環境ホルモン情報


環境ホルモンの例;ビスフェノールA
最新記事
2016年に環境省が環境ホルモンの可能性のある6化学物質(ビスフェノールA,ノニルフェノール,エストロン,オクチルフェノール,ヒドロキシ安息香酸メチル,ペンチルフェノール)について規制検討とのニュースが出されました(日経(2016/06/25)ほか)。 → 化学物質の内分泌かく乱作用に関する今後の対応 ― EXTEND 2016 ―(案) [PDF]環境ホルモンとして疑われている化合物例
 2008年11月,三共出版より「新版 有機概念図 基礎と応用」(共著)が発刊されました。環境ホルモンについても有機概念図で概観しています。なお,同ページで有機概念図計算用Excelシート最新版もダウンロードできるようになりました!


妊婦のプラスチック化学物質への暴露、子どもの知能指数低下と関連か(AFPBB News,2014/12/12)Jmolトピックス
環境省「平成26年度化学物質の内分泌かく乱作用に関する公開セミナーの開催について」(2015/01/15,東京都中央区築地 浜離宮朝日ホール)

2007/09/11のRCSB PDB公表データ中に,ビスフェノールAが結合したエストロゲン受容体γ。 → 今週の分子110
◎詳細:世界初、環境ホルモン「ビスフェノールA」の受容体を発見 ビスフェノールAの低用量作用解明に糸口(九州大学,20006/11/20)[PDF]
◎松島綾美・下東康幸,『エストロゲン関連受容体γ型(ERRγ):ビスフェノールA が非常に強く結合する自発活性化型核内受容体の発見』,環境ホルモン学会ニュースレター,Vol.10 No.3(2008/01)


※本ページは『生活環境化学の部屋』内の環境ホルモン情報をまとめたもので,新規解説なども加えていく予定です.

《関連ページ&トピック》
環境ホルモンと疑われている化合物リストの例:Chime版旧版〕,Jmol版


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1.環境ホルモンとは? 「ダイオキシン100の知識 」(東京書籍,1998/08/05 発行!)の原稿より抜粋再編

環境ホルモンのはたらき

 最近マスコミでも盛んに取り上げられている「環境ホルモン(内分泌撹乱物質)」の定義は定まっていませんが、1997年2月にアメリカで行われた会議では、『生体の恒常性、生殖、発生あるいは行動に関与する種々の生体内ホルモンの合成、貯蔵、分泌、体内輸送、結合、そしてそのホルモン作用そのもの、あるいはクリアランス、などの諸過程を阻害する性質を持つ外来性の物質』(環境庁資料の訳)とされました.
 特に問題になっている新たな脅威は、生物の存続を危うくする生殖や発育への深刻な影響です.生物の種類によって表れる障害は異なりますが、雌では性成熟の遅れ、生殖可能齢の短縮、妊娠維持困難・流産などが見出され、雄では精巣萎縮、精子減少、性行動の異常等との関連が報告されています.
 具体例を列挙すれば、アメリカのアポプカ湖ではワニの雄の生殖器が小さくなり子ワニの数が減少(農薬DDTとその誘導体が原因*)、イギリスのある川では魚に雌雄同体が多数発生(洗剤に関連するノニルフェノールが原因)、世界各地のイルカやアザラシの大量死(PCBが原因の一部と考えられる例があります)、日本でのイボニシなどの貝の雌の雄化による繁殖低減(防汚剤として船底用塗料に含まれるトリブチルスズなどが原因)、等々で各地域独特の弊害があぶり出されています.
 人間についても例えば精子数の減少が指摘され、デンマークでは1938年から1990年の間にほぼ半減というデータが示されました.この報告には反論と支持が出されましたが、他の国でも類似のデータが示され、動物実験での確認例もあって減少傾向は否定できないようです.日本でも、若者34人の精子濃度等の検査で、世界保健機関の基準を満たしたのが1名だけという報告がありました.
 また、胚や胎児の段階での環境ホルモン暴露の影響は大きく、事故などで高濃度に曝されて生まれた子どもには、成長の遅れや行動上の問題が指摘されています.あとで述べるように、環境ホルモンは極めて微量でも作用するため、とりわけ様々なホルモンが重要な働きを示す胎児・乳児の時期に摂取した影響が、成長に伴ってあるいは次世代にどのように発現するのか、長期的な調査が必要です.
 環境ホルモンの作用は、以下のように考えられています.生物のからだの中で正常なホルモンは、発生や発育などの諸段階において適宜特異的な生理活性を示します.ホルモンレセプターを刺激して遺伝子を活性化し、必要な生体反応を起こすのです.いわば細胞という工場のラインを動かす、スイッチの役目を果たしているわけです.ところが環境ホルモンは、レセプターに対してホルモンと同じような働きをして、不必要なときに工場を稼働させたり、正常ホルモンの働きを阻害して必要なときに工場が動かないようにしてしまいます.この結果、不要なものが過剰にできたり、必要なものが不足して、生体の正常な機能が果たせなくなります.中でも問題なのが、エストロゲン(女性ホルモンの一種)と類似した作用を示す化学物質が、エストロゲンレセプターと結合してタンパク合成を引き起こしたり、他のホルモンバランスを乱したりすることです(ホルモン類似物質).男性ホルモンのレセプターに結合して、男性ホルモンの働きを阻害するものもあります(ホルモン遮断物質).
 環境ホルモンはこのように“スイッチ”のようなものですから、他の毒性に比べて極めて低い濃度で影響が表れます.この問題について世界中に警鐘を鳴らしたコル ボーンらの著書「Our Stolen Future」ではそのことを、『タンク車660台分のトニックに、ジンを1滴たらした量』と表現(長尾力訳の翻訳版「奪われし未来」による)しています.また、生物濃縮()が大きな意味を持つことから、食物連鎖の上位のものほどその影響が顕著と考えられています.
 もともとホルモンは、必要な時期に(早過ぎず遅すぎず)必要な濃度で(多過ぎず少な過ぎず)存在して、はじめて正常な働きをするようにできています.これは、生物が極めて微量な化合物を、繊細にコントロールしてその機能を維持するシステムを築き上げてきたこと物語っています.環境ホルモンの問題は、その生命システムを根幹から揺さぶる重大なものなのです.

* 「環境ホルモンとは何か I 【リプロダクティブ・ヘルスの観点から】」(綿貫ほか,藤原書店)p.51 には,原因物質が農薬ジコホルであるとほぼ立証されたとあります.

掲載画像・旧版


体内における環境ホルモンの反応とそれによってひき起こされる推定結果
〈引用文献〉筏義人,「環境ホルモン」,p.140,講談社ブルーバックス(1998)

初期反応 ひき起こされる現象 結果 物質
1.レセプターに結合      
 1.1 エストロジェンレセプター エストロジェン様作用
(アゴニスト)
内分泌攪乱 合成エストロジェン(DESなど),植物ホルモン,ヒドロキシPCB,ビスフェノールA,ノニルフェノールなど
 1.2 アンドロジェンレセプター 抗アンドロジェン作用
(アンタゴニスト)
内分泌攪乱 p,p'-DDE(DDTの代謝物),フタル酸エステルなど
 1.3 Aha)レセプター
P-450の合成(酵素誘導) 発ガン,
内分泌攪乱
ダイオキシン類,PCB,DDTなど
2.シトクロームP-450による代謝 反応中間体の生成
(毒性活性化)
発ガン,
内分泌攪乱
ダイオキシン類,PCB,DDTなど
3.アロマターゼb)に結合 アロマターゼの作用阻害 エストロジェン濃度減少 HCHなど
4.TBGc)に作用 甲状腺ホルモンの減少 発育抑制 有機スズ
5.神経・免疫系分子と相互作用
神経系・免疫系ネットワークの攪乱 ダイオキシン類,PCBなど

a) 芳香族炭化水素
b) P-450の一種で,アンドロジェンをエストロジェンに変換する酵素
c) 甲状腺ホルモンを結合するグロブリン

[引用者注]原著では,「エストロジェン」→「エストロゲン」,「アンドロジェン」→「アンドロゲン」,「シトクローム」→「チトクローム」.
 酵素誘導,P450などについては,P450部分データ集「ステロイドホルモンの生合成と代謝」(下図掲載),「ダイオキシン100の知識 」のページも参照.

[引用者注]P450についての詳しい解説書が発刊されました.
  ◎大村恒雄・石村巽・藤井義明 編,「P450の分子生物学」,講談社サイエンティフィク(2003)


写真教材:環境ホルモンの作用例/アゴニストとアンタゴニスト


女性ホルモン作用をもつと疑われている合成化合物と天然女性ホルモンのエストラジオールやその他の誘導体の毒性
〈引用文献〉茅幸二ほか,「岩波講座・現代化学への入門18 化学と社会」,p.110,岩波書店(2001)

物質名 急性毒性
〔mg (kg体重)-1
子宮重量毒性
〔mg (kg体重)-1 day-1
生殖毒性
〔mg (kg体重)-1 day-1
何らかの毒性
〔mg (kg体重)-1 day-1
ジエチルスチルベストロール(DES) 2500 0.001 0.0075 0.0075
エチニルエストラジオール >5000 0.002 0.010 0.010
エストラジオール 弱い 0.050 0.16 0.16
ゲニステイン   28 67 67
ノニルフェノール 2000 50 50 15
オクチルフェノール >2000 200 >150 70
ビスフェノールA 3250 200 437 50

[元文献]西川洋三,アロマテックス,52(2000),p.95 → 転載レポート
[引用者注]「化学と社会」p.112には,“低濃度効果(逆U字現象”についての記述があります.またノニルフェノールの魚類に対する環境ホルモン効果に関するデータを含む環境省報告(2001/08/03)も参照してください.


2.トピックス

[お知らせ]以下のサイエンスアイ情報は,2002/03の番組終了後,参照できなくなりました(印付記;一部については以下の日付をもとに,Internet Archiveアーカイブ検索結果から参照できます).
 NHKサイエンスアイでは,1997/05/17アーカイブス情報),1997/06/21の2回に渡って「環境ホルモン」の話題を取り上げました(第3回は 1998/01/31 放送).環境ホルモンとは内分泌撹乱物質(Endocrine Disruptors)のことで,“生体内でホルモンのようなふるまいをして本当のホルモンの働きを撹乱して生殖機能などに大きな影響を及ぼす合成化学物質”の総称です.現在約70化合物が知られていますが,そのリストの例(海外の資料の和訳)といくつかの化合物を紹介するページその1その2)を作成しました.
 1998/11/14・11/21 には,シリーズ環境ホルモン「メカニズムはどこまで分かったか」「人間の生殖異変は始まっているか」が,1999/06/05には「動き出す環境ホルモン対策」,2000/02/03には「コルボーン博士が語る環境ホルモン汚染」が放映されました(番組ページへのリンクが切れた場合は,NHKサイエンスアイ検索ページで“環境ホルモン”をキーワードにサーチ).
 2002/01/05,「環境ホルモン・最新メカニズムにせまる」が放映され,以下の参考情報に関連する内容などが放送されました.


この間の掲載内容の一部は過去の追加情報へ移動しました.


3.参考文献・ホームページなど [PDF]とある情報は,PDFファイルのためAcrobat Readerが必要です.


4.本サイト内の関連情報 …上記情報とも重複(一部ページは分子表示用plug-inが必要です


※本ページ作成に当たってはメールや NIFTY SERVE の電子会議室における情報に負うところも多く,各位に深謝致します.


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《参考》 Google Image Searchによる“dioxin”検索結果 → 画像で学ぶ環境問題


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