◆ 話題の制がん剤・抗がん剤 ◆
= 話題の制がん剤とモルヒネ誘導体(Chime版“分子の重ね合わせ”は移動) =
抗がん剤開発と標的タンパク質(Jmol版)(Chime版)

※分子表示をJmolに変更!!(説明画像はChimeによる) → Chimeによる分子データ表示(“分子の重ね合わせ”含む)

参考文献・Webページトピックス(※イレッサ関連


 2002/02/02のNHK総合テレビ,『がん治療・副作用はなくせるか 〜アメリカ国立がん研究所の挑戦〜』において,新しい視点でのがん治療薬がいくつか取り上げられました。
 その中の,慢性骨髄性白血病に対する分子標的薬剤イマチニブ(商品名:グリベック)については,

で作用機序や開発経緯を含めて詳しく解説されています。


分子標的薬の例イマチニブを含む1iepのPDBsumデータより(画像クリックで拡大;分子データはこちら

 さらに,2002/04/08-09にはNHK教育テレビで,『末期がんでもあきらめない』(第1回:患者が選んだ抗がん剤治療,第2回:がんとの共存・免疫療法)が放映されました。

 また,がん治療において,患者の痛みを和らげることが重要な課題となっており,モルヒネ(モルフィン)などの鎮痛薬を上手に使うことが求められています。以下の文献では,新しく開発された鎮痛薬を含めてわかりやすく解説されており,さらにそれらの薬剤にがん細胞の増殖抑制効果(制がん作用)が認められつつあることにも言及しています。

表1 ヒトがん細胞に対する増殖抑制効果(同解説,p.120)
モルヒネ誘導体 細胞株(IC50 / μM)
Neuroblastoma  PC-9   U251   HL-60 
KT-90 42 45 52 70
KT-95 102 68 200 70
naloxone 150 500 170 500
morphine 3,300 4,800 3,400 2,700
M-6-G*1 47 70
M-3-G*2 3,900 5,200
*1morphine-6-β-D-glucuronide,*2morphine-3-β-D-glucuronide
※IC50は50%阻害濃度

 以下では,NHKの番組や文献[1]で紹介された薬剤と,上表にあげたモルヒネ関連化合物の一部の分子モデルを示します。


話題の制がん剤とモルヒネ誘導体の例(初期表示はモルヒネ)
※以下の分子表示は
Jmolによるものに変更しました(Chimeによる表示はこちら)。
分子標的治療薬関連PDBデータもご覧ください。

空間充填 球棒 同(球大き目) スティック 針金
Jmol色 Rasmol色 | 原子球白色表示 |
 
背景・黒 灰 白 
●モルヒネ誘導体の例〈表1〉
モルヒネ(morphine)
ナロキソン(naloxone)
KT-90 | KT-95
M-6-G | M-3-G
オキシコドン(oxycodone) …半合成オピオイド系鎮痛薬 → 危険ドラッグ
●話題の制(抗)がん剤の例〈NHK番組資料,文献[1],その他より〉
メルファラン(melphalan)
イマチニブ(imatinib) → 関連タンパク質例Jmolトピック
ゲルダナマイシン(geldanamycin) → 関連タンパク質例
 ※参考 17-AAG〔17-allylamino-17-demethoxygeldanamycin〕 …現在未認可
スルフォラファン(sulforaphane)
ゲフィチニブ(商品名イレッサ Iressa)  ニュース(2004/12)参照
●その他の制(抗)がん剤の例
アドリアマイシン(adriamycin)
アリトレチノイン(alitretinoin)
イホスファミド(ifosfamide)
イリノテカン(irinotecan) ※参考(原料)カンプトテシン(camptothecine)
エトポシド(etoposide)
エピルビシン(epirubicin)
エリブリン(eribulin,E7389)
エルロチニブ(erlotinib) → 関連タンパク質例
カルモフール(carmofur)
シクロホスファミド(cyclophosphamide)
シスプラチン(cisplatin) → Jmolトピック  ※未計算
ソブゾキサン(sobuzoxane)
タキソール(taxol)
タモキシフェン(tamoxifen)
ドキシフルリジン(doxifluridine)
ドキソルビシン(doxorubicin)
パミドロネート(pamidronate
ビンクリスチン(vincristine)
ブリオスタチン3(bryostatin 3)
5-フルオロウラシル(5-Fluorouracil,5-FU)
プロカルバジン(procarbazine)
ベキサロテン(bexarotene)
マイトマイシンC(mitomycin C)
メトトレキサート/メトトレキセート/メソトレキセート(methotrexate)
ラパチニブ(lapatinib)
TS-1(胃がん用;以下の3種の混合物): テガフール/フトラフール(tegafur/ftorafur) | ギメラシル(gimeracil) | オテラシルカリウム(oteracil potassium)
テガフール・ウラシル/UFT(ウラシルと上記テガフールの配合剤): ウラシル(uracil) ※両分子同時表示#
●その他(併用剤およびその候補例,研究・治験中)
アイソボリン/L-ロイコボリン(isovorin/L-leucovorin) …活性型葉酸製剤
アプリロニンA(aplyronine A;異性体あり) → 理研情報
インドカルバゾスタチン(indolocarbazostatin) → 理研記事
セレコキシブ(celecoxib) …鎮痛剤 → 東京工科大学プレスリリースJmolトピック
デキサメタゾン(dexamethasone)
ペメトレキセド(pemetrexed;実際は 7水塩) → MLリソース:中皮腫アスベスト問題
ボルテゾミブ(bortezomib)
ラパマイシン(rapamycin) → Nature記事例
SU11248 …血管新生阻害薬
ZSTK474 …PI3キナーゼ阻害剤 → JNCI論文
◆分子標的治療薬は別ページ


表2 上記化合物の有機概念図のI・Oとlog Pの計算
log Pcalc = 0.01071 O - 0.0054285 I + 1.436322  [引用
()は,塩酸モルヒネ・塩酸ナロキソンなど塩酸塩を想定してアミン部分をアンモニウム塩として計算した場合
分類 薬剤名 分子式 I
O log P* log Pcalc
モルヒネ誘導体 モルヒネ(morphine) C17H19NO3  347(677)  340 0.89  3.194(1.403)
ナロキソン(naloxone) C19H21NO4 412(742) 380 2.09 3.270(1.478)
KT-90 C24H27NO4S 257(587) 540   5.825(4.033)
KT-95 C24H27NO5S 330(660) 540   5.428(3.637)
M-6-G C23H27NO9 657(987) 460   2.796(1.005)
M-3-G C23H27NO9 747(1077) 460   2.308(0.516)
話題の制がん剤 メルファラン(melphalan) C13H18Cl2N2O2 325 340 0.385 3.313
イマチニブ(imatinib) C29H33N7O 680 580   3.957
ゲルダナマイシン(geldanamycin) C29H40N2O9 675 580   3.984
その他の制がん剤 5-FU(5-Fluorouracil) C4H3FN2O2 287 85 -0.89 0.789
アドリアマイシン(adriamycin)/ドキソルビシン(doxorubicin) C27H29NO11 950 540 1.27 2.063
カルモフール(carmofur) C11H16FN3O3 417 225 2.63 1.582
タキソール(taxol) C47H51NO14 927 940   6.472
タモキシフェン(tamoxifen) C26H29NO 137 520   6.262
ドキシフルリジン(doxifluridine) C9H11FN2O5 517 185   0.611
ブリオスタチン3(bryostatin 3) C44H62O16 850 880   6.247
マイトマイシンC(mitomycin C) C15H18N4O5 614 300 -0.40 1.316
メソトレキセート(methotrexate) C20H22N8O5 1085 400 -1.85 -0.170
* Interactive LOGKOW Demoより



図1 モルヒネ誘導体と制がん剤の有機概念図



表3 モルヒネ誘導体(表1)のlog Pとlog ( 1/IC50 )の関係
Ilog Pcalcはアンモニウム塩で計算,IC50は50%阻害濃度(単位:μM)
モルヒネ誘導体 分子式 I O log P log Pcalc log ( 1/IC50 )
Neuroblastoma PC-9 U251 HL-60
モルヒネ(morphine) C17H19NO3  677  340  0.89  1.403  -3.52  -3.68  -3.53  -3.43
ナロキソン(naloxone) C19H21NO4 742 380 2.09 1.478 -2.18 -2.70 -2.23 -2.70
KT-90 C24H27NO4S 587 540   4.033 -1.62 -1.65 -1.72 -1.85
KT-95 C24H27NO5S 660 540   3.637 -2.01 -1.83 -2.30 -1.85
M-6-G C23H27NO9 987 460   1.005 -1.67 -1.85    
M-3-G C23H27NO9 1077 460   0.516 -3.59 -3.72    



図2 モルヒネ誘導体のlog Pとlog ( 1/IC50 )の関係



参考図2 薬剤分子のがん細胞DNAへのインターカレーションによる制がん作用の例(adriamycinの場合);PDBデータ/151Dから作成
遺伝子DNA/4種類の塩基参照



参考図3 がん抑制遺伝子p53;
PDBデータ/1TUPから作成



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