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パソコン教室「フォー・スペース・コンピュータスクール」賃金未 払問題

2001年営業初日午前

フォースペースは1月1日から3日までだけは大阪駅前第4ビルが閉まるので休業して いるが、4日からは再び営業を始める。1月4日にいってみると、従業員で来たのはアル バイトのK氏と私だけ。生徒さんはいつもより多いくらい来たので、指導が精一杯という か手が足りない状態でとても受付までは・・・。2人で20人の面倒は見れないだろう。はっ きりいって手が回らない。CG担当できるインストラクターもいないし。そんなときに社 長が顔を出した。当然受付くらいはするだろうと指導しながら横目で見ていたのですが、 いつものように手提げ金庫から売上金をぬき、財布に入れてそのまま立ち去って いった。なに考えてんだ?金しか見てないのか?受講者の顔が現金に見えてん だろうなぁ

賃金未払証明

未払い賃金があるまま年を越してしまった。このままでは地方税(早い話が住民税です) が実際の収入を上回る額に対して課税されてしまうので、総務も担当してい た同僚が作成してあった雛型を参考にして未払い証明の書式を作成し、社長に署名捺印 させた。そのときはおとなしく押したのだ。ところが後になってから「どこかに訴え るのか!」と聞いてきたので、「去年の所得に対してかかってくる税金の申告に ・・・」と答えておいたが、どうかしていると思った。いまさらそんなこと言って も遅いのに。 この時点ですでに支払がないことを理由に、監督署への訴えの保留を取り消して正式に訴えていたのだ。

労働組合加入

その後、全額給料日にまとまって支払われたということはなく、1日1万円手渡しとか いう日が続いた。われわれは日雇い労働者じゃないぞ!そもそも1日あたりの賃金は1万 円以上あるぞ!!未払い賃金がどんどん増えていくだけではないか!そういう状況なのでいっ こうに埒があかない。バイトは出勤日と時間を減らされ、正社員インストラクターはどん どんやめていく。管理職も生え抜きを除いてやめていく。Y氏はこれが原因でさっさと辞 めてしまったのかな。当時は何でやめたのかわからなかった。正解だったかも。 このような状況ではこっちの生活が成り立たないので、 4月末に労働組合に加入すること を決意。インターネットで個人でも加入できて、なるべく近くに拠点を持つ労働組合をい ろいろ調べて、とりあえず 天満駅近くの 地域労組おおさかの労働相談に行ってみることにした。

これと平行して、年明けから転職を念頭において人材紹介会社多数に登録し、土日は 面接に行く日々が続いていた。

5月にはいってからまた1日有給休暇をとって、天満の国労会館へ行った。そこで未払 いの状況を説明したら、大阪市北区を活動範囲とする地域労組はらからを紹介され、その 日のうちに事務所へ行き、その組合関係者はいなかったものの、留守番をされていた方に また現状を説明して、申込書を書き、入会金と組合費2か月分と一緒に預けた。「払って もらうの申し訳ないわ」といわれたが、これも「必要経費」だ。圧力がか かってきても労働組合という盾ができる。

で、後日書記長から一度事務所に来てくださいと連絡があったので、事務所へ赴き、 副委員長や北区労連の事務局長などに状況を説明し、今後の方針などを相談、早速団体 交渉を申し入れることになった。

予想だにせぬ差し押さえ

団体交渉申し入れ書が届き、T部長からT社長に手渡された。多少の圧力は覚悟したが、 特に何もなかった。

ところが、嵐は別のところからやってきた。9時過ぎ生徒さんがいなくてインストラク タだけでいたところへ、2人の男性がやってきた。裁判所から競売のための差し押さえに来 たという。ついに来るときが来たか。T社長はおろか、管理職が一人もいない状態だったの で、午前中だけ関連会社のチョウビッグから応援に来ていたOさんが社長に電話で連絡を つける。私は労働組合書記長に差し押さえが入ったことを電子メールで急いで連絡。執行 官がT社長と電話で話をした後、差し押さえ物件を決める作業に移った。その間われわれ はただ2人の行動をおとなしく見守るしかない。といっても差し押さえできるものは机・ 椅子・パソコンくらいしかない。ほかのものは競売にかけるほどの市場価値はほとんどな い。パソコンは1台10万円と鑑定して金額の計算をしてい た。差し押さえ物件の一覧(公示書)を作成し、立会人の署名捺印を求められた。フォース ペースの社員は私だけで、あとはアルバイトと関連会社とはいえ別会社の社員だったから 私が署名捺印した。

ただ、配慮はしてくれて、公示書を目立たないところへ貼ってくれるという。柱とラッ クの間の目立たないところにお願いして貼ってもらった。

パンフレットに書いてあった「無借金経営」ってうそだったのね。 もっとも支払うべきなのに支払っていない給料も債権ですから、借金と同 じようなもののはずなので、お客さんには嘘をついていたということになる・・・

二人が帰ってしばらくしてからT社長がやってきて、「話はついているから心配せ んでいい」「ほかの者にはいうな」と平然と言っているが、心配しないわけ にいかない。それにほかの従業員にいわないなんて不可能だ。なぜなら「もとふぉのへや」 に差し押さえがあったことをすでに書き込んであったからだ。会社は社長だけのものではない。 従業員にも現在の状況を知る権利がある。社長は公示書の上に一枚紙を貼ってどこかへいってし まった。執行官にははがさないようにとはいわれていたが、そうきましたか。

当然、団体交渉を控えた労働組合にとっても大きな問題で、5/17に天満駅近くの国労会館 で開かれた争議支援集会でそのことが話題になった。

T社長から何らかの圧力がかかると思っていたのだが、何の圧力もなく時間が過ぎてい く。怖いくらいだった。

第1回団体交渉

2001年5月24日に大阪駅前第1ビル2階のチョウビッグ(現在はもうない)で北 区労連 ・はらから の執行委員と私、そしてT社長が参加して第1回の団体交渉が開かれた。そこではT社長 は楽観的な見通しを語っていた。売り上げの減少にあわせて、広告費等の経費を節減して いくという。団体交渉の雰囲気は非常に穏やかなもので、参加者の意表をついたものだっ た。経費節減といっても今の場所でやっていく限り、広告費以外は大きなものが思い浮か ばないないのだが・・・人件費を減らすということはインストラクタを減らすことだし、 インストラクタを減らせば当然対応できるソフトが減るので経営的にはマイナスになるは ずだ、

合意した項目は以下のとおり。

  1. 労働債権額(=未払い賃金の額)
  2. 支払金は古い労働債権から順に充当すること
  3. 労働債権は「共益の費用」(たとえば税金・社会保険)に次ぐ先取特権があること(民法306条)
  4. これ以降発生する労働債権を1.に加算すること
  5. 返済計画

返済計画は8月には未払いがすべて解消して9月からは正常になると いうものでした。自信たっぷりに社長は話していたのだが、自宅に帰ってLotus 1-2-3で 試算してみると8月の支払いは 100万円を超える額になることが判明。グラフにするとX 軸にへばりついていた支払額が急上昇していくのだから一目見て無理なのは明らかだ。

他に本職があるアルバイトのあるひとがこんなことをこぼしていたらしい。「本業で の稼ぎが余りよくないのでバイトを増やしたい」「だからといってフォースペースで働く 時間を増やしても支払ってもらえない」「出勤しないと支払ってもらえない」。

6月に入り、新大阪のとある会社から無事内定がもらえた。近いうちに退職届を出すことにした


関連リンク

民法:第2編 物権
 民法306条はこちら
もとふぉのへや
地域労組おおさか

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