて検討することになったことを報じていました.
 環境庁の「土壌中のダイオキシン類に関する検討会(第2回,1998//07/10)」の配布資料で,同プレスリリースについて紹介されています.

「環境ホルモン情報」のトピックスもご参照下さい.


◆参考文献

※パソコン通信 NIFTY SERVE のフォーラム「化学の広場」のメンバー 17名で,「ダイオキシン100の知識」(東京書籍)を執筆し,1998年8月5日に出版しました.その一部を紹介するページをご参照下さい.また,NIFTY SERVE に加入されている方は,会議の様子をインターネットから参照できます.
※本ホームページの環境ホルモン情報にも随時情報を追加します.
「まなびピア新潟'97・新潟の生活環境を考える」講演要旨もご参照下さい.
  1. 彼谷邦光,「環境のなかの毒 −アオコの毒とダイオキシン−」,裳華房(1995)
  2. 長山淳哉,「しのびよるダイオキシン汚染」,講談社(1994)
  3. 長山淳哉 監修,「ダイオキシン汚染列島 日本への警告」,かんき出版(1997)
  4. Theo Colborn, John Peterson Myers and Dianne Dumanoski 著,長尾力 訳,「奪われし未来」,翔泳社(1997)
  5. 中西準子,「環境リスク論」,岩波書店(1995)
  6. 保田仁資,「やさしい環境科学」,化学同人(1996)
  7. S.F.Zakrzewski著,古賀実,篠原亮太,松野康二訳,「入門環境汚染のトキシコロジー」,化学同人(1995)
  8. J.W.Rodricks 著,宮本純之 訳,「危険は予測できるか! −化学物質の毒性とヒューマンリスク−」,化学同人(1994)
  9. 植村振作 ほか,「残留農薬データブック」,三省堂(1992)
  10. 森田昌敏 監修,「ダイオキシン入門」,日本環境衛生センター(1992;補遺資料あり)
  11. オランダCML,RIVM 著,松崎早苗 訳,「有害物質の LCA インパクト・アセスメント」,産業環境管理協会(1997)
  12. 環境庁リスク対策検討会 監修,「環境ホルモン 外因性内分泌撹乱化学物質問題に関する研究班中間報告」,環境新聞社(1997)
  13. 平岡正勝 編,「廃棄物処理とダイオキシン対策」,環境公害新聞社(1993)
  14. 志垣政信 編著,「絵とき 廃棄物の焼却技術」,オーム社(1995)
  15. 高杉晋吾,「産業廃棄物」,岩波新書(1991)
  16. 環境総合研究所 編,「台所からの地球環境」,ぎょうせい(1993)
  17. 菅原淳・森田昌敏,「生物モニタリング」,読売科学選書(1990)
  18. ジョン・エムズリー 著,渡辺正 訳,「逆説・化学物質」,丸善(1996)
  19. 『第1回 化学物質のリスク評価・リスク管理に関する国際ワークショップ』要旨集(1997/01/22-23,横浜国立大学);会場風景
  20. 雑誌特集,『ダイオキシン』,化学,52(10),p.12〜(1997)
  21. 雑誌特集,『待ったなし! ダイオキシン対策』,TRIGGER,16(13),p.6〜(1997)
  22. 村田徳治,『ダイオキシンとごみの焼却』,現代化学,1997年7月号,東京化学同人
  23. 雑誌特集,『環境ホルモン(内分泌撹乱物質)』,水情報,17(8),1997
  24. 松崎早苗,『「Our Stolen Future」の問題提起と私たちの課題』,水情報,17(9),p.3(1997)
  25. 益永茂樹,「報告・ダイオキシン国際会議 1997」,水情報,17(10),p.15(1997)
  26. インタビュー記事『個別化合物を削減しただけではダイオキシン問題を解決できない −脇本忠明さんに聞く−』(インタビュアー=中西準子),水情報,12(4),p.3(1992)
  27. 田辺信介,『イルカの化学汚染』,化学と教育,45(11),636(1997)
  28. 朝日新聞記事,『どうすりゃいいの 母乳とダイオキシン』,1997/08/20-22
  29. 加藤龍夫,「農薬と環境破壊の話 −人間らしい暮らしをとりもどす智慧−」,光雲社(1990)
  30. 酒井伸一,「ダイオキシン類のはなし」,日刊工業新聞社(1998)

◆参考インターネットホームページ

「環境ホルモン情報」のリンク集もご参照下さい.


※本ページの基礎編は,新潟県聖籠町で行った環境審議会での講演(1998/02/06)要旨をアレンジしたものです.今後もデータを追加します.


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