県立新潟女子短期大学生活科学科生活科学専攻 本間 善夫
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0.『はじめに』の前に(演者の職場と担当科目など)
主な担当科目と関連話題
教材の変遷 パソコンと分子表現の変遷
- 生活環境化学:“安全”・“環境”→ 環境ホルモン,化学物質過敏症,BSE・プリオン,炭疽菌・NBCテロ,耐性菌・院内感染,発がん性化合物,地球温暖化(携帯電話版),……
- 被服整理学:“高分子化学”・“界面化学”→ 繊維高分子の種類〈 Macrogalleria [*],高分子の複雑な構造,網目状高分子・最近の話題/ASUWAN [*] 〉,界面活性剤〈 Lipid Micelle Structure [*・*] 〉
- 生活環境情報演習A・B:“計算化学”・“情報発信”→ 計算化学演習メニュー,分子表示プラグインを利用したコンテンツ作成方法,生活環境情報演習室/覚え書き,…
はじめに
近年のインターネットの普及と計算科学の進展は目を瞠るものがあり,多くのデータベースが公開され,巨大分子の計算も一般的になってきている。様々なツールにより,それらの成果をビジュアルかつインタラクティブに利用できることは,専門分野外の研究者にとっても教育の場においても極めて意義深いものがある。サイエンスとテクノロジーの世界で,研究や学びのスタイルがここ数年で急激に変化したと言え,化学の分野でも“e化学”とも称すべき視点が必要となっている。
b. eラーニングと“知の共有”
c. 可視化とインタラクティブ性
図1 eF-siteのデータ表示例と自作コンテンツ例(オリジナルデータはPDBの1aqu)
d. ナノテクノロジー
e. in silico
f. 環境問題と計算科学
g. Webの力
h. 学生の力 [*]
i. ウェアラブル,ユビキタス,マルチモーダル
j. 理科離れ・科学離れ
k. デジタルデバイド,“サイエンスデバイド”
l. グローバル化と言葉の壁
m. 電子ジャーナル,電子出版,出版の電子化
【講演後の追加資料】
また,理科離れ・科学離れが問題視され,いろいろな立場で多くの試みがなされている中,Webコンテンツの充実を背景に,自ら欲する時に自由に学ぶことのできるeラーニングの環境も少しずつではあるが整いつつある。
以下では,いくつかのキーワードを列挙して関連情報例を提示することにより,計算科学とe化学の将来への期待を述べてみたい。
◆キーブック [*]
・『ヘッドライン:化学教育フォーラム ―21世紀の理科教育』
・三上益弘,『講座:計算機と化学(1) 計算機と化学―ナノスケール世界における計算と実験の融合』
a. “e化学”
※「健康,環境,安全,教育」,「いまの時代は全体が見えない。これからは、知を構造化し、全体の体系の中で位置づけることが重要になる」(小宮山宏,『知を発信し日本動かす』,朝日新聞/焦点! できるか知的財産立国(下):産業界、大学のトップに聞く,2002/07/09)[*]
※分野別教材に化学(理論化学・計算化学コース 等),環境,ナノテクノロジー・材料 など
◆“玉石混交のネットの情報、国会図書館が収集・保存へ”(朝日新聞,2002/08/31)
◆団藤保晴,『リンク切れ対策に特効薬があった』,インターネットで読み解く! No.121
◆東浩紀,『2001年の近況たち/2001.12.21』※「長年、音楽を作ってきて、いま、痛感しているのは、私自身のオリジナリティは、実はほんの数パーセントで、大部分はパブリックドメインとの共同作業で作品を生み出しているということです。過去の人たちが築き上げた膨大な遺産なくしては私たちは何一つできません」(坂本龍一,音樂のオリジナリティとは何か) [*]
◆大阪大学プロテオミクス総合研究センター・中村春木(日経サイエンス2002年7月号,特集・プロテオミクス)「専門家向けのデータベースを土台にして中学生や高校生でも使えるようなタンパク質の百科事典をウェブ上に作りたい」
◆磯部博之・中村栄一,『難病克服に“新兵器”』(日経サイエンス2002年8月号,特集・ナノカーボン スーパー新素材がつくる未来)
◆“大学の先端研究を後押し 「21世紀COE」の第一陣選考 独自性・将来性に重点”(朝日新聞,2002/10/31)
◆河本英夫,『極微に触れる 電子顕微鏡による「ミクロの不思議な世界」』(InterCommunication 41号,p.147)「サッカーボールには,十二個の五角形が入っている。五角形以外のその他の部分は通常六角形である。六角形だけを繋いで並べていくと,雪の結晶のように平面になってしまう。球形をつくるためには,あいだに五角形が入らなければならない。植物の芽のように円柱状で先端が丸くなっているものにも,先端のところには半球形になり,少なくとも一つの五角形の骨格が入っている」
※「近年in vitro及びin vivoのスクリーニングテストを必要とせずに化学物質の内分泌かく乱性を予測する方法として、(3D)-QSARやレセプター構造解析にもとづく手法が提案されている。これらのin silico法の内分泌かく乱プレスクリーニング試験における目的と限界を評価しようとする」
※『第三章 メチル水銀の生成から排出まで』:「古い化学と新しい化学の違いは、アセトアルデヒドの生成の過程、特にその中問体の構造にはっきりあらわれています。この違いを生んだ最大の原因は、原子と原子の結合に対する考え方の差です」,巻末には『補論 なぜ水銀が有機物に結合するか』
◆澤野雅樹,『肉のフロー 狂牛病と資本主義』(現代思想2002年2月号,特集・先端医療 資源化する人体,p.132)「というのも発病しないことは宿主にとってもHIVウイルスにとっても都合がいいことなわけです。仲良く生き続けましょうという感じだと思うんですが、プリオンにはそういう利害が一切ない。増えようとする意志もなければ困らせようとする意志もない。人を死に至らしめようとする意志もない。そもそも意志や意図というものがない。ただ化学変化を引き起こすだけ。病いと共に生きるというのは、少なくともプリオン病の場合は絶対にあり得ない」
しかし、エディターシップを発揮する専門家の養成は、現代社会において必要不可欠な作業である。それは、単に知識の生産と流通の仕組みが変わりつつあるからという理由だけに基づくものではない。環境問題や医療問題、教育問題、民族問題、経済問題、生命科学の爆発的な進展など、現実に対処しなければならない問題群の多くが、専門的知識とエディターシップとの両方を必要とする性質のものになっているからだ(ギボンズの「モード2科学論」を参照)。環境問題一つとっても、気侯や地質や生態系に関する理学的な情報から、工学的な対処技術の問題、国際政治としての側面、経済学の知識、さらには倫理学までが関係してくる。レオナルド・ダ・ヴィンチのような人間がいたとしても、対処することはむずかしい。それぞれの分野からレオナルドが登場することが必要だ。何人ものレオナルド─現代社会という、それ自体が化け物のような存在は、知識の生産と流通においても、それだけのヘヴィ・デューティを要求する。
当然そこには、科学ジャーナリスムの育成や初等中等教育における科学技術位置づけの再検討、学校以外の場での科学技術普及活動の積極的な展開などが関わってくる。これらを明確な展望のもに整理して位置づけなおすには、さら別の作業が必要になるだろう。また他の分野の専門家─それぞれのレオナルド・ダ・ヴィンチ─との密接な連携も不可欠だ。
参考文献・Web資料
《参考》第15期CAMMフォーラム8月例会におけるもう一件の講演
●高野潤一郎氏(文部科学省科学技術政策研究所科学技術動向研究センター),
『第7回技術予測調査から見た材料・プロセス分野における課題』※要旨と一緒に配布していただいた資料:「科学技術動向」2002年7月号,リーフレット「未来への旅」
◎以下では会場でいただいた質問などに関係する補足情報を追加します。また,概要の各項目にも新規関連資料を適宜追加します。k科学掲示板に情報を書き込んでいただければ,できる限りこのページ等で紹介していきたいと考えています。